第152回タスクフォース21
2022.8月例会

講演録

無償配管・無償貸与問題について~エネ庁懇談会を踏まえて

講師:松山・野尻法律事務所 弁護士 松山 正一

動画ダイジェスト版

はじめに

 5月31日に開催された第1回目のLPガス無償配管・無償貸与懇談会に参加する機会を得ましたので、懇談の内容を紹介させていただきたいと思います。

 この懇談会は、無償配管・無償貸与の慣行によりガス料金が不透明、あるいは高額になっているというところから開催されました。消費者とのガス契約の不透明さ、料金の高騰化などが問題になっています。懇談は「無償配管とは何か」ということから始まったのですが、これは業界に定着している一つの慣行といえます。ガス事業者はガスの顧客を得る代わりに、ガスの設備を無償で提供する。そして、投下した費用をガス料金に乗せて回収をする。こうした方法がほぼ常態化しています。

 ところが、この仕組みが消費者には情報として十分には伝わっておらず、最近になって消費者から、都市ガス料金、あるいは他事業者と比較して、これは高いじゃないか、あるいは料金の中身がよくわらないといったクレームが消費者団体に多く寄せられるようになりました。そこで、監督官庁もこれらの点について調査を行い、そのうえで今後の方向性を考える必要があるだろうということで開催されたわけです。

 それともう一つは、最近の裁判の傾向として、消費者とのガス設備契約の料金体系が不明確である、あるいは解約した場合の精算金の条項が不当に高額であるとして、無効とする判決が随分出ております。

 これはやはり、消費者契約法の消費者保護の見地に立ったものとして、行政も無視できないような状態になっている。こうした点からも無償配管・無償貸与の慣行にメスを入れる必要があるというのも、この懇談会が開催された理由の一つです。

「ガス料金は不明確である」が共通認識

消費者契約法で争われる場面が増えている

 当日の懇談会は、こうした裁判の傾向、そして消費者からのクレームを冒頭で司会者がまとめて紹介し、判例を分析した弁護士からその傾向について報告がありました。
 次いで、私が申し上げた内容の指摘があり、それについてどう考えるのかが議論の中心となりました。

 私も含めて、参加している皆さんの共通の認識は、やはりガス料金が不明確であること。それでは、それをどうしていくかについては、議論百出となり、当日はそれぞれの考えを述べたということになると思います。

 まず、判例の分析をした弁護士からは次のような指摘がありました。消費者との間で締結しているガス契約の効力が、現在は消費者契約法9条1項の効力として争われる場面が非常に多くなっている。これはどういう条項かというと、消費者と契約した事業者は解約の際の損害金として、ガス事業者の平均的損害を超える以上のものは請求することができないという内容になっています。ガス設備契約の解約時の精算金条項による損害賠償の請求が、この平均的損害に収まるものなのかが訴訟で争われ、その9割で事業者の方が負けている。勝訴率は1割程度しかないというのが報告の内容でした。

 その他に、このガス契約自体にそもそも効力があるのかについても、かつては裁判で争われたことがあります。具体的には、ガス設備が建物に付合して建物の一部になっているとすると、ガス設備は消費者の所有物なので、設備契約自体が無効であるという主張がなされました。

 もう一つは、消費者が支払った建物代金のなかに、ガス設備代金も含まれているのでガス設備は所有者のものだから設備貸与契約は無効であるという考え方です。

 しかし、これらの論点については、私個人としての見方ですが、すでに現在ではあまり問題になっておらず、現在の大きな争点は先ほど述べた消費者契約法9条1項の平均的な損害と言えるかどうかに軸足が移っていると考えられます。

争っている事業者は業界大手1社のみ

 ところで、こうした消費者契約法の効力を争っている事業者は、実は業界大手の1社だけなのですね。その1社が戸建住宅の消費者との契約の効力を争って、勝訴判決を積み重ねている。これが実態なのです。  そして、この契約の効力を、この事業者はなぜか集合住宅では使ってきていません。もっぱら戸建てで争っています。消費者契約法は消費者保護の観点が強い。それに基づいて、………本文の続きを読む>>>

