第146回タスクフォース21
2021.8月例会

講演録

最近のLPガスの動向について
サステナブルな社会と暮らしを支えるLPガス~青い炎のメッセージ~

講師:日本LPガス団体協議会 調査役 土橋 一夫

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はじめに

 日本LPガス協会の土橋です。日本LPガス協会の中では、日本LPガス団体協議会を担当し、12年間在籍いたしました。タスクフォース21の創設期には幹事を仰せつかり、皆様と一緒にさまざまな企画等をやらせていただいた記憶がございます。しかし、本日の皆様のご講演を聞いて、それもひと昔前になってしまったと時代の流れを感じております。

 今日の私のお話としては、日本LPガス協会のPR活動といった形でご紹介できればと思っています。

最近のLPガスの動向

日本LPガス協会の概要

 LPガスの動向については、皆様はすでに資源エネルギー庁の橋爪企画官のお話を聞いてご存知かもしれませんが、まずお話させていただきたいと思います。

 最初に、日本ガス協会の概要です。元売の数が極めて減少し、10社となりました。7月末に38年勤めた方が協会を退職されたのですが、38年前の協会会員数は50社だったということです。現在の10社のうち、5社が常任理事会社です。

 協会は1963年にLPガスの輸入・生産を行っている元売事業者の会合で生まれました。そのころから業界全体が萎んだわけではないですが、会員会社数は大幅に減りました。

 全国LPガス協会、日本エルピーガスプラント協会、日本エルピーガス供給機器工業会、日本ガス石油機器工業会という5つの団体を束ねているのが日本LPガス団体協議会になります。これら団体から発するLPガス業界の共通問題について、喧々諤々と議論をする協議会が、私の担当分野でした。

LPガスの最近の需給動向

 それでは、LPガスの最近の需給動向はどうなっているのでしょうか。業界紙などでもご覧になっているかもしれませんが、状況が大きく変わってきています。2016年度には1,415.1万tが日本の需要でした。しかし2020年度には、1,252.8万tになりました。これは需要量なので、生産量や販売量よりは少なめに出るのですが、全体需要量の対前年度比が▲10.1%です。

 一番のピークだった1996年には1,970万tの需要がありました。それが2020年度には1,252.8万tです。実に約700万t弱の減少量で、元売会社3社分くらいがなくなっている………本文の続きを読む>>>

脱炭素とLPガス業界

対談:土橋 一夫 氏(エネルギー事業コンサルタント) × 角田 憲司 氏(エネルギー事業コンサルタント)

動画ダイジェスト版

第6次エネルギー基本計画について

角田氏: 本日の土橋さんのお話からさらに踏み込んで、これまで培ってきたご経験や知見をもとに、思う存分お話していただきたいと思います。1つ目は、先月発表された第6次エネルギー基本計画です。どうしても電源の中の再エネ、原子力が重点のように見えますが、LPガスや天然ガスの役割についての解説をいただきたいと思います。
次に、カーボンニュートラルという長い道のりの中で、今、そしてこれからどうすべきかについておうかがいしたいと思います。
また、エネルギーは生活に密着したものですから、日本の社会変化の中で生き残っていかなければなりません。必ずしも脱炭素社会だけではなく、将来に向けてLPガス事業者がどう考えていけばいいのかというところについて、忌憚のないご意見をいただきたいと思います。
では、第6次エネルギー基本計画の中におけるLPガスの位置づけについて解説いただけますでしょうか。

