インタビュー
「ガスと異業種の情報誌 taskforce 21」2024年10月号掲載


インタビュー16
LPガス事業存続のためにも新事業に挑戦
若い人が志や夢を実現できる会社づくりを




富士ツバメ株式会社
代表取締役社長
小谷野 陽子

タスクフォース21会員企業のトップ、キーパーソンへのインタビュー。今回は、会員企業としては初の女性社長である富士ツバメ・小谷野陽子社長に登場していただきます。前社長・小谷野敬一郎会長の薫陶を受け、志ある社員の育成、哲学ある会社経営をめざす小谷野社長に、本会に望むことや同社の今後について伺いました。


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 販売店会運営のお手本にもできる

――まず、貴社におけるタスクフォース21の活用方法や、会に望むことなどから伺います。

 タスクフォース21に入らせていただいて、私はいろいろと勉強させていただきました。いま、当社は若手が中心となってさまざまなプロジェクトを推進しています。そんな社員たちが業界や異業種の動きを知る機会として、タスクフォース21をいま以上に活用したいと考えているところです。講演を聞くだけでなく、講演会の講師選定や運営などについても学べればと思っているので、よろしくお願いします。

 また、当社が会員となっていることで取引先の販売店様にもたくさんの情報提供ができるわけですから、そういう面を大いに活用させていただきたいと思っています。卸会社ですから販売店会の運営も大切な仕事です。その担当者には、当社の会長からも「事務局はどんな仕事をするのかを考えなさい」という指示が出ていますが、タスクフォース21の運営というお手本があるじゃないかと担当者に話したところです。その点でのご指導もお願いします。


 エネルギーの大切さを伝える責任

――2年前に社長職に就かれました。会社経営や業界に関わりを持たれた当初といま、LPガスに対する見方は変わりましたか。

 最初はこの業界のことなど何もわかりませんでしたし、いまも勉強中です。結婚して名ばかりの社員になりましたが、「給湯器って何?」というような普通の主婦でした。でも、多くの人はそんなもんじゃないかといまでも私は思っています。給湯器とはどういうものかとか、都市ガスとLPガスの違いは何かなど、あまりよくわかっていないし興味もない。お湯が便利に使えればいい、ただそれだけのような気がします。

 私自身はその後、現会長や社員にいろいろ教わりながら、ガスについて少しずつ知っていきました。そして10年ちょっと前からは会社業務に本格的に関わるようになり、カナジュウ・コーポレーションの牧野修三前社長やタスクフォース21の皆様をはじめ、業界の多くの方にいろいろ教わりながら仕事をしています。

 多くの人はガスのことなどあまりよくわかっていないし、お湯が使えればいいと考えている。私たちはそれを前提に、お客様とお付き合いしなければなりません。一般消費者がどういう感覚でいるかを常に考えることは大事ですから。  一方で、ただお湯が使えるということが、いかにすごいことかを多くの人に知ってもらうことも、私たちの責任ではないかとも思います。太平洋戦争の要因がエネルギー問題であったこと、戦後の燃料難を人々が苦労して乗り切ったこと、そしてエネルギーの安定供給が経済発展を支えたことなどを私は勉強しましたが、これからも私たちの責任としてこれらをしっかりと伝えていかねばならないとも考えるようになりました。

 LPガスについて知っていくと、本当に素晴らしいエネルギーだという思いがどんどん強くなります。エネルギーとしてのLPガスが素晴らしいということと同時に、この業界も素晴らしい。人々の暮らしを支える仕事です。


 創業100周年を見据えて取り組む

――LPガス事業はどうなるのか、そして貴社のビジネスは、今後どのような展開をしていくとお考えですか。

 いま、当社は若い社員たちが増えています。彼らは一生懸命仕事をしていますが、働くとはどういうことか、生きるということの本質は何か、そういうことを日々考えながら仕事をしていくべきだと私は考えます。このLPガスの仕事では、それをしっかりと考える機会が与えられる。エネルギー供給の担い手として、毎日の仕事が人々の暮らしを支えているわけですから。だからこそ、素晴らしいと思うのです。

