第111回タスクフォース21
2015.5月例会

講演録

全面自由化時代のエネルギービジネス ~市場、戦略、顧客基盤~

関西電力株式会社 お客さま本部 担当部長 西村 陽

初めに

全面自由化時代にあるべきモデルとは

皆様、よろしくお願いいたします。本日配られているタスクフォース21の会報8号の25ページを見ると、4月7日の私の講演録が載っていました。せっかくこうして配っていただいておりますので、もう少し踏み込んで、関西電力、もしくは関西電力と組んで首都圏でビジネスをやろうとしている人たちにはどういう可能性があって、またどういうことをやっているのかというお話をしたいと思います。

 会報の26ページを開いていただくと、東京ガスの笹山さんの「かつてアメリカでゴールドラッシュが起こった」という話が出ています。世界中の採掘業者や労働者によって、さまざまなビジネスが行われたのですが、金を掘り当てて、今日も成功し続けているお金持ちは一人もいません。このとき、カリフォルニアにはガラガラヘビがたくさんいました。そのヘビ除けをしながら炭鉱を掘るために、虫除け染料を浸したズボンを売っていた会社がリーバイスです。そして、掘り出した金を東海岸まで鉄道で運ぶという事業を独占していた会社がスタンフォードです。彼は大金持ちになり、大学をつくりました。ですからリーバイスとスタンフォードは今日まで繁栄していますが、当時金を掘った人で当たった人はあまりいません。一発を狙って電気事業だけに入っていくのは、相当難しいということです。私もそのとおりだなと思います。

 基本的に、家庭用の電気ビジネスだけを狙って参入すると必ず失敗します。守るほうの私たちから見ていても、電気だけ狙ってくる人はそんなに怖くない。結局は、ここにお集まりの皆様のように、顧客基盤を持っていて、そこを手放さないために電気をやるが、一人でやらずに他と組むというところのほうが、我々にとってはパートナーでもありライバルでもあるのです。今日はそのあたりの話をしながら、たとえば外国ではどうなっているのかということも含め、この自由化時代にあるべきモデルについてお話しようと思います。

講演の4つの軸

電力・ガス全面自由化をどうとらえるか

 まずは制度の変更と、それによって現れる競争についてです。単純な新聞紙上の話だと、自由化によってさまざまな事業者が参入してくるということですが、そんな簡単なことではありません。今の電力の競争は、何とか電力会社から抜けるお客様をたくさん作ろうと思い、資源エネルギー庁が一生懸命考えてつくった常時バックアップと小売部分供給という世界的にはない制度のもと、電力会社の電気を使ってお客様を奪っているという非常に特殊な形になっています。 これが家庭用になるとどうでしょうか。電力会社から電気をもらい、制度の網を突いてお客様を取るという競争とは違います。結論を言うと、いいお客様をきちんと抜くという形になっています。

 たとえば東京電力とソフトバンクが東京以外の地域で狙っているのが、毎月2万円以上を払っているお客様。家庭用の場合、毎月3,000円ほどのお客様では、取れば取るほど赤字になってしまうので、すごく難しいところです。ユニバーサルサービスと言われ、あまり使用量が多くないお客様には、電力会社がとんでもなく安い値段で売っていますから、家庭用においては今までなかった競争の形が現れてきます。………本文の続きを読む>>>

中小規模企業におけるコンプライアンスの浸透・定着策について

講師:経営コンサルタント 杉山 伸朗

初めに

コンプライアンスはどうあるべきなのか

 皆様、本日はどうぞよろしくお願いいたします。第1部は非常に旬なお話でしたので、私の「コンプライアンス というテーマは地味に思われるかもしれませんが、「エネルギーの自由化」という変化の中で組織をどう作っていけばいいのかという話になったとき、とても重要なところです。ぜひ第1部との関係性を見ていただきながらお聞きいただければと思います。

 私は20年ほど前からLPガス業界に携わらせていただいています。他にもいろいろな業界に伺いますが、全般的にサービス業や小売業が多いです。本日はさまざまな業界の話を踏まえつつお話申し上げたいと思います。

 さまざまに自由化の時代となり、競争が激しくなってくると、組織は「やってはいけないかもしれない」グレーゾーンを踏み越えがちです。新しい戦いが始まったとしても、絶対に及んではいけないことがあります。私は弁護士でも社保士でもございませんが、マネジメントによる人材育成の専門家として、コンプライアンス醸成はどうあるべきなのかという結び付けをさせていただきたいと思います。

CSR(企業の社会的責任)とコンプライアンス

CSRの階層的関係とは

 本日のキーワードは「コンプライアンス」です。CSR、つまり企業の社会的責任の範囲から位置付けを確認しておきたいと思います。これは企業の規模にはよりません。コンプライアンスの上位にくるもの、包含するものは「リスクマネジメント」です。リスクはないほうが当然いいのですが、企業活動には常にリスクがある。それによって、企業が一瞬にして吹っ飛んでしまうこともあります。あらゆるリスクをどう回避しながら進めるかということが経営そのものです。

 企業にとって、リスクマネジメントの上位にある存在意義は、企業の「社会的問題解決」であり、会社や組織が存在するうえでの使命です。………本文の続きを読む>>>