第119回タスクフォース21
2016.10月例会

講演録

エネルギー自由化への対応~LPガス事業者の視点で~

講師:一般社団法人日本ガス協会 業務部 経営支援室担当理事 角田 憲司

はじめに

 皆様、こんにちは。去年の7月にもこの例会に参加させていただき、千葉ガスの社長としてシステム改革関連の話をさせていただきました。千葉ガスは今年の5月1日付で東京ガスに吸収合併されたことで、私は今再び東京ガスに戻り、日本ガス協会に2回目の出向をしております。1回目の出向は第一次の都市ガス自由化が始まる1990年代後半であり、主に中小の会員事業者の経営支援をしていました。今般、奇しくもガスの全面自由化を前にして再度日本ガス協会に出向し、会員事業者の経営支援をしているという状況です。

 千葉ガスでは、東京ガスから転籍して5年ほど社長をやっておりましたが、途中でこんなことになってしまいました。千葉ガスという会社は、都市ガスで12万数千件、簡易ガスの戸建団地が2つ、そしてシリンダーが4千数百件という、3つの事業形態を持つ会社でした。一応、5年間ですべての事業について勉強することができ、貴重な経験となりました。ずっと東京ガスにいたらわからなかったところだと思います。

 簡易ガスとシリンダーについては東京ガスエネルギーに事業移管しました。そのやりとりをするなかで、同じLPガス事業でも保安関係など考え方が違うところがあり、それもよい勉強になりました。そしてこの4月30日まで、東京ガスになるべくさまざまなシステム統合の準備をしておりました。

 実はこのシステム統合は、まだ終わっておりません。相手は1,000万件の東京ガス、こちらは十数万件。業務システムのレベルが違います。それを統合しようとしてもなかなか合わないのです。そのため、経営統合までにぎりぎり間に合わせたが料金、営業関係だけ。内管工事、導管工事、緊急保安などは、まだ東京ガスのシステムを使っていません。名前は東京ガス佐倉支社になってはいますが、システム的には完全移行できていないのです。

 何を申し上げたいかというと、業務統合をしようとしてもシステム統合はとても大変なことだということです。ものすごくお金もかかります。都市銀行さんが、よく業務統合がうまくできずに延期になるとかありますよね。地銀さんでも、組んでいる相手はベンダーさんが共通だったりしています。そうでないと、業務の連携ができないようです。それと同じように、我々の事業にとっても業務システムというもののウエートが非常に大きいということを感じた次第です。

 同じように、電力・ガスの自由化に際して新規参入する時にも、こういったシステムに関するハードルは高いと思います。そのところをご理解いただけるようになれば、今日の私の話の半分は成功かもしれません。そちらは後半にお話をしますので、頭の中に入れておいていただければと思います。

 今回は、皆様にご理解いただきたい最低限のガスシステム改革についてまとめましたが、私の資料は大半がオリジナルです。すなわち、日本ガス協会のクレジットがついているものではありません。ガス協会がクレジットをつけて会員事業者様に提供できるものは、かなり限定的な事実関係のみです。あまり踏み込んだことを話せないということは、どの業界団体も同じでしょう。ですから、本日の資料は私自身のクレジットだということをご理解のうえ、お取り扱いいただければと思います。

今般のガスシステム改革の特徴①

先行した電力システム改革との整合性を重視した改革

 では、今回のガスシステム改革はどのような特徴を持った改革なのでしょうか。そして、これにより都市ガス事業はどう変わるのでしょうか。
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LPガス料金公開と独禁法について

講師:半蔵門総合法律事務所 弁護士 野﨑 修

料金公表に関する報告書

 皆様、こんにちは。本日は、料金公開と独禁法の問題というお題をいただき、お話したいと思います。これまでに出てきた議論を整理し、最後にQ&Aの形でお答えしていこうと思います。

 料金公開の問題については、これまでの議論の中で、料金が高い、不透明であるということがありました。液石法改正のときから言われてきたことではありますが、この議論のきっかけとなったのは、平成28年5月に出された報告書です。エネルギー自由化の中で、さまざまなワーキンググループがあり、そこで討議されています。この報告書は、経済産業省の、総合資源エネルギー調査会の資源・料金分科会の、液化石油ガス流通ワーキンググループという、長い名称になりますが、ここで出されたものですね。

 本年4月に電力小売りが自由化となり、国のガイドラインが作成されました。そこで、消費者が料金水準の適切性を判断することに資するように、「標準的な料金メニューと、平均的な使用量における月額料金例を公表することが望ましい」と定められたわけです。エネルギー全体を平等にしていこうという中で、来年4月からは都市ガスの全面自由化がされるわけですが、そこでも同様に国のガイドラインが示される予定です。

 そこで、同じエネルギーを担うLPガス事業者においても、「標準的な料金メニューおよび平均的な使用量における月額料金例を公表すべきである」という議論がなされたわけです。公表方法については、ホームページがあればそこに、なければ店頭の見やすい場所に、ということです。公表事業者の情報の集約と結果を消費者に対して発信するなど、公表に向けた取り組みを期待している、という報告でした。

