第145回タスクフォース21
2021.6月例会

講演録

ガス関連書面における電子化の概要と展望

講師:松山・野尻法律事務所  野尻 昌宏

動画ダイジェスト版

はじめに

  本日は、先ほどアドビ様からもお話があった書面の電子化について、お話させていただきます。ガス事業者関係の書面では、電子化はどういう形になっていくのか。また、どういう法的な問題点があるのかといったことを中心に、お話をさせていただきます。

 全体の構成としては、まず電子書面の総論的な話をしてから、ガス関連書面の各論的な話をいたします。各論では、14条書面、保安業務委託契約書、LPガス供給契約書、オーナー様との間の設備契約書について、検討していきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

契約書面の電子化

民法の原則

 皆様はよく契約書をご覧になる機会が多いと思います。そもそも契約書というものが必要なのでしょうか。日本の民法では、契約というものは双方の意思の合致があれば口頭でも成立するとなっています。「これを売ります」「それを買います」となれば、契約書がなくても契約が成立し、ものが売買されます。皆様がお店で買い物するとき、日常的に行っていることだと思います。ですから、契約を締結するのに、特段、書面をつくらなければいけないということにはなっていないわけですね。

 中には、法律で書面をつくらなければ契約自体が成立しないと定められているものもあります。たとえば、個人の根保証契約などについては、今は書面をつくらないと契約の効果が生じないことになっています。ガスを供給する際、お客様のお父様に個人的な保証人になってもらう場合には、口頭の合意だけでは、契約の効果は生じません。きちんと保証契約書をつくらなければならないわけです。

 ただ、こういったものは法律で決められたものに限られており、原則的には意思の合致があれば契約が成立します。

 ですから、そもそも問題となっている契約書は、契約の成立自体に必要なものではなく、「契約がこういう内容で成立しました。」ということを証明する証拠に過ぎません。

電子データでも契約は有効だが……

 電子データによる契約についても、まったく問題なく、意思の合致さえあれば、契約が成立することになります。契約をするとなったとき、たとえばWordファイル等で契約書をつくり、片方が名前を打ち込み、もう一方に送る。送られたほうも「この内容でいいです」となれば、自分の名前を打ち込み、プリントアウトしたり、パソコンの中に保存しておく。これでも契約は成立するわけです。

 それなのに、なぜ日本は契約書に署名し、押印しているのでしょうか。契約した当事者間で何も争いが起こらなければ、何も問題はありません。ところが、往々にして、紛争というものが生じるわけです。「約束が違うじゃないか」「そもそも、そんな契約はしていない」……こういったことで、約束がきちんと果たされない場面が出てくるわけです。そのとき、「こういう契約をしましたよ」と立証しなければなりません。とくに裁判になったときには、裁判所できちんと主張、証明しなければならなくなってきます。………本文の続きを読む>>>

Withコロナ時代における紙業務のデジタルトランスフォーメーション
~電子サインによる業務のデジタル化~

講師:アドビ株式会社 デジタルメディア 事業統括本部 ビジネスデベロップメントマネージャー  岩松 健史

動画ダイジェスト版

はじめに

 本日は、「Withコロナ時代における紙業務のデジタルトランスフォーメーション」というテーマでお話をさせていただきます。もともとアドビという会社はPDF、もっと言うとPostScript(ポストスクリプト)という技術をつくってきました。紙がどこにあろうと、どんな環境であろうと、同じものが見られるように、デジタルの世界に約30年取り組んできました。

 その会社が提供している電子サインのソリューションについてお話しします。まずは、紙を電子にするにはどうしたらいいのかというところから始めたいと思います。

電子契約とは

電子契約における政府の動向

 2020年の菅内閣発足後、当時の河野行政改革相が声高に「ハンコをなくす」と言っていました。コロナの影響があったから、こういった取り組みが始まったわけではありません。以前より、日本におけるデジタル化の遅れについて、政府は非常に懸念していたのです。

