第162回タスクフォース21
2024.4月例会

講演録

第162回例会ダイジェスト

離職防止、ハラスメント防止

講師:株式会社学宣 キャリアコンサルタント 中田 暁子

動画ダイジェスト版

はじめに

 本日は、「離職防止、ハラスメント防止」をテーマにお話をしますが、いま、これらについて経営者の方から相談をいただくことが増えています。なぜなら、近年、ハラスメントに関する法律が義務化され、また離職が増えて人材が足りないこともあり、どうしたらいいのかというご相談を受けることが増えているのです。大事なポイントに絞ってお伝えしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まずは自己紹介をさせていただきます。私はこれまで企業で人事として採用・研修・教育といった分野を中心に、また転職エージェントでも転職支援の相談を多く受けてきました。企業の人事研修や、厚生労働省の組織開発の取り組みにも参画し、幅広く取り組んでいます。

 本日は現場から聞こえてくる声もふくめ、皆様に離職防止、ハラスメント防止の取り組みについて解説していきます。

 今日の概要は4点ございます。1つ目は「離職およびハラスメントの問題と経営への影響」、2つ目は「ハラスメントに関する重要ポイントの確認」、3つ目は「ハラスメント防止への取り組み」、4つ目は「離職およびハラスメントを防ぐための職場づくり」です。

 皆様も、物価高や業界内競争、人手不足といったさまざまな問題によって、中小企業の厳しい経営環境を日々感じていらっしゃると思います。この離職防止、ハラスメント防止がテーマですが、人材不足の問題についても一緒に確認できたらと思います。

離職およびハラスメントの問題と経営への影響

中小企業の厳しい経営環境

 2060年の生産年齢人口は6割まで減るといわれています。現在も人材不足に困っている経営者の方もいらっしゃると思いますが、この先、さらに6割にまで減ってしまう。そうなると、会社を存続させていくためには、人材不足をどうしたらいいのかが重要な問題になります。

 従業員の方々もお仕事をがんばっていらっしゃると思いますが、残念ながら離職をしてしまう方もいます。その離職理由にはどんなことがあるのか、経営者の方はご存知でしょうか?

 ここで、離職理由について調査した結果のデータをご紹介します。私がまとめたものですが、元になるデータは厚生労働省「令和2年度雇用動向調査」になります。

 男性の1位が「定年・契約期間の満了」、2位が「給料(収入が少ない)」、3位が「職場の人間関係が好ましくなかった」、4位が「労働時間(休日等の労働条件が悪い)」、5位が「会社の将来が不安だった」とあります。

 次に女性を見てみると、1位が「職場の人間関係が好ましくなかった」で13.3%います。それぞれのなかに、人間関係についてのことが上位に入っています。

 続いてパーソル総合研究所のデータですが、ハラスメントによる離職が年間87万人おり、そのうち57万人が会社に伝えなかったという結果になっています。先ほどの離職理由の調査結果では「ハラスメント」という項目はありませんでしたが、「職場の人間関係」がありました。ここがハラスメントによる離職に大いに関係していると考えてもいいのではないかと思います。

ハラスメントと離職が経営に及ぼす影響

 先日も離職率が高い企業の相談に応じて従業員の方の面談を行いました。すると、なかには「先輩が辞めてしまってショックだった」と、影響を受けてしまい、………本文の続きを読む>>>

中途採用時の注意点

講師:社会保険労務士 朝比奈 広志

動画ダイジェスト版

はじめに

 本日は、中途採用時の注意点について、2020年の中途採用ルール変更の内容を踏まえてお話します。そして中途採用や採用が当たり前の時代における採用や離職のリスク回避についてご説明させていただきます。

 2022年に職業安定法が改正され、労働者の募集を行う際のルールが変わりました。実は今年4月からさらに改正があり、募集時などに明示すべき労働条件が変更になります。

 まず2022年10月に施行された変更については、大きく2点のテーマがあります。求人等に関する情報の的確な表示が義務付けられたこと、そして個人情報の取り扱いに関するルールが新しくなることです。厚生労働省が「求人等に関する情報の的確な表示」というものに目を向けたということは、的確な表示がされていなかった実態があったのだろうと思います。さらに個人情報については、マイナンバー導入などがあり、その重要性について大きな関心が向けられています。募集に際しても、個人情報を丁寧に扱わなければならないということが法律に盛り込まれるようになりました。

 今年の4月からは、実際に採用が決まり、労働条件を通知するというところがメインではありますが、募集や職業紹介事業者への求人の申し込みの際に明示しなければならない労働条件が追加されます。

 追加内容は3点あります。まず従事すべき業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、そして有期労働契約を更新する場合の基準です。

2022年改正職業安定法

求人等に関する情報の的確な表示の義務付け

 まずは2022年10月に施行された改正職業安定法における労働者の募集ルールの変更についてご説明します。職業安定法が改正されたことでルールが変わったわけですが、まず求人等に関する情報の的確な表示が義務付けられました。もちろんいままでも求人をする際には正確な情報を表示しなければなりませんでしたが、やはり応募される方が勘違いするようなミスマッチを引き起こしてしまう内容が見受けられたということかと思います。

 求人企業に対して、①求人情報や②自社に関する情報の的確な表示が義務付けられます。そのなかで、虚偽の表示をしてはいけないことは当たり前ですが、誤解を生じさせる表示はしてはならないということが盛り込まれました。さらに求人情報を正確に、また最新の内容に保たねばなりません。

