インタビュー
「ガスと異業種の情報誌 taskforce 21」2018年4月4日号掲載


インタビュー04
情報交換を大いに活用し
自社の事業を創り上げていく






 
日東エネルギー株式会社
代表取締役社長 赤津 正弥 氏

 1942年(昭和17年)に、国策により練炭製造会社が統合され設立された日東燃料工業をスタートとする日東エネルギー。社長就任後11年目を迎えた赤津正弥社長に、76年の歴史を刻む企業をさらに発展させるために、今、課題としていることは何かを伺いました。


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 タスクフォース21出席は社員研修の一つ

――日東エネルギーさんには赤津社長はもちろん、毎回、複数の社員の方に例会にご参加いただいています。

赤津 私の場合はプログラムを見て、スケジュールの兼ね合いで行く行かないを決めていますが、社員には各事業所から交代で、毎回何人か出るようにさせています。社員教育、研修の機会はいろいろと設定していますが、タスクフォース21の例会への出席もその一つだと考えています。講演会やセミナーはいろいろありますが、業界の問題や異業種と業界をつなぐようなセミナーは少ないですし、同業者の方と同席して講演を直接聞くことは社員にとって良い機会だと思います。毎回、交代で何人ずつか出していますから、その意味では、年会費24万円は安いかもしれませんね。
 ネットを利用したライブ中継を検討していると伺っていますが、それができると便利ですね。忙しくて参加できないときも、社長室で「ながら」で聴講できます。ただ、やはり実際にナマで聴くということも大事ですから、例会は例会として開く意義はあると思います。最近はないようですが、以前は懇親会もありましたね。もっとも、私はあまり参加しませんでしたが。お話ししたいと思っている方もいますので、どんな方が参加されるのが、事前にわかるといいですね。
 これは、という講師の方とは名刺交換をさせていただき、その後ご連絡してお会いしたりして、当社のコンサルをしていただいたり、取引販売店会やオーナー会での講演をお願いすることもあります。
 タスクは系列を超えた情報交換の場ということで入会しましたので、会員の方からはいろいろと教えを請うています。中でもアイエス・ガステムの石井誠一会長には、営業のことやシステムのことなどいろいろ教えていただきとても感謝しています。もちろん、先行する方の取り組みは真似しようとしても、そう簡単にはできません。考えを理解し、やってみて、自分の会社の状態に合わせていろいろ工夫しています。
 タスクフォース21の会長でカナジュウ・コーポレーションの牧野修三社長にも、これまでたくさんのことを教わりました。勉強させていただいた結果、最近、当社で大きな成果が上がっているのがコールセンターです。業界の競争が激しくなってきて、同業者間での情報やノウハウの交換がだんだんと難しくなってきますから、そういう意味でもタスクの存在は大きいですね。


 人の確保と効率的な配置・運用がより重要に

――現在の経営課題はどのようなことでしょうか。

赤津 大きな課題は、人材確保の問題です。牧野社長に教えを請うたコールセンターはお客様の声を聞き満足度を高めるという面以上に、現場作業をなんとかして軽減できないかという視点から取り組みました。これまでは、各営業所にお客様から電話が入ると、電話を受けた事務社員はほとんどの場合、そのまま営業マンに電話を回していました。器具の不具合やサービスのことなど、「営業の仕事」だと考えますから。そして、電話を受けたり外で連絡を受けた営業マンは、お客様のところに出向いて対処することも少なくありません。そうすると、営業マンの仕事は増えます。
 顧客との接点は大切ですが、多くの場合はわざわざ営業マンが相対で対処しなければならないようなことではありません。ただでさえ忙しい現場の担当者が、そういうことで時間をとられるのはなんとかならないか、と。そこで、まず電話を受けた段階で、お客様の用件を解決してしまおうということをコールセンターの一つの大きな役割としました。
 これまで各営業所に入っていた電話は、すべて本社のコールセンターに入るようにしました。そこでの一次対応で可能な限りお客様の相談事を解決するよう教育・訓練しています。ずいぶん成果が上がってきており、現場の営業マンも本来の営業活動に費やす時間が増えていると思います。
 求人は「売り手市場」ということで、当社でも新卒確保には苦労しています。エネルギー業界は安定していると言ってみても、やはり会社の知名度は低いですし、昨今は残業時間などのことでも学生はいろいろと心配しますから。当社も労働環境の整備や条件の向上に努めていますが、それでも当然、残業はあります。ウソをついて入社させるわけにもいきませんから、当社の仕事内容を十分理解してもらい、こちらの期待に応えられるであろう社員を採用します。たくさん採って歩留まりを考えるという会社もあるようですが、私はそうは考えません。
 新卒も中途採用も、入社して一人前に働いてもらえるようになるためには、会社はそれなりのコストをかけなければなりません。コストをかけたのに途中で辞められたのでは投資の回収ができませんから、長くしっかり働いてくれる人を採らねばなりません。そうなると面接も慎重になりますから、せっかく応募があっても全部を採るわけにはいかなくなります。人材育成は以前からのテーマですが、まずは資質の良い人をどう確保するか、これがこれからますます大変です。人を確保するために、当社の魅力を一般に伝えることも考えねばなりません。


