第131回タスクフォース21
2018.10月例会

講演録

第1部 変化しつつある電力・都市ガス自由化最前線

講師:一般社団法人日本ガス協会 地方支援担当理事 角田 憲司

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はじめに

 皆様、こんにちは。以前タスクフォース21でお話させていただいたのは、ちょうど2年前です。本日は欲張って、2本立てのテーマでお話したいと思います。

 日本ガス協会に勤務して3年目、来月で64歳になります。来年はもういないだろうと思っていますから、こういう立場でお話することもこれでなくなるかもしれません。

 1部は自由化の話、2部は皆様の身近な話題である透明化・適正化の話をさせていただきます。LPガス業界において、公式会合のコメンテーターとなったり、業界紙に寄稿させていただいたりもしていますから、いわば当事者のような意識でおります。タスクフォース21の例会に出ていらっしゃる意識の高い皆様へのお願い事項も含め、お話したいと思います。

電力小売全面自由化の進捗

低圧電力のスイッチング状況

 まずは「変化しつつある電力・都市ガス自由化最前線」についてお話します。2018年6月末時点の低圧電力のスイッチング状況を見ると、数字では18.3%になっていますが、スイッチングには2種類あります。1つは、既存の大手電力会社の従量電灯と呼ばれている規制料金から、新電力にスイッチしていくこと。これを、俗にスイッチと呼んでいます。

 もう1つは、規制料金から、同じ電力会社のなかの新料金メニューに移ること。これも、お客様からすると、自由料金として選んだことになります。ですから経済産業省は、エクスターナルのスイッチングと、インターナルのスイッチングという表現をして、両方の数字を出しています。その合計が18.3%ということです。ですから、狭義のスイッチングでは11.3%。2年経って、1割くらいということですね。

 首都圏と関西圏のスイッチング数が高いのは当然として、注目すべきは北海道です。かなり新電力に取られている。同じエネルギー企業として、彼らの身になって考えると、本当につらい。そして、自分のところのメニューにおける自由料金への切り替えはなかなか進んでいません。それが進んでいるのは、中部電力、中国電力ですね。とくに中国電力圏内は新電力スイッチングが少ないこともありますが、自分のところのメニューへの切り替えに一生懸命です。

既存電力事業者の相互参入状況

 もう1つ、国の政策として意識されているのは、大手電力対新電力の戦いだけではなく、大手電力、つまり既存電力会社同士の相互参入です。それがないと、自由化の競争にならないというわけです。自由化前、10大電力会社がお互い攻め合ったケースは、大口で1件しかありませんでした。

 ところが今般、パンドラの箱が開いて、相互参入しないと、自由化に後ろ向きだと思われてしまうため、一生懸命やるようになりました。瀕死の北海道電力ですら、形としては首都圏で電気を売っています。

 地方電力はまず首都圏に出て、次に近畿圏に出る。沖縄を除くと、ほとんどが首都圏のマーケットに出てきています。「ふるさと電力」とか「アリバイ電力」とか言われていますね。アリバイ電力とは、「他地域で電力小売りをやっていますよ」というアリバイのため。たとえば四国電力だったら、一応首都圏と近畿圏に出ている。取れている件数は何千件程度かもしれませんが、揶揄して「アリバイ電力」というわけです。首都圏にも愛媛県民や高知県民がいるだろうといった感覚だと思います。

 東京電力の場合、後ろに経済産業省がついていますから、自由化に向けてさまざまなことをしなければいけない宿命を背負っています。それだけではなく、小早川さんが社長になってから何でもありというか、結果うまくいったという自由奔放な体質に変わってきています。従来の電力会社のような凝り固まった概念にとらわれないことを、先兵としてやっています
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第2部 真にお客様から選ばれるLPガス事業者になるために~透明化・適正化問題を超越して~