 これらを細かく分けると、次の5つになります。1つ目は対象となる手段、2つ目は正確かつ最新の内容に保つ義務、3つ目は自社に関する情報、4つ目は虚偽表示の禁止、5つ目は求人等に関する情報の的確な表示の義務付けです。

 まず1つ目の対象となる手段です。募集にあたっては、さまざまな広告・連絡手段が、的確な表示の義務の対象になります。どのような広告・連絡手段があるかというと、厚生労働省がいうには、まず新聞、雑誌、その他の刊行物に掲載する広告、文書の提出・頒布、書面、ファックス。そしてウェブサイト、電子メール、メッセージアプリ、テレビやラジオ、オンデマンド放送等です。これらを例示していますが、厚生労働省がいいたいのは、どんな手段であっても求人をする際には適確な表示が義務付けられるということだと思います。  そして正確かつ最新の内容に保つ義務があります。企業のホームページを見てみると、よく求人情報が載っています。しかし実際連絡してみると、「いまは募集していません」といわれることが多いそうです。国も、そのことを意識しているのだと思います。

 募集を終了したり、内容を変更したら、速やかに求人情報の提供を終了したり、内容を変更しなければなりません。たとえば自社の採用ウェブサイト等を速やかに更新します。当然のことではありますが、自社のホームページに求人を載せていることすら忘れてしまっている企業が結構あります。何年も出しっぱなしになっている状態で、そこを見た人が「募集しているんだ」と勘違いするようなことを避けてほしいということです。

 そして最近は求人メディアを利用している企業も多くあります。………本文の続きを読む>>>

自由化の中で 特別版:商慣行是正に向けて

講師:イーレックス株式会社 境野 春彦

動画ダイジェスト版

はじめに

 皆様、こんにちは。今回、商慣行是正に向けたお話をさせていただきたいと思います。その前に、まずもってなぜ新電力会社の私が商慣行是正についてお話をするのかというきっかけをお話させていただきます。

 昨年の夏ごろ、西日本のガス会社から、販売店会で講演をしてほしいという依頼を受けました。「プロパン産業新聞」では、橘川先生と隔週でコラムを連載していますが、そこで私が商慣行是正について触れたのです。それを見て、ぜひお話をしてほしいという依頼があったのですが、正直「うーん」という感じでした。なぜなら、あまりにも問題が重すぎたからです。

 私自身、皆様のように直接事業に携わった経験はありません。業界外の人間としてはLPガス会社の方たちとは関わりがありますし、知識もそれなりにある自負はございますが、ボンベを転がしたり、営業訪問をしたり、保安点検をしたり、委任状を書いたりするといった実務経験はありません。そういう人間が、評論家よろしく、この一大問題を語ってしまっていいのかという気持ちがありました。

そのため、お断りしようとしていた前日の夜、関東のあるガス会社の社長の方たちと飲んでいる際にこの話題が出ました。「問題が重いから、お断りしようと思っているんです」といった瞬間、皆様方がグラスをテーブルにドンッと置いて「必ずやりなさい」というのです。なぜなら、「境野さんのプレゼンで商慣行是正について話したら、きっとわかりやすく面白くしてくれる。それは我々のためのみならず、業界のためになるのだから、引き受けなさい」。そこまでいわれたので、引き下がるわけにもいかず、受けることにしたのです。

 翌日から私なりのワークを始めました。国会図書館に行って、是正関係の記事のデータベースを10年間まで遡ってアウトプットし、WG資料を十数回読み直し、自分のなかである程度の仮説・ストーリーを組み立てたうえで、全国の知り合いのガス事業者の方々に意見交換を求めました。

 ようやく昨年11月末に8割方ストーリーができあがりましたので、まずテーブルをグラスでドンッとした方々に講演してみたところ、「年明けでいいから、今度は全社員に向けてやってくれないか」といわれました。これによって私のなかでかなり手ごたえを感じたうえで、今日はこの場に立たせていただいています。ぜひ、映画を観るような形でご鑑賞いただければと思います。

世界のエネルギー情勢

10年で様変わりした構造

 無資源国、日本。ご存知のとおり、我が国は四方を海に囲まれ、資源を有していない島国です。エネルギー自給率はわずか11.3%。これは主要先進国38カ国中37位です。

 石油、石炭、LNGといった一次エネルギーをすべて海外からの輸入に頼っているわけですが、どれも地域的な偏りが大きくなっています。石油はいまだに中東からの輸入が8割を超え、石炭はオーストラリア、インドネシアから8割、LNGはオーストラリア、マレーシアから5割。これらのエリアに有事があると、エネルギーの供給が途絶えてしまうという危機的状況に常にさらされているのが我が国の実態です。

 この石油、石炭、LNGという一次エネルギーが我々の身近な二次エネルギーである電気、ガソリン、そして皆様が取り扱っているガスに姿を変えていきます。石油系のガスがLPG、LNG系のガスが都市ガスになるわけですが、LPGに関して、国内の石油元売会社でつくられるものは2割しかなく、残りの8割はすべて海外からの輸入に依存しています。

 10年前、中東からのLPガスの輸入比率は87.2%でした。しかしこの10年で大きな変化が起きます。エネルギー分野における21世紀最大の変革、シェールガス革命です。これは掘削技術の革新なのですね。より深く、そして水平に掘れるようになったことで、岩盤との設置面積が増えました。

 そして水圧破砕という技術によって流動性が増し、より多くのエネルギーを取り込めるようになったのです。このシェールガス革命がアメリカ大陸で起きました。

 現在、世界最大の産油国はサウジアラビアを抜いてアメリカが断トツの1位です。………本文の続きを読む>>>