 ガス客の要望に応えることがビジネスに

――その他の課題は。

赤津 人材確保も大変ですが、とにかく人口が減りますから、このことへの対応は業界全体の経営課題と言えるでしょう。北関東エリアの当社の販売店さんのお話を聞くと、お客様の高齢化、一人暮らしの増加は驚くほど進んでいるようです。亡くなられたり施設に入られたりして空き家になってしまうケースが増えていて、「ブローカーの切替よりもそっちのほうが深刻だ」とさえ言う販売店さんもいます。
 アパートの空室も増えています。みなさんは空室対策をどのようにされているのでしょうか。タスクの講演講師の方や、やはり会員のフジプロ・山本泰然社長らに不動産管理のコンサルタントを紹介していただきオーナーセミナーなども開催していますが、まだこれといった成果は上げられていません。現場はいろいろ工夫して、バスツアーなども継続して企画していますが、会員各社のオーナーサービスや空室対策などは、もっと情報交換ができるといいですね。
 人口の減少や人手不足といったことに対応し、事業を維持発展させるためには、合理化や最新技術に関する情報収集がますます必要となります。また、ガス以外の事業の柱も作っていかなければなりません。その意味で、当社もリフォーム事業などに注力していますが、まだまだ試行錯誤の連続です。
 これまでも当社は、ガス以外のさまざまな事業に取り組んできました。環境変化で、中には撤退したり縮小したりしたものもありますが、多くの事業において、やはりベースとなったのはガスのお客様です。これからも、ガスのお客様のさまざまな要望に応えることがビジネスの核になると思います。
 牧野会長は「住まいの相談難民を救う」という言葉を遣っていました。言葉を遣うのが上手だなといつも感心していますが、私もその通りだと思います。そんな会員の皆さんの取り組みをこれからも参考にしつつ、当社なりの事業を作り上げていきたいと思っています。

<プロフィール>
赤津 正弥(あかつ・まさや)氏
立教大学卒業後、大丸工業(現・大丸エナウィン)に入社。1987年(昭和62年)に父・赤津弥智雄氏が経営する日東燃料工業に入社。
1996年(平成8年)に同社専務取締役に就任。同時に、同年に設立された日東エネルギーの専務取締役にも就任。就任後、2001年(平成13年)の新本社ビル建設、2002年(平成14年)の新基幹系システム(通称OCCS)導入などを主導。
2007年(平成19年)日東燃料工業、日東エネルギー両社の代表取締役社長に就任。
1962(昭和37)年4月、東京都生まれ、56歳。


<日東エネルギー株式会社 会社概要>
◇社名:日東エネルギー株式会社
◇代表者:代表取締役社長 赤津 正弥
◇本社:東京都足立区六木1-19-13
◇拠点:東京(足立)、松戸、千葉、茂原、船橋、柏、総武(山武)、成田、大原、市原、鴨川、埼玉(戸田)、埼玉中央(上尾)、埼玉東(春日部)、上福岡、行田、つくば、水戸、石岡、茨木西(坂東)、栃木西(上三川)、足利、群馬(太田)、伊勢崎、高崎
◇設立:1942年(昭和17年)
◇資本金:4,000万円
◇従業員数:630名 (2017年4月)
◇事業内容:LPガス(家庭用・産業用)製造、各種石油製品の販売、住宅設備機器(家庭用・業務用)の販売、容器検査業務、LPガスの配送業務、スーパーマーケット事業




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