 代表例がマイナンバーカードです。2019年は12%の普及率といわれていました。スマホ決済もそうです。こういったものが、欧米だけではなく、アジア諸国と比べても日本は遅れていたのです。今後の日本の企業競争力の低下がいわれていました。そのため、デジタル庁の発足や、民間でさまざまな電子化が進むような法改正や、法解釈の明確化が進められています。

 昨年4月に内閣府規制改革推進室へ訪問し、アドビの電子化の取り組みについての情報提供を求められました。訪問すると、副大臣から、民間企業が電子契約を導入するにあたり、どのような阻害要因があるか、法整備を含めた行政における対応への要望等を聞かれ、行政からの電子契約等の見解等の情報収集をされておりました。

 たとえば、国交省などが国の認可を証明するために、以前は透かしの入った紙などに省庁の印鑑を押すことで、正式な認可証という証明を行っておりましたが、デジタル化の流れの中、ただPDFファイルに印鑑御イメージデータをただ貼り付けるだけでは、何の証明にもなりません。国からの認可書類にはならないのですね。その場合の電子証明をどうすべきなのかといったことを、ご相談いただいたりもしました。

電子サインの市場性

 矢野経済研究所様の「電子契約サービスの現状と展望2020」という電子サインの市場性に関するデータを見てみると、2017年から2024年までの7年間で約10にまでなると予測されています。とくに2020~2022年に関しては急激な伸びがあり、この3年間で行政機関の採用が大きく進むと言われています。

 また、弊社が独自でアジア諸国、ヨーロッパ、北米、日本において電子サインに関する意識調査を行った結果では、………本文の続きを読む>>>

最近見聞きしたこと~LPWAの現況~

講師:東洋計器株式会社   中田 英穂

動画ダイジェスト版

はじめに

 皆様、こんにちは。本日は、「最近見聞きしたこと~LPWAの現況~」について、発表させていただきます。

 私は関東地区のほかに中京地区の営業も担当していますが、最近、中京地区で切替が激化してまいりました。その理由として2つあります。1つ目は、電力・都市ガスの自由化。2つ目は、広域大手の市場参入です。

ガス事業者の動きと事例

中京地区で切替激化

 当初の中部電力と東邦ガスの戦いでは、LP市場にほとんど変化がありませんでした。そこに、新たにT&Tエナジーという合弁会社が中部に進出。さらに岐阜の大手事業者が相乗りし、都市ガスの営業が開始されました。それに合わせ、LPガスの競争も激化。関西からI社なども参入しました。これらによって、市場は一気にバランスを失ってきています。

 この戦いは、関東のように20年という長い歳月をかけたものではなく、短期間で激化したものです。集合住宅の切替阻止のため、たとえば6部屋のうち空室の2部屋を借り上げるといったようなことまで散見されるようになってきたのです。

 同時に、競争がなかったエリアに競争が発生したため、収益体質の脆弱な企業が脱落するのではないかという状況が見え始めました。競争がない中では、営業基盤が弱くても商売ができました。しかし、この競争激化によって、企業の脱落の可能性が顕在化してきたのです。

 そして、今までは接点強化という理由で集金を実施している事業者が多くいました。しかし、この集金はプロフィット業務ではないという結果が出てきています。それには、切り替えられるお客様に集金の顧客が多いという現状があります。そのため、集金をやめる事業者が増えてきました。

事業拡大の事例

 では、私が見聞きした内容をご報告していきます。まずはガス外事業を拡大し、営業利益の半分を目指すA社の事例です。具体的には、次のような内容です。

 ガス外収益が営業利益の半分を占めるまでに事業拡大をしたい。LPWA端末を推進しゴールド認定を目指したい。事務の合理化にRPAを導入した。

 昨年は初期費用ゼロで、太陽光発電を設置できるエネルギーサービスを20件以上獲得し、今期は50件を目指す。家電事業にも参入し、エディオンと提携する。太陽光発電はすでに100億円投資し、32MWで年間6億円の売上がある。アグリ事業や福祉事業にも参入した。ハウスクリーニング代行も開始。オートガススタンドは閉鎖し、水素ステーションの準備を始めている。自前の工事会社もガスだけではなく、………本文の続きを読む>>>