 業界は大手に寡占化されていくような動きが見られます。これはLPガス業界に限ったことではないですが、それでいいのかと私は思います。当社も中小企業ですが、大企業、中小企業、それぞれにそれぞれの役割がある。また、企業規模が小さい販売店様には、お客様の近くにいる小規模だからこそできる役割があります。もちろん、規模が大きいほうが効率面などで良い面もありますが、そういう大手に及ばない足りない面は横のつながりで補えばいいですよね。どこへでも運べるLPガスはさまざまなところで利用されていますが、効率だけを追求していたのでは山の中の一軒家への供給などできなくなります。それだと、エネルギー供給事業者としての責任はどうなるのかと。

 LPガス業界の超大手と呼ばれる企業を見ていると、その辺で疑問に思うことがありますね。エネルギーとしてのLPガスやLPガス事業の価値を世の中に伝えるような仕事をしてるのだろうか、と。

 当社は70周年を迎えますが、次の100周年を見据えた事業づくりを進めています。現在、当社では20代と30代の社員が4割以上で、彼らが100周年までの30年を担っていきます。LPガスは素晴らしいエネルギーです。仮に、大手寡占が進むとしても、そうであればなおさら「残存者利益」はあるでしょう。そして「残存者利益」のためには、やはりLPガスだけでない、新しい事業の柱もつくらねばなりません。70年間事業を継続してきたのですから、そこに蓄積されてきたものがあるはずです。それは何かを考え、それをベースに新しい事業に取り組むということを、いま、少しずつですが始めています。いずれ、タスクの会員の皆様にもご紹介できるかもしれません。

 現在、世の中は良い方向に向かっているとは必ずしも言えない状況にありますね。そのようななかでも、若い人が志や夢、正義の実現といったことをあきらめずにやっていける業界にしていかねばならないと思いますし、少なくとも私たちの会社はそうありたいと考えています。

経営理念

【地域奉公】
 私達の仕事は地域社会に根ざしたものです。お客様の生活・企業活動を支えると共に、様々な形で地域社会に貢献することで、私達の繁栄にもつながると考えています。

【安全優先】
 危険物を取り扱う私達にとって、安全第一無事故は基本であり最重要テーマです。 あらゆる事故・災害等のリスクに対し安全を優先し、お客様の安全を守ります。

【諸事健全】
 皆様の信頼を得るために重要なこと、それは健全な企業であることだと考えます。コンプライアンスを遵守し、正しい商売を永続的に営むのが私達の責務です。

【自他共榮】
 お客様の喜びが私達の喜び。お客様の満足が私達の満足です。また私達が成長することで、お客様に一層の喜び、満足をご提供できると確信し日々努力致します。

ぼくたち わたしたち 宣言

― ぼくたち わたしたちは、お客様との信頼関係を一番大切に思っています ―

なぜならわたしたちの扱っているガスは、使い方によっては便利でもあり、危険なものでもあります。
お客様にガスを任されている以上、お客様の信頼を大事にし、有難く心より感謝しております。
そのお客様の心にお応えするために、ぼくたち わたしたちは思いを伝えるべく、毎日笑顔で頑張ります。
そしてわたしたちのプロパンガスは、特にどんな災害に対しても対応できる、どんな時にもどんな所でも対応できる素晴らしいエネルギーです。
災害時に、食事・暖かさ・水・動力・お湯などなど、様々なところでお客様の命を守るお手伝いをします。
このような思いを発信し、信頼を大切にし、これからの世の中、社会、子供達の明るい未来に繋いでゆきます。

<プロフィール>
富士ツバメ株式会社 
代表取締役社長  小谷野 陽子(こやの ようこ)氏
1995年(平成7年)に富士ツバメ入社。
2019年(令和元年)に専務取締役、2022年(令和4年)に代表取締役社長に就任。


<富士ツバメ株式会社>
設立 1955年(昭和30年)7月
   丸善石油株式会社特約店として静岡県富士市に富士ツバメプロパン販売として設立
本社 静岡県静岡市清水区草薙北3-25
電話 054-376-6886
営業品目 LPガス販売、リフォーム、ガス機器販売、LPガスプラント設計・施工、在宅医療ガス事業