講師:一般社団法人日本ガス協会 地方支援担当理事 角田 憲司

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透明化・適正化問題をめぐる状況

消費者団体の強い危機感が動かした改革

 これまでは業界のなかで、いくら指針をつくっても徹底されませんでしたが、ガスシステム改革が始まると、都市ガスの審議会で、消費者団体からLPガスの問題が提起されました。都市ガスもLPガスみたいに不透明になってはいけないという危機感があったからです。

 それに呼応してエネ庁も動き、一昨年には橘川先生を座長にしたワーキンググループにて課題整理され、最終的には、緩やかではありますが、国による指導に踏み切る方向になりました。これを後押ししたのは、もちろん消費者団体です。

 一方、都市ガスのほうも、料金規制の経過措置を強化しないと、LPガスのようになってしまうと言われて、厳しくなりました。消費者団体の強い危機感が動かした改革だと思います。

透明化・適正化問題に関する一連の措置

 一連の措置としては、ワーキンググループから始まり、その報告書に基づいて昨年、今年と液石法の施行規則が改正されたり、ガイドラインが制定されたりしました。施行規則の改正は、規制力を持つ“マスト”で、ガイドラインは“ウォント”、つまり「望ましい」くらいの意味しかないと思った瞬間に、皆、気を緩めるかもしれません。でも都市ガスのガイドラインは違います。ガイドラインに抵触すれば、改善勧告が出ます。実質上の“縛り”ですね。

 もう1つは、料金公表状況調査。そして、最近は大家さんや管理会社に対するアンケート調査もしています。

 これはすべて料金透明化の問題であり、たとえば集合住宅の取引慣行を適正化しようなどということはやっていません。消費者を向いて、消費者にとっての料金を透明化していく。その過程で適正化ということはありますが、ゴールはあくまでも透明化。役所は、それ以上のことはやりません。

 遵守状況は立入検査等でチェックすると言われていますが、指導状況は、県によってバラバラです。「問題があればきちんとやるものの、この部分だけをいちいち確認していたら、人手が足りない」という県があるわけです。この立入検査の担当は、県によっては消防防災課など、もともと産業保安からきています。そういう人が、商慣行のところでこまごましたことができるかというと、なかなか厳しい。エネ庁は燃えていますが、地方自治体まで足並みそろえた指導の厳しさになるかはわかりません。

定まっていない基本認識

息長い取り組みが必要

 透明化・適正化問題に関する基本認識は定まっていません。都市ガス業界は長年、公的規制を受け、ガスシステム改革も経験しています。そして、もう逃れられないルールだと思っています。都市ガスも逃れられないけれど、LPガスも遡って適応されていますから、もう逃れられません。中途半端なことをやると選ばれなくなりますから、やらなければなりません。

 ただし、公共料金の経験がないとか、業界が一枚岩になれないといった業界の特殊性を理解したうえで、息の長い取り組みが必要です。

 北関東のLPガス懇談会で、私がコメンテーターとして「息長くやりましょう」と言ったら、エネ庁からは「早く決着をつけないといけません」と言われました。エネ庁が言っている決着とは、「標準料金の公表くらいは早くやれ」ということです。でも私が申し上げたかったのは、根本的に解決するためには時間がかかるから、地道にやるべきである、ということです。 ………本文の続きを読む>>>

マスコミから見たLPガス業界

講師:毎日新聞社 記者 髙橋 昌紀

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はじめに

 専門家の皆様の前でLPガス業界についての講演をさせていただくのは非常に緊張します。まずは新聞、特に一般紙というものについて、ざっくばらんにお話させていただきます。新聞記者はどのような経歴を持っているのか。紹介も兼ね、私自身のことを説明させていただきます。

 北海道で新聞記者になったのは1995年でした。地方勤務であっても、全国的なニュースには必ず、遭遇します。7年の間に函館空港ハイジャック事件、北海道拓殖銀行の破綻などを取材しました。毎日新聞では2年半の仙台での勤務後、東京本社に異動。地方部、夕刊編集部、社会部、経済部とめまぐるしく、三菱自動車のリコール隠し、JR福知山線脱線事故の事故調報告、耐震強度偽装問題などに関わりました。振り返れば政権交代の時期にもあたり、国会に出入りもしています。非常に忙しかった。2011年の東日本大震災の直後に名古屋の中部支社に移り、中部電力、トヨタ自動車などを担当しています。

