第169回タスクフォース21
2025.特別例会(7月例会)
講演録
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講演1:「業界新秩序の構築へ タスクフォース21の取り組みと今後の展望」
講師:ノラ・コミュニケーションズ社長 本会事務局長 中川 順一 氏 -
講演2:「自由化を超えて 2025年最新作 行動こそ今を変える原動力」
講師:コネクトエネルギーCEO 本会顧問 境野 春彦 氏 -
講演3:「改正省令対応での法解釈 消費者契約法等での懸念」
講師:松山・野尻法律事務所 弁護士 松山 正一 氏 -
講演4:「同業者を見るより顧客を見よう 全国事業者の改正省令対応事情」
講師:東洋計器株式会社 常務取締役 本会幹事 中田 英穂 氏 -
講演5:「脱・役所依存、自主対応で臨むべき 改正省令対応への考え方と今後のあり方」
講師:エネルギー事業コンサルタント 本会顧問 角田 憲司 氏
業界新秩序の構築へ タスクフォース21の取り組みと今後の展望
講師:ノラ・コミュニケーションズ社長 本会事務局長 中川 順一 氏
動画ダイジェスト版
タスクフォース21の原点と今回の改正省令
タスクフォース21のスタートは1997年の液石法大改正への対応でした。当時の経験を振り返ってみますと、新しい交付書面を配布せよと言われたのですが、具体的な内容は行政から出てこなかったのです。今回の省令改正と全く同じ状況です。だから自分たちでまず作って、行政と業界に問いかけました。今回もそういう活動が大切だと思います。
これまでの28年間の取り組みを振り返って、重要な気づきがありました。それは結局、法律とか行政指導ではお客さんを守れないということです。残念ながらそこに気がついたのです。それからもう一つ、お客さんを取られた、取られたと言っても仕方ないな、お客さんを取られたのではなくて逃げられたのだということにだんだん気がついてきました。28年間を振り返ってみると、やはり守ることに時間を割きすぎたなと思います。もうちょっと早い時期に攻めるということを、検討を早めにやってくるべきだったのではないかと反省しています。
改正省令への対応と懸念
今回の改正省令への対応では、過大な営業行為や設備料金の具体的基準が不明確なことに懸念があります。規制が拡大解釈されることで新事業が阻害される可能性を危惧します。LPガス事業者が現状の顧客基盤を生かして試みる新事業が妨げられてはならないと考えます。
そして、行政が何かしてくれるのを待っていたり、行政の判断が出るのを待つのではなく、業界の自立的な対応が重要だと強調したいと思います。
過大な営業行為の具体的事例が開示されず、設備料金の正解も示されない状況において、料金の中身について受益者負担を徹底せよという要求があります。総括原価的な発想は、どの業界にも存在する当然のものです。個々の事業者の料金政策に過度な規制が入るとすれば疑問です。料金メニューなども含め、料金にはもう少し柔軟に考えることがあってもよいのではないでしょうか。料金政策に対して行政等の過度な介入があって、事業者の工夫や企業努力を否定されるようなことがあっては困ります。
新サービス・新事業を視野に入れた料金
さらに危惧するのは、料金透明化が単純な価格競争となることや、省令の拡大解釈がガス料金に含まれる付帯サービスや付加価値部分の否定になることにつながる………本文の続きを読む>>>
自由化を超えて 2025年最新作 行動こそ今を変える原動力
講師:コネクトエネルギーCEO 本会顧問 境野 春彦 氏
動画ダイジェスト版
問題解決には自らの働きかけが重要
先週、沖縄県の高圧ガス保安協会で商慣行是正の講演を行ってまいりました。出席が販売店さん100社以上、出席人数165名という非常に盛況な会でした。速報適合宣言の提出比率が69%ということで全国で3位の高さです。適合宣言を出すこと自体に私は意味がないと思っていますが、アクションプランを伴った実効性のある取り組みが進んでいる地域ほど改正省令への対応が行き届いているということを実感いたします。
さて、本日は8年にわたる改革の経緯と今後の展望について、「序破急三部作」として整理してお話しさせていただきたいと思います。
序:消費者代表からの問題提起
2017年6月のガイドライン発出から始まった改革ですが、転機となったのは2021年12月の朝日新聞一面記事「LPガス設備費上乗せ」でした。この報道から事態が急激に動き始めます。
2023年3月、8年ぶりに再開された液化石油ガス流通ワーキンググループで口火を切ったのが消費者代表の郷野委員でした。
