第123回タスクフォース21
2017.6月例会
講演録
ビットコイン/ブロックチェーンについて
講師:bitFlyer 代表 加納 裕三 氏
ビットコインとは何か
ビットコインは「仮想通貨」
bitFlyer(ビットフライヤー)の代表取締役の加納と申します。ビットコインとブロックチェーンはかなり複雑な話になりますが、平易に説明いたしますので、よろしくお願いします。
ビットコインは「仮想通貨」の一つですが、そもそも仮想通貨とは何かということは、日本の法律で定義されています。仮想通貨は法律用語で、内閣法制局が名づけたものです。もともとは「価値記録」と呼ばれていました。なぜなら、通貨という言葉を法律用語として使えないということがあったのです。そのため「価値記録」というものが自民党から提案され、2014年から2016年までは、そう呼ばれていました。価値がある記録である、ということですね。
ところが、海外ではバーチャル・カレンシーズ、もしくはクリプトカレンシーと呼ばれているため、名称をそろえてほしいということで、何とか仮想通貨が法律用語となりました。
仮想通貨は、通貨ではありません。通貨というと、一般的には法定通貨になります。まず日本銀行が発行する日本銀行券、財務省が発行する貨幣、そして外国通貨です。外国通貨の定義はあいまいですが、ドルやユーロですね。よくわからない外国通貨をどう認定するかということは定義上難しいのですが、社会通念上流通しているものという感じで、法律的には結構あいまいです。以上の3つが通貨と呼べるものです。
では仮想通貨とは何かというと、法律用語で「支払手段」となっています。改正資金決済法上の支払手段の一つです。支払手段には何があるかというと、商品券や電子マネーなどですね。
仮想通貨の定義
次に、仮想通貨の定義です。まず不特定の者に対して代金の支払いに使用でき、法定通貨と相互に交換できる。当たり前ですね。通過は法定通貨と交換できなければなりません。実際に、ビットコインは「ビットコイン円」というものがあり、1BTC(ビットコイン)=32万円くらい(2017年6月7日時点)と非常に高いです。0.01BTCとか、細かく買えます。昔は、数円で取り引きされていたのですが、いまは30万倍くらいの価値になっています。
そして、電子的に記録されます。ビットコインを含む仮想通貨は、物理的に「これです」と見せることはできません。そして、移転できなければいけません。移転ができないと価値が交換できません。
大切なのは、法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではないということです。電子マネーの法律はもうあります。広くあまねく電子マネーっぽいものがありますが、法定通貨と、すでに定義されている電子マネーを除いたものすべてが仮想通貨であるわけです。PASMOやSuicaは仮想通貨ではないということですね。
ビットコインは目に見えない
ビットコインの単位はBTCです。そして、手に取って見える形が存在していません。実は、発行体がある仮想通貨もありますが、これが詐欺の温床となっています。世の中のビットコイン以外の仮想通貨のほとんどは詐欺です。皆様も「○○コインを買わない? 将来価値が上がるよ」というお話を………本文の続きを読む>>>
ビットコイン普及の背景
講師:ベンチャーラボインベストメント 代表 山中 唯義氏
はじめに
山中です。いまから二十数年前、液石法の改正のときにLPガス保安対策室長でしたから、一部の方は私のことをご存知かもしれません。辞めて20年経ちましたので、一応民間人のつもりで立たせていただいております。
先ほどお話のありましたbitFlyerの加納氏の応援をさせていただいている会社です。我々の会社は、事業の目利きを本業としています。二十数年やってきて、いかに難しいかということは私自身もよく知っています。逆に言うと、儲からない、といつも冗談で言っています。
自分を信じて投資しようということで目利きしてきました。最初に目を付けたのがサイバーダインというロボットスーツの会社。まだ大学の先生だった山海嘉之さんに「会社をつくるなら応援しますよ」と言ったことがきっかけです。いまや雲の上以上の方になってしまいました。そういう会社を早い段階から見つけて、応援をするということをやっています(笑)。