 一般紙の記者はこんなにバラバラの分野を担当するのか、と思われるかもしれません。まあ、私はとくに異動が激しかった。1つの部署に2~3年しかいませんでした。同一の部署に10年近くもいる記者もいます。ただし、多くの分野を担当するとそれだけ、知識と人脈に広がりが生まれるのは確かでしょう。社会部と経済部の記者は本質的に異なる思考をとりがちですが、両方を経験できたことは大きかった。

 3年の勤務後に東京に戻り、新設のデジタル部門の担当となりました。この時は太平洋戦争から、芥川・直木賞まで。分野を問わず、何でも屋といった感じです。再びの社会部では国土交通省、JR、民鉄などを担当。地方の山形支局において支局次長、いわゆるデスクを1年間務めています。今年から、3回目の社会部勤務。とうきょう支局に席を置いています。

報道までの流れ

担当デスクから交番会議まで

 今回の講演のきっかけになったのは毎日新聞8月2日付けの社会面「LPガス料金、不透明」という記事でした。主な取材先は資源エネルギー庁です。私はエネ庁担当の記者ではありませんが、経済部時代に重電産業担当として、経産省を取材しています。その時の知識、人脈が役に立ったとも言えます。

 この記事はどのように形となり、新聞紙面に報道されたのか。まずはもちろん、取材が必要です。取材先としては、当然ながら、エネ庁。そして、業界となります。組織だけではなく、個別の役人であったり、業界関係者であったり。川上から川下まで、話を集めていきます。私はLPガスについては専門家ではありませんから、現状がどうなっているか、知らなければどうしようもありません。出版物、過去の記事なども参照しました。

 ここまでは新聞取材において、オーソドックスな流れだと思います。偏った知識、取材だけでは誤る可能性があります。いろいろな人から話を聞き、資料を精査し、それをもとに担当官庁に当たっていきました。

 そして、記事を書き上げます。しかし、それだけではまだ原稿の段階です。次に社会部副部長、つまり“デスク”のチェックを受けることになります。デスクの多くは記者歴20年以上のベテランで、「ここは詰めが甘い」とか、「実際はどうなんだ」と疑問を突きつけてくるわけです。原稿にもどしどし、ペンを入れます。もちろん、こっちは間違った直しは困る。意図を説明すると「お前の文章力のなさが悪い」などと貶されることもあります。ここでひとまず、記事が完成するわけです。

 新聞は毎日、朝夕刊が発行されています。そのため、すべての新聞社が“交番会議”というものを1日最低2回、夕刊のために早朝以降、朝刊のために夕方以降、開いています。この会議のトップは編集局次長。編集局のナンバー2です。さらに社会部、政治部、経済部といった各部署を代表し、各一人の副部長が出席します。彼らは“当番デスク” と呼ばれ、日替わりとなっています。この当番デスクたちがそれぞれ、交番会議で「うちの部はこれが一押しです」と原稿を出し、「今日の1面はこれだ」「社会面のトップはこれだ」とか侃々諤々やっていくことになります。そうした過程を経て、その日に制作する新聞のレイアウトが決まっていくのです。

 「LPガス」の原稿については、社会部の当番デスクが「一押し」として交番会議に提出し、「内容的におもしろい」となり、編集局次長が社会面トップに相応しいと判断した訳です。
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「あした式」人事評価制度とは

講師:株式会社あしたのチーム 山本 拓馬

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はじめに

 皆様、こんにちは。あしたのチームは、創業して10年目を迎えた会社です。全体で450人くらい(パートナー含む)おりますが、私自身、5年前に新卒で入社したときは15人くらいでした。そこから、5年間で倍、倍の成長をし、全国各地に支店を開設させていただいております。海外進出もしておりまして、台湾、シンガポール、上海、香港で立ち上げております。

