KANAJUで“守破離”を学ぶ-
――社長のご経歴から。
米山商事には1991年(平成3年)に入社しましたが、1999年(平成11年)から2006年(平成18年)まで、約6年半の間、カナジュウ・コーポレーションさん(牧野修三社長、以下KANAJU)に修行に行かせていただきました。
お客様の理想の暮らしをご提案する「ライフラインコンシェルジュ」構想の下にスタッフの皆様と仕事ができ、多くのことを学ばせていただきました。
KANAJUに入社する以前には、先進的な他社のやり方や情報を取り入れようとすると「モノマネだ」と非難されていました。ところがKANAJUに入社すると、それは既に「ベンチマーク」という言葉になっていました。これは驚きでした。牧野社長はその頃、北は北海道から南は沖縄まで全国あまねく会社からの自社への見学を受け入れ、情報をオープン化していました。私はそれを目の当たりにして目からウロコでした。まさしく「情報は回してこそ精度が上がる」という格言を実践されていたのです。そのほかにも先進的なITや料金メニューの導入などそれまで行ったことのない施策が多くありました。外から見て意味の分からない取り組みも、社員として実行してみてはじめて意味や効果がよく分かったのです。
それからKANAJUでは、「守破離」という言葉を学びました。茶道や武道で使われる言葉で、まずマネから入り、独自の工夫を加えて、新しいものを創り出すという意です。修業期間を終えて私が2006年に米山商事に戻ってきてやっていることもまさにこれかもしれません。まだ「守」の域かもしれませんが、自分の会社に置き換えて実行するためには加工しなければならず、さらに社員に目的を説明し、実行できるようにする。それだけでも大変勉強になります。守破離はレバレッジ(てこ)に通じると思います。他者の経験をてこにして自分の努力を加えれば、早く大きな効果が得られると思うのです。やらない手はないと思います。
浸透しつつあるコア・バリュー-
――2009年(平成21年)に社長に就任してから力を入れていることは。
コア・バリュー(共通の価値観)を提示しました。会社が大事にしている考え方の物差しを社員にどう伝えるかが大事だと思ったのです。私の考え方はもちろんですが、社員全体で考えてもらった約300項目の中から6つに集約して作成しました。このコア・バリューの実践・浸透をめざしています。
当社はDyneCS(KANAJUの顧客管理システム)を導入していますが、この中の社員の日報は毎日、全部目を通しています。この日報はCRMになっていて、お客様と当社の関係性・履歴などが見えます。社員にはお客様からの言葉は加工しないで、そのまま日報に記すように話しています。この中で「米山商事さんはいつも親切ですね」とか、「おたくはいつも早く来てくれるね」など、お客様から「米山商事さんはいつも○○ですね」と言われた言葉を重視しています。こうした言葉が日報内に増えるほど、当社のコア・バリューが現場で浸透していると判断できるからです。
――リフォームを始めたきっかけは。
当社エリアは都市ガス化が進んでいますが、給湯器などが壊れてもどこに頼めばよいかわからない“修理難民”が増えています。またLPガスのお客様からも、住まい全般に関する相談が少なからず寄せられます。牧野社長は「お客様からのガス以外の相談を積極的に引き受けるか、無視するかが分岐点」と語っています。私はお客様から応用問題を試されているのだと思います。これは積極的に応えるべきでしょう。当社の社員は若い人が多く(平均36歳)、入社時からの取り組みもあってガス機器以外の家電や水回りに対しても抵抗なく、応用問題に取り組んでいます。
こうした延長線上として、6年前からリフォーム事業を始めました。10年前にはLPガスの単位消費量のアップとか、LPガス機器の増販だけが関心の的だったのですが、今やボンベの立っていないお家も当社のお客様と考え、チラシの配布対象としています。
「素取り替え」から「松竹梅提案」へ-
またLPガス事業のスタッフにも「素取り替えから脱しよう」と話しています。コンロに不具合のあるお客様に対して、コンロ単品の取り換えだけで満足するなということです。コンロだけならいくら、コンロとレンジフードの取り換えならいくら、さらにキッチン丸ごと取り換えるといくらですという「松竹梅提案」をやっていこうということです。素取り替えの習慣から抜け出さないと、リフォーム屋さんが入ってきて全部注文を取っていくのです。そうすると我々はいつまでも下請けのポジションから抜け出せません。当社エリアでは今後ともLPガスのお客様件数の増加は厳しいのが現状です。そうであればリフォームなどLPガス以外の顧客を開拓し、顧客のライフステージに合った提案力を強化し、生涯顧客化を推進することが重要になってきます。
DyneCSの中にある「LTV」(ライフタイムバリュー)の項目でみると、当社のめざす典型的なお客様の事例として、最初に水回りのお風呂を取り替えて、次にトイレ、キッチン、さらに玄関と順番にリフォーム受注を拡大している事例があります。このお客様のほとんどのリフォームを当社で受注しているのです。こういうお客様を増やしていけば、ガスだけのビジネスに依存しなくても勝ち残っていけると思うのです。
当社は地域に根差して事業を始め、50余年になります。地域のお客様からガス以外の問い合わせをもらえるようになるまで10年以上かかりました。現在はまだリフォーム事業の収益はガスの1割程度ですが、今後は地域の信頼をベースにリフォーム事業を拡大して、LPガスに次ぐ第2の柱にしていきたいと考えています。