第126回タスクフォース21
2018.12月例会
講演録
東京ガスグループが考える新たなエネルギーネットワークについて
講師:東京ガスリキッド ホールディングス株式会社 代表取締役 村関 不三夫 氏
はじめに
東京ガスリキッドホールディングスは、2016年1月につくることに決まった会社です。そのとき、私はエネルギーソリューション本部長で、工場など大口の都市ガスの販売をしていました。1月の経営会議でリキッドホールディングスをつくるという話が出たときも、自分とは何も関係のないことだと思っていました。すると、4月にこの会社の社長になることになり、それから1年半くらいやってきました。
さて、本日の演題は4つの目次を用意しました。まず1つ目はエネルギー自由化と自分史。2つ目は「チャレンジ2020ビジョン」。これはグループの経営戦略ですね。そして10月5日に発表した東京ガスグループの「GPS2020」。そして最後に、東京ガスリキッドホールディングスとして考えるLPガス事業について、ご説明したいと思います
エネルギー自由化と自分史
自由化と重なる自分史
最初のテーマである「エネルギー自由化と自分史」。少し変わったテーマとさせていただきました。1995年から、エネルギー自由化が始まります。200万㎥以上のお客様に対する都市ガスが自由化となりました。2000年には電気も始まりました。そして今回の自由化は、まず電気、そしてガスが1年遅れて行われました。順番が逆転しています。
私は1998年から2001年まで、東京ガスのニューヨーク事務所の所長でした。そのころ、アメリカでいろいろな自由化が実施されていました。それから2001年に東京ガス本社に戻ってきて、総合企画部の長期戦略グループでマネージャーをやっておりました。そのときも、今度は国内で、自由化の話が出ておりました。ですから、さまざまなタイミングで、エネルギー自由化と、自分の生活史が被っていることが多いのです。そのため、こういったテーマにさせていただいたわけです。
米ジョージア州の例
冒頭に申し上げたとおり、1998年から2001年まで、ニューヨーク事務所の所長をやっていました。アメリカの自由化とは、国としてどうするかではなく、州ごとに制度設計されていることが大きな特徴です。なおかつ、州によっては自由化されていないところもあります。
ご紹介するのは、1999年に、アメリカでも非常に特徴的な自由化を導入したジョージア州のガス自由化プログラムです。これは、全米の州で初めて行われたものです。ですから我々の事務所でも、かなりウォッチしていました。ジョージア州で一番大きなガス会社は、アトランタガスライトです。このアトランタガスライトは「もうガスを売ってはいけない」、つまり、「輸送だけする配給事業者になりなさい」と言われていました。そのためジョージアナチュラルガスという子会社をつくって小売りをやり、アトランタガスライトは配給専門の会社になったわけです。そういうこともあり、ここには数多くの小売事業者が新規参入しました。
そこで、3つのことが起こりました………本文の続きを読む>>>
エンゲージメント経営の仕掛け ~今の時代だからこそ求められる、会社側からの“キッカケ”づくり~
講師:株式会社スタメン 加藤 厚史氏
はじめに
会社紹介
「エンゲージメント経営」とは聞き慣れない言葉ではないでしょうか。本日はそれについてお話させていただきます。
いわゆるITっぽいサービスには、なかなか馴染まないという会社さんもあるかもしれません。しかし、創業100年の会社さんが取り入れてうまくいっているケースもありますし、平均年齢が高いとある製造業で採用の改善や社内の生産性向上ということで、非常に価値を見出していただいております。
我々はいわゆるITベンチャーといわれる会社で、珍しく名古屋発です。もちろんクライアント様の多くは東京ですので、営業拠点を東京に持ちながらやっています。2016年8月にできたばかりで、本日は大先輩ばかりです。事業内容は、組織エンゲージメントクラウド「TUNAG」という新しいポータルサイトの運用や提供をさせていただいております。
自己紹介
私はもともとボートレーサーになりたかった人間です。愛知県の田舎に育ち、結構大変な(笑)家庭の三男だったため早く稼ぎたかったのです。近くに蒲郡競艇というボートレース場がありました。ボートレーサーの平均年収は2,000万円以上、これは絶対になりたいと思っていましたが、結局受かりませんでした。
それなら弁護士になろうと目指したのですが、そちらも本番に弱く結局大学院まで受け続けましたが、諦めました。つまり、早く稼がなきゃと思っていた人間が、2回挫折して同じ年齢の人間よりも就職遅れ、もっと言えば奨学金で大学院まで行ったのでマイナスのスタートでした。その後すべてを0からやり直そうと、名古屋の日本テレビ系列のテレビ局に新卒で入社しました。私自身は法律の勉強をしたり、テレビ局に入ったりしたわけですから、どちらかというとITはお門違いでしたが、3年目にITベンチャーに転職をしました。この経験があるからこそ、いままでアナログで進んできた業界ほど、ITの恩恵を受けられるのではないかと考えています。