将来の可能性を秘めたビットコイン
bitFlyerとの出会い
加納氏の会社についても、実は私も2年くらい前まではビットコインを「こんなもの」と思っていました。不幸な事件もありましたよね。グレーで危険なビジネスというイメージがあったのです。ところが、弊社の社員が「これから、伸びていくだろう」と言ったのです。ITが進めば、金融の世界も変わるだろう、ということです。スタッフの中にブロックチェーンの走りとなっている人がいたので、チェックをしました。その中で、数社を面接をさせていただきましたが、やっぱりうさんくさかった。もしかしたら違ったのかもしれませんが、私にはそう思えて、パスしました。しかし加納氏と出会ったとき、「これは違う」と思い、改めてビットコインについて教えてもらいました。
ビットコインの可能性はもちろん、加納氏が技術屋でありながらも金融のプロであったということもあります。単なる技術屋さんの興味本位ではなく、経験に基づき、金融の世界でどれだけ役に立つかというお話をしてもらいました。
またビットコインの売買だけではなく、ブロックチェーンを支えている根底の技術を、彼自身が自分たちでつくれるしくみがあったのです。ビットコイン自体はシステムとして動いていますが、それをいろいろなところで使えるようにする。おそらく近い将来、皆様の会社でも使うようになります。そういう可能性を秘めた会社ということで、応援しようと思ったのです。そういうことを、我々は目を皿のようにして探しています。
国の取り組みの一つ「フィンテック」
新聞にも載ったので覚えていらっしゃる方もおられるかもしれませんが、政府が2020年に向けて何に力を入れるのかを決めた項目の一覧があります。「5大戦略テーマ」となっています。役所のようなことを言うと、こういった一覧は全部をバッと見るのではなく、一番上に何があるのかを見なければなりません。上から「移動革命の実現」「健康寿命の延伸」「サプライチェーンの次世代」「快適なインフラ・まちづくり」「フィンテック」………本文の続きを読む>>>
電力・都市ガス小売り自由化とLPガス事業における戦略
講師:環境エネルギージャーナリスト エンコアード株式会社 マーケティング本部長 本橋 恵一氏
はじめに
こんにちは、本橋です。本日はビットコインやブロックチェーンのお話がありましたが、実は、エネルギー業界はひそかにブロックチェーンに関心を持っています。たとえば2019年問題。太陽光発電の固定買取制度(FIT)の期限がくる。あるいは畜電池などの技術が増えていく。ただ売るだけではたいして儲からないですから、いっそブロックチェーン技術を使い、トランザクションコスト(取引コスト)を下げて売買できたら、系統が安定化するのではないかという話も出ています。ブロックチェーンは、この業界でもホットな話題となってくるのではないかと思っており、要チェックです。
今日は電力・都市ガス小売り自由化についてのお話です。昨年から電力自由化、今年から都市ガス自由化が始まりました。電力自由化から1年2カ月が経ったところで、この自由化はどうだったのだろうか。また、これからどうなるのだろうか。それから都市ガス自由化によって、LPガス事業者にはどういう戦略があるのかということをまとめてみましたので、よろしくお願いいたします。
電力小売り自由化のまとめ
自由化そのものの目的とは
私が今回の自由化を意識し出したのは2010年、東日本大震災前のことです。それ以前にも大口の自由化はありました。日本の電気代は高いから安くしなければならないということでした。海外と比較したとき、どんどん円が高くなっていけば、ドルベースで電気代が上がっていくことになり、輸出産業が困ってしまいます。そういうこともあって、1990年代から自由化の話があり、2000年に大口の自由化となりました。
ただ2002年くらいから、一般家庭の自由化の話もありました。原子力に関係しているのですが、当時、東京電力の南社長が審議会で、「我々は一生懸命、自由化を推進してきた。2008年くらいから、一般家庭の自由化も考えたい。併せて原子力をどうしていくかも考えたい」とおっしゃっていました。原子力発電について、どの部分が国の責任となり、どの部分をみんなでやっていくのか。廃棄物の問題などがあるので、その切り分けをしたい。その代わり、一般家庭の自由化を差し出す。そういった話でした。ところが、当時のデータ改ざん事件で社長が代わってしまい、話もどこかにいってしまったという過去があります。