土橋氏: エネルギー基本計画も、今回で第6次となりました。現段階ではまだ素案なのですが、LPガスについてはそれなりにきちんと記載されています。「2050年を見据えた2030年に向けた施策対応」の中に、現時点での技術を前提としたそれぞれのエネルギー源の位置づけという形で、化石エネルギーの(c)の中にLPガスがございます。これは第5次とあまり変わってはいないのですが、約4割の家庭に供給されているとあります。以前は5割だったのですが、いつの間にか10%減ってしまいました。
そこには「全国的な供給体制に加えて緊急時に供給を維持できる備蓄体制も維持している。また、最終需要者への供給体制および備蓄制度が整備され、可搬性、貯蔵の容易性に利点があり、石油と同様に“最後の砦”であるとあります。“最後の砦”という表現は残りました。そして「平時のみならず、緊急時のエネルギー供給に貢献できる重要なエネルギー源である。供給体制の確保に向け、備蓄の確実な実施や、中核充填所の強靭化、また必ず書かれてしまうのが「料金の透明化、業務合理化を通じたコスト抑制などに取り組む必要があるというところです。
さらに、「化石燃料の供給体制の今後の在り方」という項目に、石油・LPガス備蓄の確保の在り方という記載があります。「LPガス備蓄についても、大規模災害等に備え、現在の国家備蓄・民間備蓄を合わせた備蓄水準を維持する。危機発生時における機動力のさらなる向上に向け、LPガス業界やJOGMECと連携し、国家備蓄放出について、緊急時の想定に応じて、国家備蓄基地からタンカーや内航船等を利用した各地への輸送手段に係る詳細なシミュレーションを実施する。また、災害時の供給体制確保の観点から、自家発電設備等を備えた中核充填所の新設や設備強化を進めるとともに、避難所や医療・社会福祉施設等の重要施設における燃料備蓄などの需要サイドにおける備蓄強化を進める。
このように書かれていますから、これに基づいた予算や補助金がつくという前提です。この政策を実行するため予算がついてくるということです。
「さらに、緊急時の供給協力を円滑に行う『災害時石油ガス供給連携計画』の不断の見直しを行い、同計画に基づいた訓練を実施するということで、日ごろからの訓練もやるということがきちんと記述されています。
また、「LPガスの供給体制確保」という項目が………本文の続きを読む>>>

コロナ禍で急激に重要性を増してきたデジタル接客
世界15万社で導入される問い合わせ管理ツールfreshdeskについて

講師:OrangeOne株式会社 DX事業本部 輿水 雄介

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はじめに

 本日は、コロナ禍で急激に重要性を増してきたデジタル接客について、世界15万社が導入している問い合わせ管理ツール「freshdesk(フレッシュデスク)」についてご紹介いたします。

 2020年、緊急事態宣言発令後、国内ではDX化への取り組みが加速しています。帝国データバンクの調査を見ると、「新型コロナウイルスが業績にマイナスの影響を与えた」と答えた企業は、1.2万社中、83%にも及んでいます。そして、75%の企業がコロナ対策として新たなデジタル施策を始めたと回答しています。DX化は、企業にとってまさに避けられないテーマになってまいりました。グレートリセットやニューノーマルなど、人々の生活様式は大きく変化しました。

各業界の変化

ビール業界の場合

 まずは、サービスを提供する企業における変化を見ていきたいと思います。ビール業界は、在宅需要を取り込むべく、各社がしのぎを削っています。業界1位のアサヒビールは、新型コロナウイルスの影響で、得意の飲食店向けが低迷しています。そこで、ビールサーバーの貸し出しサービスを開始しました。2ℓ入りの樽をサーバー内に設置し、主力ブランドの「スーパードライ」を氷点下まで冷やす「エクストラコールド」機能を搭載しています。

 次に、業界2位のキリンビールです。家庭や飲食店の小型サーバーで使うペットボトル入りビールを増産しました。36億円を投じ、取手工場の製造ラインを新設し、生産能力を2.7倍にしたようです。新型コロナウイルスの影響で、自宅で楽しむホームサーバーが好調。客足が伸び悩む飲食店においては、小容量のサーバー需要が高まっているとのことです。

 そして、設立して間もないドリームビアです。全国各地のさまざまなブルワリーのビールを、家庭用本格生ビールサーバーで楽しめる日本初の会員制サービスを始めました。開始時は32銘柄を楽しめ、ビール購入月はサーバーレンタルが無料となり、1本/1.5ℓで3,200円から。こういったサービスを展開しています。

フィットネス業界の場合

 フィットネス業界も見てみましょう。2021年に入り急激に倒産、廃業件数が増加しています。2020年度は過去10年で最多となりました。コロナによる業績への打撃が深刻です。市場は前年比3割超の縮小見込みです。赤字も6割、大手各社も大幅な減収が目立ちます。