ありがたいことに、転職したITベンチャーがだんだんと大きくなり、28歳で取締役にさせてもらい、29歳でマザーズ上場、その後東証一部に上場させていただきました。その後、7年間、取締役をやっていました。
そのとき主に担当していたのは、新規事業と人事です。全然違う領域なのですが、どちらも重要なのは人と組織です。どうやってやる気をもって働いてもらい、会社を信頼してもらい、そこで持てる力を存分に発揮したい、新たに仲間に加わりたいと思ってもらえるかということをすごく突き詰めてやっていました。
たとえば新規事業の分野でいえば、半年以内の結婚式場探しのサイトをゼロから企画して立ち上げました。ゼクシィさんのアウトレット版みたいなものですね。業界では2番手くらいにはなっていました。また自転車通販ECサイトも0から企画・立ち上げをしました。ママチャリのような自転車を完全に組み立てた状態で、しかもネットで買えるということで、自転車専業としては最大手の一角のサイトになっています。こういう新規サービスを立ち上げながら、人事と組織のことをずっと考えてきました。
会社と社員の間のエンゲージメント醸成
そして去年、独立をしてスタメンという会社をつくりました。私自身は、人と組織にめちゃくちゃ興味があるわけです。どういう組織や人事制度をつくれば、みんながやる気になるのだろうかとか、この人の力を引き出せるのだろうかということをずっと考えてきました。組織力、採用力こそが、事業成功のカギだと本気で思っています。
では、具体的にはどう体現すればいいのか。………本文の続きを読む>>>
新電力の販売支援とガス&電気の見える化の活用について
講師:株式会社アイ・グリッド・ソリューションズ 取締役 秋田 智一 氏
はじめに
今日はお時間をいただきありがとうございます。電気の全面小売自由化が起こり、そろそろ1年半になります。しかし思った以上に、都市ガス、LPガスからの電気小売りの参入が活性化していません。参入していても、東京ガスなどは別として、なかなか成功しているようには見えません。電気の小売りを始めることで、新しい顧客との関係性が築けるビジネスチャンスだと捉えて取り組んだところもあると思います。それについて、ガス業界の方がどう感じられているのかなと思っていました。
もしうまくいっていないのであれば、何か一緒にできることがないだろうか。そして、付加価値サービスをどうつなげていくべきか。また、せっかく取った電気のお客様をいかに囲い込んでいくかという視点で、ガス事業者さんとタッグを組むことができるのではないかと考えているところです。
私たちは、今回のテーマでもある電気の見える化ということを、一定の規模でやり始めた先駆けの事業者です。今日のもう一つの議題となる“エネルギーを地産する”というところで、屋根貸しの太陽光についても、先駆けとしてやらせていただきました。
実際に電気の見える化をしていくと、今度は集めた電気の需給を、デマンドレスポンスによって合わせていく調整力として使えます。電気の見える化と、そういった周辺のビジネスを通して、最終的に電力の供給事業に参入していますが、どちらかというと発電所を持って供給余力をいかに売っていくかというより、お客様側からの見える化の視点で電気代をマネジメントしたり、電気使用量をどう下げるかといった顧客視点から入っていきました。ですから、下流から上流に上がってきたような会社です。
発電する、管理する、販売するといったそれぞれの事業領域のなかで、電気に関わるひと通りのことが自社できる状況です。
エネルギーを発電・管理・販売する
大手企業の施設屋根資産で発電所を運営
発電所の持ち方としては、土地型ではなく、屋根型として、合同会社ミドルソーラーエナジーというものを立ち上げました。大手物流施設や食品工場等の屋根をお借りして、発電所を運営しています。こういった有効な屋根資産を使い、分散電源をうまく活用することで、次の事業展開につながってきています。
運用を変えて電気コストを削減
電気の見える化は、それだけで終わりということではありません。流通小売業が中心ではあるのですが、産業用も含め、電気使用量の見える化はコスト削減の観点からやっています。
我々は2004年の設立ですが、省エネ法が定まった1973年以降から、そういった取り組みは始まっていました。私たちはその取り組みが遅れていた多店舗展開型のチェーン店に絞り、電気で省エネをするご提案をしています。
電力コストは、運用を変えるだけで8%以上、業種によっては10~12%が削減できることをナレッジ化して、プログラムを提供し、対価をいただきます。電気の供給はしていなくても、電気の使用量を下げることで、ビジネスにつなげている非常に珍しい会社です。
こういった電気代の削減を運用でやるとか、見える化するといったことは、機器メーカーさんは計測機器を販売するなかでやってはいますが、実際にナレッジやノウハウを持ってやっているところは非常に少ないです。
自動制御は使っていません。………本文の続きを読む>>>