その話がなぜ、2010年くらいにまた出てきたのか。それには、………本文の続きを読む>>>
改正省令等対応の14条交付書面「タスク試案」の検討
タスクフォース21事務局 中川 順一氏
従来書面で特段修正点はない
この時間は14条書面について、皆様と意見交換をできればと思います。「こうあるべきだ」という話をするわけではありません。
今回の会報(20号)に掲載しましたが、5月18日に幹事会を行ったとき、「タスクフォース21としても、14条書面について考えよう」という話になりました。
というのも、20年前の1997年、液石法の大きな改正があったときに、この書面交付の問題が出てきました。野﨑先生と、野﨑先生が当時所属していた川崎法律事務所、それにカナジュウ・コーポレーション、当時の三菱液化ガス、そして矢部さんと私で、議論をしました。それが、いわばタスクフォース21の出発点だったわけです。
当時は、販売契約書という概念があまりありませんでした。法律上、書面交付自体はあったのですが、販売契約を合体させ、取引の適正化に合わせて14条書面をつくろうということになり、ひな型を出したわけです。そして当時、矢部さんが所属していたプロパン新聞と、三菱液化ガスの系列向けの冊子『ハッピーコール』に出しました。
その後、そのときにつくったひな型をいろいろな会社で採用いただきました。途中、特商法の問題などが出てくる中で、それぞれの都道府県で進化していったわけです。タスク会員の会社の中でも、さまざまな14条書面があります。今回の省令改正に対応して、各都道府県協会においても、対応したかたちのものができつつあると思います。タスクフォース21には原型版があるわけですから、これを踏まえてどう直せばいいのかな、といろいろ考えました。
しかし、あまり直すところがなかったのです。たとえばカナジュウ・コーポレーションさんをはじめとするいくつかの会社は、従来使っているものから、ほとんどいじらなくて済むとおっしゃっています。にもかかわらず、なぜ各都道府県協会はバタバタしているのでしょうか。
それはまず「きちんとしていなかった」ということがあると思います。20年前の議論と、今回の議論はあまり変わっていないのですね。20年前に言われたことについて、きちんとやっていなかったことが多い。20年前の改正の少し後、公正取引委員会が文書を出しました。「いままでのLPガスの取引は非常に問題があったけれど、今回の省令改正できちんとするでしょう」というものです。しかし20年経ったいま、きちんとしていなかった。そういうことがあり、またこの議論が出てきているわけです。
これは私個人の感想ですが、今回のガスシステム改革は都市ガスの議論だったはずなのに、いきなりLPガスの議論が出てきた。そこに引きずられるかたちでこの省令改正も出てきた。いま議論している人たちは、20年前の議論をあまり知らずに、現状のLPガス業界の問題点をいろいろと言ってきているから、細かい話になってきているのではないでしょうか。
大切なのは法律の趣旨を理解すること
省令改正の動きの中で、業界関係のいろいろ人が書面や、今回とくに問題にされている料金表の記載事項について、行政に対して「では、これはどうするのですか」と問い合わせています。誤解を恐れずに言いますが、そういうことを聞くと、厳格になるに決まっています。前回、野﨑先生からガイドラインの説明がありましたが、まず法律は「取引を適正化しなさい」「消費者を保護しなさい」という大きな概念を言っています。要するに、うそをつくな、きちんとやれということですね。そのための方法として、「料金はこう説明しろ」というガイドラインが示されたわけです。大切なことはその趣旨を理解し、それにそった書面をつくり、確実に交付することです。
ところが、趣旨の理解に自信がなく、きちんとやるとはどういうことなのか自分で決められないから、「これはいいですか?」と聞きにいく。聞かれれば、より厳格な答えを言わざるを得ない。その結果、どんどんときついものになってきている、………本文の続きを読む>>>