第136回タスクフォース21
2019.8月例会
講演録
エネルギービジネスの次の展開は?
講師:エネルギービジネスデザイン事務所 本橋 恵一 氏
動画ダイジェスト版
はじめに
こんにちは。今日は、LPガスに限らないエネルギー業界の話をしたいと思います。最近どういうことになっているのか、何点かピックアップした上で、LPガス業界にどんなビジネスチャンスがあるのかということをお話させていただきます。
最初に、私のプロフィールです。25年くらい前、『月刊エネルギーフォーラム』という雑誌の会社に転職し、そこからエネルギーに関わっています。10年ほど、電気、ガス、新規事業、原子力、環境といろいろ取材をさせていただきました。
その後は基本的にフリーで、物書きだけではなく、ところどころ実業的なことをしたり、アメリカのスタートアップ企業の日本法人を手伝ったりと、いろいろなことをしてきました。今はジャーナリストの傍ら、いくつかの会社のコンサルなどもさせていただいています。趣味は銭湯とトレッキングです。銭湯は最近、バイオマスからガス化しています。でも、これからまたバイオマスになるかもしれませんね。
今日のアジェンダは、2016年の電力小売全面自由化から始まり、どんなことになっているのか。そして、今日もものすごく暑いですが、気候変動問題はどうなっているのか。そして、よく言われているデジタライゼーション。これらも非常に関係してきますから、併せてお話させていただきます。その上で、LPガス事業者がどう展開できるのかということのヒントをお話できればと思っています。
エネルギー自由化で何が起きているのか
大手電力に組み込まれる新電力
電力自由化があって、何が起きているのか。裏側で起きている一番大きいことは、系列化です。小売電力事業者の登録はもう600社を超えていますけれど、では独立系の会社が生き残っていけるかというと、多分、それは非常に難しい状況になっています。むしろ、力のある独立系の事業者さんがどんどんと大手に組み込まれている。これが、実情なのではないかと思います。
最初の段階で、三菱商事系のダイヤモンドパワーの株式の80%を中部電力が取得して、これから中部電力領域外に展開していくということでスタート。独立系の電力会社Looopに資本参加しました。先日、Looopの社長にお会いする機会がありましたが、小売電気事業にはまったく頭がいっていないです。そこは中部電力にやってもらい、自分たちはもう一度太陽光発電ビジネスをやりたいということでした。
同じようなところに、アイグリッド・ソリューションズがあります。もともとスーパーの省エネをやっていた会社ですが、電気事業に入ってきました。スーパーと不動産屋を通じて顧客を拡大していきましたが、関西電力の資本が入りました。関西電力は、お客様に対して省エネサービスを一緒にやりたいわけです。そうすると、アイグリッド・ソリューションズにいた人たちはもう一度省エネサービスに戻っていく。小売は
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日本の木造住宅技術の進化と環境技術の方向
講師:北海道科学大学 事務局長 福島 明 氏
動画ダイジェスト版
はじめに
初めまして、福島です。本日はエネルギー関係の方がお集まりとのことですが、私の話は建築系の方を対象としたプログラムになっていますから、なるべくわかりやすくお話したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
エネルギー系というと、北海道の石連さんとずっとお付き合いがあり、お手伝いをさせていただいたことがあります。世の中が電気にシフトしていると感じており、本当にそれでいいのかと疑問を持っています。
今、北海道の住宅技術は飛び抜けて高いと言われています。北海道の工務店の技術は、世界のトップランナーなのです。タスクフォース21で森みわさんが講演されたと聞きましたが、ドイツにも負けていません。私は北海道の大学で講義をしていますが、学生に将来もし本州で仕事をするなら「断熱・気密技術、寒冷地技術」というのがアドバンテージになるけれど、北海道で仕事をするなら、それがないとだめだよと話しています。
最近は本州でも技術の高い方が出てきて、「もう北海道に学ぶことはない」と言われることもあります。それもその通りではありますが、そもそも北海道と本州の一番の違いはベースにあります。
北海道は、工務店の7~8割がきちんとした家をつくります。普通につくれば、普通にきちんとした家なのです。ところが本州にくると、私が見ている限り、きちんとした家は10軒に1軒しかありません。ベースがまったく違うのです。皆様はエネルギーを扱いますが、住宅の性能をきちんと担保することがいかに大事か、ご理解いただきたいと思っています。