防災減災対応システムBOGETS

講師:I・T・O株式会社 営業開発部 防災事業担当部長 野口 恭夫

動画ダイジェスト版

はじめに

 本日は弊社の「防災減災対応システムBOGETS(ボーゲッツ)」についてご紹介させていただきたいと思います。

 今日の流れを簡単にご説明します。まずI・T・Oが提案する防災、そしてBOGETSのシステムのキーになる設備であるPA-13A、移動式ガス発生設備の歴史についてご説明します。そしてガス事業法上において都市ガス事業者しか触ることができなかったPA-13Aの一般向けの装置の誕生、そこから生まれたシステム「BOGETS」のご説明をさせていただきます。

I・T・Oが提案する防災

自然災害等による電気・ガスの被害状況

 最近の自然災害等による電気・ガスの被害状況をまとめてみました。皆様もご記憶されていると思いますが、3~4年前にかなり大きな停電被害がありました。2018年あたりから停電被害が多かったのですが、中部電力管内で8万戸、1週間の停電。都市ガスも約290戸、1日供給停止しています。

 その後の台風21号では、関西空港に水が入って停電し、鉄橋にタンカーが衝突し、電車も止まってしまいました。そのときは関西圏を中止に約240万戸もの停電が起きています。復旧するまでに5日ほどかかりました。このときは、都市ガスは停止していません。

 その直後の台風24号では、中部地方を中心に約180万戸が停電しています。直前の関西空港の映像が衝撃的だったせいか、あまりニュースとして報道されていませんでした。復旧に3日間かかっています。都市ガスの供給停止はありませんでした。

 翌年2019年の台風15号では、東京電力管内で約93万戸の停電がありました。千葉県房総半島を縦断し、高圧の鉄塔が壊れたとか、ゴルフ場のネットが倒れたとか、いろいろなことがあり、復旧に12日間もかかっています。このときも、都市ガスの供給停止はありませんでした。

 こういった自然災害により、停電被害の重大性が認識されました。この主な原因として言われているのが、最近の台風が非常に巨大で、進みが遅いということ。とくに日本列島に上陸する台風は低速化しています。進みが遅いために、甚大な被害をもたらしているのです。甚大な被害の結果、停電の件数も多いのですが、復旧についても長期化する傾向にあります。

 一方、都市ガスは導管で供給されているため、風水害についてはそこまで弱くありません。ただし、地震では震度6クラスが起こると、地区ガバナという整圧器が各地区にありますが、それによって都市ガス事業者が供給を止めることがあります。

 皆様もよくご覧になるグラフかと思いますが、東日本大震災における電気、都市ガス、LPガスの復旧までにかかった日数です。一番早いのは個別供給のLPガスで、4月21日。その次が5月3日の都市ガス。そして意外かもしれませんが電気が一番遅く、6月18日と約3カ月後に全面復旧しています。

 しかも電気の全面復旧というのは、電信柱に乗っているトランスまでが復旧したことを指します。これは電気事業法にあることなのですが、電柱からお客様の家の中までについては保安義務がないのです。そのため、台風のときに少しマスコミに取り上げられたのですが、“隠れ停電”という言葉があります。たとえば東京電力や関西電力が「電気を復旧しましたよ」と言っても、実際に住戸では電気がつかないといったことです。これは、電信柱から各住宅に供給されている線が切れていたり、ショートしたりすると、電気は使えません。

 ガスの場合は、お客様の家の中まできちんと保安チェックをしますから使えるようになりますが、電気は「3カ月で全面復旧」と出ていても、実際にお客様が使えるようになるまでどれくらいかかったのかは、保安義務がないのでデータもありません。