 サービスは「ゼッタイ!評価」という人事評価制度1本のみです。評価については、会社様によって、すでに構築されているところもあれば、何もないなかで社長様が査定されているところも多くあります。そういった評価制度のブラッシュアップをさせていただくサービスを提供しています。

 特徴は「運用おせっかい」というクラウドを用いた支援サービスの提供です。評価シートや目標管理シートを運用されている会社様もあると思いますが、エクセルや手書きの場合が多い。このサービスですと、ウェブ上に1人ひとりのアカウントを発行し、アクセスすると自分の評価項目が出てきて、そこにコメントを入れたり、点数を入れると会社で一元管理ができるというシステムです。それを使って私たちが分析し、管理職の研修や評価制度のブラッシュアップをします。現在、全国で1,500社ほどに導入していただいています。

 人事評価制度というと、「給与を決める査定ツールでしょう?」と言われます。もちろんそうなのですが、そのためだけに利用していくのはもったいない。いわゆる運用コストがかかるだけのツールとなります。管理職が部下と面談したり、目標管理の運用方法を変えていくだけで、いかに業績の向上につなげられるか。最終的に、この人事評価制度を通じて業績向上を図ることが目的です。

 今、売り手市場だからこそ、私たちの評価制度が多くの会社様に受け入れられているのではないかと思っています。従来型の評価制度に比べると、運用負荷がかかる仕組みになっています。負荷がかかるからこそ、社員の育成につながる評価制度になり、魅力的な報酬制度につながっていくのではないかと考えております。

「あした式」ゼッタイ!評価制度の特徴

評価期間は四半期とする

 ポイントは、人材育成に主眼をおいているところです。従来型の評価制度との大きな違いは運用サイクルで、四半期にしています。従来型は、半期や通期が一般的だと思いますが、私たちは倍速の3カ月で1枚のシートが完成することを推奨しています。

 これには、2つの理由があります。1つは人材育成の観点です。半年に一度ですと、目標を忘れてしまいやすい。上司の方も、メンバー1人ひとりの目標を覚えていられませんし、評価される側も、自分で立てた目標を忘れてしまうことがほとんどです。

 すると、結局目標を意識せずに日々の業務に取り組んでしまう。それでは成長を妨げてしまう要因にもなりかねませんし、目標達成の意欲をかき立てにくいのではないかと考えています。

 サイクルを四半期にすることで、より具体的な行動目標を考えられるようになるということと、目標に対する振り返りの頻度が上がります。

 2つ目に、労務リスクに対する企業防衛です。どれだけ査定に関するフィードバックが行われているのか。年に1~2回しかフィードバックしないのではなく、3カ月に1度くらいは、立てた目標に対して上司から指摘をされる。再三の改善が促されているか、会社のなかでコミュニケーションがされているかによって、評価に対する満足感、納得感が大きく変わるだろうというところです。

 当然、半年に1回より3カ月に1回のほうが、運用負荷はかかります。でも人材育成という観点、評価に対する納得感を上げていくという観点から、四半期で評価することをお勧めしています。

給与改定は年2回

 続いて、査定期間です。これは給与改定を行う期間ということですが、半期を推奨しています。1年に1回の査定に比べると管理の点で負荷がありますが、これには2つの理由があります。

 まず給与改定が1年に1回よりも、2回のチャンスがあるほうが、優秀な人材にとって魅力的ではないか。一方で年2回、給与が下がる可能性もあるということです。でも、自分自身のパフォーマンスに自身がある方ほど、年2回自分の給与を上げるチャンスがあると捉えるのではないかなと思います。

 2つ目のメリットのほうが大きいと思っています。それは、パフォーマンスギャップを埋めやすいということです。今は売り手市場なので、高年収で人材を迎え入れなければ採用ができない時代です。本来なら前職の経験や実績を見て、たとえば年収600万円の方なら650~700万円で希望してくるため、………本文の続きを読む>>>