「賃貸集合住宅のLPガス料金においては、無償貸与という商慣行によって消費者に不利益が生じていることは明らかです。無償貸与という形で負担をしたことのある事業者は全体の6割以上、小さな事業者以外はほぼ行っていると考えてよいかと思います。設備の費用はLPガス料金の中に含まれているわけですが、それが消費者にも分かるように提示されているのかというと、三部料金制として明示している事業者はほとんどない。上乗せされたLPガス料金を知らずに払わざるを得ないのは消費者被害であると考えております」
この発言が議論の出発点となりました。そして橘川先生が決定的な発言をされました。
「先ほどニチガスの吉田委員が、賃貸への過剰投資はしないと言いながら、三部料金は問題があると言われました。法律で決めることもおかしいというようなことも言われた。私は両方間違っていると思います。三部料金になっていないからこそ弊害が起き、賃貸のところに消費者の不利益が生じている。郷野委員は消費者被害という言葉まで使われました。そもそも今まで指針と行政指導だけではなかなか進んでこなかったところに問題があるわけで、それを今さら吉田委員が言うように、もう一度行政指導と指針の徹底でいきますというのは、全然消費者に対することになっていない」
この発言で議論が止まりました。事実上この瞬間、三部料金制の義務化が決定したのです。
三部料金制の導入目的は無償貸与の炙り出し
商慣行是正最大の関門がまさに三部料金制です。目的はたった一つ、無償貸与の炙り出し………本文の続きを読む>>>
改正省令対応での法解釈 消費者契約法等での懸念
講師:松山・野尻法律事務所 弁護士 松山 正一 氏
動画ダイジェスト版
改正省令の趣旨と解釈論上の疑問
私は法令の解釈という点から実態を踏まえてお話をしたいと思います。
本日の資料は3つあります。1つ目がパワーポイントの画面用資料、2つ目が6月4日の経済産業局での目黒室長補佐の説明会での質疑応答を、タスクフォース21事務局の記録をもとにまとめたもの(当局の見解)、そして3つ目が省令の解釈論(私の個人的見解)です。
私が一番強調したいことは、今回の省令改正は消費者被害を防ぐために従来の無償貸与の慣行をやめましょうと言われており、それはその通りでよろしいと思うということです。無償貸与の慣行は良くないことだと思います。消費者に設備費用を負担させているということで、それは是正しようというのが今回の省令改正の目的だということはよくわかります。
しかし、省令の解釈論として無償貸与が正常な商慣習を超えた利益供与に当たるというふうに言えるのかどうかというところに疑問があります。
改正省令15条の3を見ていただくと「正常な商慣習を超えた利益供与をしないこと」と書いてありますが、無償貸与自体は別に世の中どこにでもあることです。物をただで貸す。だから、それを正常な商慣習を超えた利益供与と言うことは難しいと思います。
これまでの議論というのは、無償貸与は消費者に対して設備料金を負担させている、だからいけないんだということで、だから無償貸与はだめなんだというふうに言っているんですが、ただ、ガス会社が消費者にガス料金で負担させているということは、ガス事業者と消費者とのガス契約の問題なんですね。
ここで問題となっているのは、ガス会社とオーナーとの設備契約です。ガス会社とオーナーの設備契約の解釈の中に、ガス会社と消費者の契約の内容を取り込むことは無理だと思います。したがって、無償貸与自体は過大な利益供与には当たらないというのが私の理解です。
無償貸与の法的性質について
無償貸与は、過大な利益供与に当たるということが当然のようになっていますが、ガス会社とオーナーとの設備の無償貸与契約自体は、単なる設備の使用貸借(民法593条)に過ぎません。
問題となっているのはガス会社とオーナーとの設備契約です。ガス会社とオーナーの設備契約の解釈の中に、ガス会社と消費者の契約の内容を取り込むことは無理だと思います。無償貸与契約の中には、消費者に設備費用を負担させるという契約条項はありません。消費者の設備費用の負担は、消費者とガス会社のガス契約における取り決めですから、これをオーナーとの設備契約の評価に持ち込むことはできないと考えます。したがって、無償貸与自体は過大な利益供与には当たらないというのが私の理解です。
さらに進んで考えますと、そもそも設備契約は無償貸与契約とはいえないのではないか………本文の続きを読む>>>
同業者を見るより顧客を見よう 全国事業者の改正省令対応事情
講師:東洋計器株式会社 常務取締役 本会幹事 中田 英穂 氏
動画ダイジェスト版
地方では地場大手の動向に追随
まず、全国の事業者における設備料金対応についてですが、大きく2つのパターンに分かれていることが明らかになっています。
最も多いのは「基本料金分割型」です。例えば基本料金2,500円を2,300円と設備料金200円に分割するパターンですね。ただ、設備料金について明確な根拠をお聞きしてみると、ほとんどありません。地域における大手の動向を見て決定しているパターンが非常に多いのです。