避難所に求められるもの

 自然災害があると、各自治体は避難所を開設します。国際赤十字が提唱する避難所の最低基準というものがあります。スフィア基準ともいうのですが、ご紹介します。  1つ目は、世帯ごとに十分に覆いのある生活空間を確保する。最近はとくにコロナ禍ですから、より一層生活空間について強調されています。段ボールで仕切りをつくるなど、さまざまな方法があると思います。2つ目は、………本文の続きを読む>>>

最近見聞きしたこと2022

講師:東洋計器株式会社 常務取締役 中田 英穂

動画ダイジェスト版

はじめに

 本日は、私が営業エリアとしている関東から中部地区にかけての現況について、皆様にご報告したいと思います。

 今日お話したいことは5つあります。関東だけではない切り替えの現実、都市ガスや電力の自由化が地域のバランスを変化させていること、価格高騰の現状と集合住宅の状況、急速に進展しているM&A、そして都市ガスではかなり先行して動いている環境ビジネスについてです。

集合住宅関連

 岐阜県の事業者A社の話なのですが、「Tコーポレーションの集合住宅で、最近新築設置済の給湯器を買えと指示された」という話がありました。給湯器を買ったからといって、その所有権がLPガス事業者に移るわけではなく、ただ支払いをしろと言われたそうです。これについて、同じ岐阜県のB社に話してみたところ、「実はSハウスで、集合住宅の配管、給湯器一式を購入するよう指示された」というのです。「関連会社の売上利益を確保するための施策のようだ。給湯器も高い価格で請求された」とおっしゃっていました。

 いままで、LPガス事業者が無償で設置していたものに対して、別途料金を請求されている。もちろん、所有権が移ったわけではない。いままでの3倍くらいの金額の給湯器の請求をされたということのようです。

 そして同じく岐阜県のC社では、「ワンルームマンションで1件50万円ほどの投資を要求された。地場最大手がこの案件を受けているので、数回に1回は要求を飲まないと、案件がこなくなってしまう」ということです。

 また愛知県、岐阜県で商売をされているある大手事業者は、「自社供給の古いアパートを関東のオーナーが購入し、突然電話で、機器の新品への取り替えをしないとガス供給をほかの事業者に移行するとの話がきて、担当から稟議が上がってくる案件が多い」ということです。同じ話を四国の事業者からも聞いたことがあります。「顔の見える地元のオーナーではないので、こういう話はすべてお断りしている」とおっしゃっていました。私はこれを“アパート転がし”と呼んでいるのですが、このオーナーのバックには中国の資金が動いているのではないかとおっしゃっている方もいました。

価格関連

 中部地区のD社が、6月の案内で、「8月から1㎥100円の値上げを予定している」という話を聞きました。

 同じく中部地区E社は、「去年の10月から7月までに1㎥160円の値上げを実施した」とのことです。「設備貸与していると、集合の価格が1,000円/㎥を超えたという事業者もいる」そうです。したがって、「顧客が退去しはじめれば、この悪い慣習はなくなるのではないか」と自虐的に話されているところもありました。

 そして、同じ地区のF社です。「販売店の値上げは市況に追いついていない。現場担当の怠慢で、業務用の値上げができておらず、卸価格で調整せよと卸店にプレッシャーをかける販売店もある」とのことです。販売店の現場の営業が、料金の説明をしっかりとできていないのですね。

 市況が上がってきているのにもかかわらず、値上げの交渉を一切していなかったことがわかり、担当者は困って卸屋に話すのですが、卸屋も背に腹は代えられず、社長に直接「いい加減にしてくれ」と言いに行ったという話です。

 次に中部地区のG社です。コンロ帯、つまり5㎥程度までが700円/㎥、給湯帯については500円/㎥程度になっているそうです。

 中部地区の地場大手事業者は、アパート入居者向けにパンフレットをつくり、QRコードを読み取ってもらい、………本文の続きを読む>>>