 ただし、伸びしろが大きいという見方もあります。キーワードは“脱店舗”です。オンラインやアウトドアに活路を求める動きが加速しているということです。

 2020年度に発生したフィットネス事業者の倒産や廃業は累計26件ありました。これが2019年度の23件を上回り、過去10年で最多でした。リーマンショック直後の2008年度の29件に迫る勢いであるというデータが出ています。フィットネス事業者の7割超が減収になり、2019年度の売上高である約7,100億円から、2020年度は5,300億円にまで下がりました。対象500社のうち、76%が前年度比で減収している………本文の続きを読む>>>

体感型歩行システムArbre
~歩行システム機器の市場とLPガスルートでのレンタル販売の検討~

講師:株式会社INOWA 取締役 藤縄 清志

動画ダイジェスト版

はじめに

 皆様、こんにちは。株式会社INOWAの藤縄と申します。これから、弊社の体感型歩行トレーニングシステム「Arbre(アルブル)」についてご説明させていただきます。

 最初に、簡単に弊社のご紹介をいたします。INOWAは早稲田大学岩田研究室と協力関係にあります。岩田研究室では、「人間を支援するロボット技術」をキーワードに、他分野にわたる研究開発を、病院や企業と連携しながら実施しております。

 今回紹介する「Arbre」は、一部を東京都次世代イノベーション創出事業2020の助成を受け、産学共同で、高齢者全体を対象とした体感型歩行トレーニングシステムとして開発しました。

 それでは、開発の背景について、早稲田大学の安田先生にご説明していただきます。

開発の背景

安田氏:高齢者の転倒問題と、機器の概要に関してご説明いたします。

 年齢を重ねることで歩行能力が低下すると、転びやすくなります。一度転倒してしまうと、そこから「転んでしまった」と自信をなくし、「また転ぶのではないか」と恐怖が生まれます。「もう転びたくない」という気持ちから活動量が低下し、運動機会が減ることによって、さらなる運動機能の低下につながります。そして、恐れている転倒を引き起こす可能性が高まるのです。

 このように、歩行能力の低下から引き起こされる“負のスパイラル”によって、要支援、介護状態になることも少なくありません。このような状況にならないために、歩行能力の低下を抑え、衰えてきた歩行を修正することは非常に重要なのです。

 カナダの研究者が、転倒のシーンを227件撮影しました。こちらの研究によると、高齢者の転倒のおよそ6割以上がバランスや歩行動作に関わっていることが明らかになっています。たとえば不適切な体重移動、つまずき、よろめきといった要因が転倒に絡んでいることがわかっています。体力トレーニングについて、歩行やバランスに対して重点的に行っていく必要性が見てとれます。

 こうした中、高齢者向けの支援システムの現状を見てみます。現在の市場では、パワーをアシストするタイプが主流です。しかし厚労省のデータによると、約8割の高齢者の方が、体に何らかの不定愁訴を持ちつつも、実際に屋外に移動しています。人口1,000人に対して、209人が自立できていない方。残りの800人ほどの方は自立して生活しているということになります。

 トレーニングの方向性としては、力をアシストするというよりも、各人が積極的に、自己管理のもとにトレーニングをするシステムが要求されています。

 次に、高齢者の歩行特性を見ていきます。典型的な歩き方として、接地時のつま先挙上不足、推進力をつける蹴り出しの不足、それによる歩幅の減少があります。歩行中の床反力を見てみると、健常者であれば、かかとがついたときと蹴り出しの際に、グラフに2つの山ができます。しかし高齢者の場合は全面接地傾向があり、2つの山が消失します。つまり、適切な接地と蹴り出しが十分にできていないということになります。

 このような中、私たちは自立した高齢者用の体感型歩行トレーニングシステムの開発を始めました。このトレーニングシステムでは、歩行時の足圧をベルトの振動として体感することで、適切なかかと接地と蹴り出しを実現することを………本文の続きを読む>>>