一方で、設備料金を0円とする事業者も相当数存在します。この背景には「アパートで複数料金の存在を避けたい」という強い意向があります。しかし、これもほとんどが地場大手の動向に右に並えという状況です。例えば名古屋地区では、地場大手が設備料金0円で出しているものですから、「うちも0円にしている」という事業者が多いのが実情です。
結果として、明確な算定根拠を持つ事業者はほとんどおらず、地場大手の動向に追随するケースが圧倒的に目立っているのが現状です。
ビッグデータ分析で見えた衝撃的な実態
ここで、弊社が実施した約40万件のガス使用量ビッグデータ分析結果をご報告いたします。400万件のユーザーから統計的手法で抽出した約40万件を分析したところ、驚くべき実態が明らかになりました。
家庭用39万8,785件のうち、なんと年間使用量が0立方メートルの世帯が3万3,314件、実に8.4%も存在していたのです。メーターもLPWAも設置されているにも関わらず、全くガスを使用していない世帯がこれほど多いとは、正直私も驚きました。
実際にガスを使用している世帯の受信データを分析してみました結果、家庭用の平均が月6.93立方メートル、業務用が100.7立方メートルということが分かりました。
具体的な内訳を見ますと、コンロのみの世帯が全体の48.5%を占めており、月平均わずか2.73立方メートルしか使っていません。3立方メートルを切っているのです。
給湯世帯は39.6%、約4割あります。おそらくアパートの給湯器無償サービスが効いているのではないかと思いますが、月平均8.95立方メートルです。
そして暖房までガスを使用する世帯は11.9%、約12%で月平均17立方メートルです。これが現実なのです。
さらに驚くべきことに、5立方メートル未満の世帯がなんと50.8%もあります。一方で、20立方メートル以上の世帯はわずか5%しかありません。
売上への貢献度を分析するため、基本料金2,000円と従量料金750円を当てはめて………本文の続きを読む>>>
脱・役所依存、自主対応で臨むべき 改正省令対応への考え方と今後のあり方
講師:エネルギー事業コンサルタント 本会顧問 角田 憲司 氏
動画ダイジェスト版
規制当局の限界が露呈した
最初に、私が今日お話ししたいことを3つのポイントに整理いたします。
第一のポイントは、事業者の対応状況が問われる段階になったということ。施行段階に入りまして、これからはひとえに皆さんの対応状況が問われるということです。その象徴が6月にあったワーキングで、何でもかんでも皆さんの説明責任ですよというのが、ここにきてかなりピークを迎えています。
第二のポイントは施行状況調査の結果について。6月23日のワーキングで公表された施行状況調査の結果についてです。規制当局が出したデータを見ると、かなりの部分でまだ三部料金化に対してシステム対応をしていない事業者さん、あるいはゼロで「該当なし」としている事業者さんが相当数いるということが明らかになりました。
そして第三のポイントは、実務的判断問題への対応です。6月のワーキングの中で事業者さんが判断に悩む問題が出てくるのですが、残念ながらワーキングの中では誰も議論しないんですね。せいぜい有識者の人が「それは何かおかしいよね」ぐらい言ってスルーです。
私は2年間見てきた結果、この実効性確保に関する課題については規制当局が限界に来たと考えています。設備料金ゼロと言うんだったら上乗せしていないことを証明せよ、そうじゃないと規律違反になるぞとずっと言っているわけですが、じゃあどういう規律違反になって、私たちはどうすればいいのかという答えが最後の最後まで返ってきませんでした。
これで私は諦めました。答えがなかったということです。これから答えのない問題は皆さんの問題として転嫁されていって、皆さんが考えることになるわけです。
制度改正のポイントと優先順位
改正省令はそもそも何をしたかったかというと、商慣行廃止ということ、つまり異物を混入させないことです。これは一つは家賃徴収を健全化し、そしてガス料金徴収を健全化するという目標でした。
しかし優先順位があります。実は今やっている三部料金の徹底というのは、もう入り込んでしまった異物をどうやって消費者に見せるかという話なんです。でも本当に一番大事なのはこれから入れないこと、これから異物混入しないことです。
今回370という事業者、主に相対的に事業規模が大きい事業者を中心に調査しました。簡単に言えば局管轄の事業者を中心に、電話やメールで「どうなっていますか?」「ゼロですか、その理由はどうですか?」みたいなことをアンケート的に聞いているということです。そのうちの2割が、システム改修が間に合わなかった
売上への貢献度を分析するため、基本料金2,000円と従量料金750円を当てはめて………本文の続きを読む>>>