インタビュー
「ガスと異業種の情報誌 taskforce 21」2019年12月4日号掲載


インタビュー14
LPガス事業者の電力小売を 独立系の視点で提案していく




イーレックス株式会社
 営業部 課長代理
西村 伸太郎
営業部 次長
境野 春彦

エネルギー事業者の将来を考えるツールを提供する


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 すでにLPガスルートで過半数の低圧電力

――イーレックスさんには入会以前の2019年2月例会(第133回)に登壇していただき、会社概要や事業内容についてお話しいただき、会報や本会のホームページの会員向けページに詳しく掲載していますが、改めて簡単に会社についてご紹介ください。

西村 当社の大きな特徴は、バイオマス発電所を保有しているということです。新電力会社は500社以上ありますが、大型で安定出力できる発電設備を所有している小売電気事業者は日本で数10社しかありません。大型工場など高圧電力の自由化が始まった頃から事業を開始し、現在、低圧の家庭用では14万件を超える顧客を有し、低圧部門では業界8位となっています。

境野 この14万件のうち、実に過半数がLPガスルートのお客 様というのも、一つの特徴かもしれません。

西村 もともとはある会社の一部署からスタートした事業ですから、エネルギールートにはまったく縁がありませんでした。ですが、家庭用の電力を販売していくにはLPガスルートは外せないと考えました。取引関係からエネルギーのグループ会社を辿ったり、ほとんど飛び込みセールスのような形で新規開拓していきました。そのような中で取引会社が増えていきましたが、先方から当社を探し出してアプローチされたというLPガスも少なくありません。それは、当社がガスや他のエネルギー系列 ではないという点を魅力として考える事業者さんが少なくないからです。

境野 ガスや石油、電力もそうかもしれませんが、流通の川上側は川下の事業者に対して、自社が作ったしくみに合わさせようとしがちです。しかし当社はそういう発想は持ちません。小売をするなら、現場でお客様と相対している方々の考えや仕組みでビジネスを組み立てるべきだと考えていますから。

西村 当社は新電力では老舗ですし、東証1部上場会社としLPガス事業者の電力小売を独立系の視点で提案していくてそれなりの事業基盤を持っています。しかし一般の知名度は決して高くありません。ですから、小売販売ではどんどん自社ブランドで販売してもらっていますし、現場が最も売りやすい、言い換えれば営業や販売管理が楽なしくみをご提供し、またご意見やご提案を取り入れています。契約会社さんの一部はホームページで公開していますが、地方のLPガス会社さんは自社名やオリジナルブランドで電力販売をしていただいています。異業種でも、例えば「Niftyでんき」も当社の電気です。


 単に電気を売るのではない提案営業を展開

――境野さんは石油元売からの転職ですが、この事業にどのような魅力を感じての転職ですか。

境野 私自身は石油元売に入社し広報や企画、石油営業の現場や太陽光など新エネルギー、そしてLPガス事業に関わりました。LPガスの取引会社に競合対策や事業の将来の方向などについて自分なりに検討し情報提供していく中で、ガスの元売の立場では自分の考えは実現できないな、とも思うようになっていました。そんなときにイーレックスという会社を知り、お誘いを受けたという経緯です。実は、この会社がこれだけ多くのLPガス事業者と接点があると知ったのは、入社後のことなんです。ですから今は、既存はもちろん、そして新規開拓先となるLPガス事業者に、電力を武器とした営業を提案すべく全国を回っています。

西村 当社は全国に販売展開しており、北海道から九州まで対応しています。販売パートナー様、需要家様、当社が幸せになる近江商人の“三方良し”の精神が我々の理念です。需要家様に電力を安く提供し、かつ販売パートナー様にメリットのある報酬体系を持っています。私は建設関連業界から転職ですが、自信をもってお勧めできる商品とサービスがあるからこそ、当社がこのように急成長したのだと思っています。


 新電力事業は“リスタート”した

――「電気の口銭だけではやっていけない」と言うLPガス事業者は多いようです。

境野 その通りでしょう。電力の小売事業はLPガス販売のような利益を上げることは難しい。しかし、顧客との信頼の絆を強めるものとしては十分以上の効果を発揮します。現に、あるガス事業者はガスと電気のセット契約を強力に進めることで、切替業者への転換流出を大幅に減らしています。単に当社の電気を買ってもらうのではなく、エネルギー事業者の将来を考えるツール、情報を提供するビジネスが、当社であればできると考えています。

西村 切替対策でガスを下げるのではなく、当社の安い電気を使っていただく。当社の電気販売の利益を顧客還元の原資 としていただくという提案営業を、これからもっともっと進めたいと考えています。当社の電気であれば、その顧客が供給エリア外に転居しても電気料金の集金が続き、顧客とつながり続けることもできます。また、再生エネルギー発電ということも、もっとPRし、一般ユーザーさんから選択していただく流れもつくっていきたいと考えています。

境野 エネルギー自由化の中での競合対策や生涯顧客化のツールとして、電気の販売をやらないという選択肢はないと思います。3年前の電力小売自由化スタートでLPガス業界でも多くの事業者が電力小売事業に参入しました。しかしなかなか結果が出ていないという事業者も少なくありません。我々、新電力事業者も、昨年は卸電力の高騰などで混乱しました。それも落ち着き、当社はいま“リスタート”を切っています。LPガス事業者の皆様も、電力小売事業についてもう一度見直し、新しい取り組み方をお考えいただきたい。独立系の当社だからこそできるご提案や情報発信を、タスクフォース21を通じて行えればというのも、今回の入会の動機の一つです。どうぞよろしくお願いします。

<プロフィール>
イーレックス株式会社 
営業部 課長代理  西村 伸太郎 氏
自信をもって勧められる商品とサービスがあるからこそ急成長した。再生エネルギー発電をもっとPRし、 一般ユーザーから選択してもらえる形にしたい。

営業部 次長  境野 春彦 氏
元売の立場では実現できなかったことをやって行きたくて転職を決意した。電力を武器とした営業を提案すべく全国を回っている。


<イーレックス株式会社>
 1999年12月に短資会社・日本短資(現・セントラル短資)のグループ会社・日短エナジー株式会社として設立。2000年7月にイーレックス株式会社へ商号変更。バイオマス発電事業と小売電気事業を展開する新電力会社としては「老舗」の企業。資本金51億円。売上高658.2億円(2019年3月期)。東証1部上場。
 2019年、東京電力エナジーパートナーと合弁でエバーグリーン・マーケティング株式会社を設立、CO2フリープランの高圧電気の販売を開始した。

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