今、全館空調が本州で流行っています。雨後の竹の子のように、全館空調をやる会社が出てきていますね。全館空調とは、24時間空調です。もしこれが今のまま本当に本州で広がっていくと、日本の住宅のエネルギー消費量は倍になります。ですから、そういった技術は断熱と一緒に広めていかなければなりません。
そして、住宅は断熱改修だけではいけません。日本の在来木造住宅の10軒中9軒は耐震性がありません。昭和56年以降の建物は、そこそこ耐震性があると思われていますが、あれは幻想です。基本的に2000年を超えないと、まともな家はありません。震度7がきたら、多くが壊れます。それは、熊本地震でよくわかりましたよね。新しい建物でも壊れました。震度5強くらいまでしかもたないのです。
ですから今、改修するなら耐震と断熱を一緒にやらなければなりません。耐震改修で一番難しい問題は、お金でもなんでもなく、建物の環境性能が落ちるということです。それを落とさずに耐震改修するのは大変難しい。大型ビルを見るとわかりますが、耐震改修した建物はすべて見栄えが悪い。それは、設備的な性能をスポイルしながら耐震改修しているからです。ですから、どうしたら断熱性能を上げつつ耐震改修ができるのかが大切なのです。
断熱化がもたらしたもの
日本の住宅は隙間だらけ
昭和50年前後にオイルショックが起きたころ、世界中で建物の断熱が始まりました。それまで日本だけが遅れていて、ドイツなどの海外は進んでいたのかというと、そういうわけではありません。ドイツだって、当時まで断熱なんてそんなに していなかったのです。
断熱を始めていったときに遭遇した問題は、「断熱とは、建物の耐久性と相反する技術である」ということ。世界中が、それに気が付いた。日本でそれが身に染みてわかったのは北海道だけでした。
日本の木造住宅は、欧米と比べてあまりにも建築の考え方が違い過ぎて、性能が上げられなかったのです。本当に大変でした。15年くらい、地元の研究者も、技術者も、議論しながら七転八倒です。激しい議論が、昭和50年代の北海道内のあちらこちらで起きていました。非常に技術的な議論が交わされていましたが、なかなか進められなかった。
というのも、日本は雨が多く湿潤な気候に対応して、先に屋根を作り隙間を上手に作る工法。海外は下から積み上げてつくり、………本文の続きを読む>>>
グラスウールのブローイング工法による断熱施工技術の紹介
講師:音熱環境開発株式会社 代表取締役 三星 雅宏 氏
動画ダイジェスト版
はじめに
皆様、こんにちは。今日は北海道で建てられている高断熱・高気密住宅の概要、そしてそれを実現するにあたっての技術についてご説明します。
本日お集まりの方はリフォーム事業をやられているところも多いと思いますから、断熱について検討いただく機会になればと思っております。よろしくお願いいたします。
当社は北海道で約26年、断熱施工をやってきた実績がございます。実は私の父である会長が1975年、日本で初めて、札幌においてグラスウールのブローイング事業を始めました。それも入れると、北海道で約50年以上、断熱施工をやっていることになります。また断熱施工とは別に、世界2位のドイツのグラスウールメーカーの日本代理店でもあります。
高断熱・高気密住宅の概要
省エネで快適な生活
明治初期、北海道の開拓といえば、屯田兵が送り込まれたことで始まりました。そのときに屯田兵が住んでいた家は隙間だらけで、非常に過酷な環境でした。今の北海道の省エネ住宅と言われるものがつくられるようになった経緯には、建築方法が改善されたこと、断熱工法がよくなったこと、そして窓の断熱性能が上がったという3つの要因があります。これにより建物の性能が上がり、非常に暖かい家を実現することができたのです。
断熱をすれば、暖かい。ならば夏は暑いのでは、と思われがちです。断熱とは、熱を伝えにくくします。冬は、室内の熱が外に逃げていかないし、逆に外からの熱は室内に入っていきません。ということは、夏は外の熱気が家の中に入ってこないため、非常に少ないエネルギーで部屋の中を快適な温度に設定できるのです。
私は昨年まで神奈川にいましたが、自宅は寒く、ストーブを入れているところしか暖まっていませんでした。一方、一般社団法人新木造住宅技術研究協議会が出した省エネ基準住宅の全室暖房時の暖房灯油消費量を見ますと、寒さを我慢していたときの半分以下のエネルギー量で、全室暖房しているのです。これが断熱材の大きな役目です。
全室暖房と聞くと、贅沢だと思われるかもしれません。エネルギーをたくさん使えば、確かに贅沢ですが、エネルギーを削減して、なおかつ全室暖房という快適な生活を手に入れることができますから、大変エコです。こういったことは、津軽海峡を越えた北海道だけの問題ではありません。本州でも、こういった家を建てれば、少ないエネルギーで快適な生活を得ることができます。………本文の続きを読む>>>