 まず、電力小売自由化における国の指針がつくられました。そして、都市ガスでもつくられます。LPガスについてもつくる、とは言ってはいません。では、国はどういう形で、この公表を担保するのか。そこは「業界団体さん、協力してください」となります。また、消費者団体の調査等を通して、公表をしていないLPガス事業者に対して締め付けをしていくということを予告しています。消費者団体から「料金が不透明だ」とか、「まだこれだけの業者しか公表していない」とか言いながら、料金公表を促進していこうとする意図が、報告書から見えてくるわけです。

独禁法(価格カルテルに関するもの)

事業者の場合

 価格カルテルとは、談合です。モノを売る、サービスを提供する対価について、競争業者と相談して価格を決め、それを実行していくことは独禁法違反です。当たり前というか、世間でもよく言われていることです。この価格カルテルに関してはとても厳しく、………本文の続きを読む>>>

日本戸建管理

講師:株式会社創建 株式会社日本戸建管理 代表取締役 吉村 孝文
講師:株式会社日本戸建管理 井上 貴博

はじめに

 株式会社創建の吉村です。私が創建を立ち上げて30年を迎え、31年目に入りました。戸建住宅の建設、販売、メンテナンスのすべてをやっております。また分譲、賃貸マンション事業、さらには10年ほど前、全国展開していた小林住宅という会社がバブル崩壊で倒産したので、その再生を依頼され、注文建築も展開しています。

 また、北海道に木の城たいせつという非常にユニークな会社がありました。宮大工の仕事を機械で加工する会社でした。今から7年前、リーマンショックが始まったころ、この木の城たいせつが個人破産をしました。

 木の城たいせつは、北海道で一番の住宅会社でした。北海道新聞の1面を飾った倒産事件は、北海道拓殖銀行と、木の城たいせつの2社だけです。この会社を再生するということになったとき、テレビカメラも入り、NHKのニュースでも流れました。そしてその後、1時間の記者会見をさせていただきました。

 小林住宅も、非常に歴史のある会社で、2万5,000件のお客様を持っていましたが、再生するとなったとき、どの新聞にも載りませんでした。しかし、木の城たいせつは北海道新聞に3日間も取り上げられましたし、テレビもNHKをはじめとして1日3回ニュースが流れるくらい、すごい会社だったのです。小泉さんが総理大臣のときに訪問されたそうです。そんなすごいところが北海道にあるのか、とまで言われた会社を、7年前、銀行の総反対を押し切って私が購入しました。

 この会社は非常にしっかりとした住宅をつくっています。しかし宮大工の技術に試行錯誤されていたようで、1978年(昭和53年)頃、当時130億円のお金を投下しました。結果、この資金繰りが尾を引いて倒産、最後は個人破産までしたわけです。

 私は、もともと設計、工事をやっていましたので、これが機械でできるのはすごいことだと思っていました。私はそのころ、リーマンショックによって、創業して初めて大きな赤字を出しました。当然、取引銀行などから総反対を受け、結果「個人のお金でやりなさい」とまで言われましたが、個人でそんなお金はありません。しかし木の城たいせつは、北海道としても、再生してほしいと思うような企業でした。2万5,000坪の工場があったのですが、そこを非常に安く買わせていただきました。

 昨年、縁がありまして、札幌にある石山神社の建て替え工事を受注することができました。本来は1億円くらいかかる工事だったようです。近年、神社というところは、ご寄進がなかなか集まらず困っています。そんな中、建て替えをしなければならないけれど、予算は4,000万円しか集まらない。この神社の宮司の奥さんのお父さんと、私の次男が友人だったので、「何とかならないか」という話でした。

 そこで技術部門に聞いてみたところ、「十分できる」とのこと。昨年5月に地鎮祭、6月に上棟、8月に完成という、本来では考えられないスピードで仕上げました。3年前の伊勢神宮の式年遷宮の材料の一部をいただき、北海道のカラマツと組み合わせてつくったのです。

 地鎮祭では、氏子さんにさまざまなことを言われました。「本当にできるのか」「安過ぎるのではないか」といったようなことです。倒産した会社ですから、「手付金を持って逃げるのではないか」みたいなことまで言われました。しかし8月末に完成し、引き渡し。9月の7、8日の例大祭に呼ばれて行ったときは、宮司さんから涙ながらに感謝の言葉をいただき、その際「必ずご利益がありますよ」と言っていただきましたが、実は今年になって、名古屋の熱田神宮の宮司さんから「会いたい」と連絡がありました。また伊勢神宮の式年遷宮を取り仕切っていらっしゃるトップの方ともお会いました。さらに今年の5月には出雲大社の宮司さんにもお会いしました。多分、普通だったら会えないだろうという方々に、次から次にお会いすることができたのです。

 そして今日も、このような貴重なお時間をいただいています。これも、石山神社をつくったおかげかなと思っています。

「これから」を考えたさまざまなサービス

住宅業界への疑問

 私は住宅事業にかかわって四十数年になりますが、実はこの業界に対して疑問を持っています。世の中で一番高い買い物と言われる建物が、この程度でよいのだろうか。そして、金融機関の住宅ローンの融資制度。これが間違っているのではないだろうか、………本文の続きを読む>>>