2018年12月
「火気取扱設備と特定ガス工作物」との距離規制を整合化へ
経済産業省・産業構造審議会のガス安全小委員会が11月6日に開催され、規制改革実施計画(2018年6月閣議決定)を受けて、ガス保安規制におけるガス事業法と液石法との整合化を進める方針が経産省・ガス安全室から提示されました。
2019年度中に措置される見通し
今回対象となるのは、「火気取扱設備」と「特定ガス工作物(容器・貯槽)」との距離。貯蔵能力が「1,000kg未満」と「1,000kg以上3,000kg未満」で不整合が生じています。今後、2018年度末までに技術の進歩や運用の実態、事業者のニーズなどを把握。審議会の了承を得たうえで、2019年度中に措置することになる見通しです。
両法における保安規制は、2017年4月に「保安物件とガス工作物の離隔距離」の整合化が行われています。
「火気取扱設備」と「特定ガス工作物(容器・貯槽)」との距離
(ガス=ガス事業法、液石=液石法、*火気との距離)
災学校空調に817億円、ガス空調拡大に期待
全国の公立小中学などに対する817億円の「熱中症対策としての空調設置予算」(文部科学省)を計上した2018年度補正予算案が11月7日に可決・成立し、GHPなどによるガス空調の拡大が大きく期待されています。未設置の小中学校等教室は全38万教室うち、半数ほどの17万教室。文科省は来夏までには設置を終えたい考えです。
並行して指定避難所対策として体育館にGHP・発電機も
今回の空調設置では、これまでの支援措置(補助金給付)に加えて、地方自治体が負担する元利償還金における地方交付税参入率を引き上げる特例的な措置を講じること。これにより、地方自治体の初期費用(イニシャルコスト)の負担分をなくすうえ、実質負担分も4分の1程度に抑えるとのことです。
ガス空調の拡大に向けては、団体(協会)が主導して市長・市議、教育委員会・小中学校、PTAなどにアプローチ。EHP(電気パッケージエアコン)と競合しつつ、熱中症対策として一般教室にGHP、並行して指定避難所対策として体育館にGHP・発電機を設置するよう提案していく動きが本格化すると見られます。
設置促進支援の仕組み
- 設置費総額の1/3(国庫負担)…補助金を給付
- 設置費総額の残り2/3(地方負担)…①地方負担額全額について地方債(地方自治体の借金)の起債措置を認める、②地方債の元利償還金(返済金)の60%を国が交付する地方交付税制度に算入できる。
- これらにより、設置費全体に対する自治体の負担分は26.7%に軽減。
災害時の燃料供給強靭化に向けた有識者会議がスタート
「災害時の燃料供給の強靭化に向けた有識者会議」(経済産業省)が10月19日にスタートし、11月15日には第2会合が開かれました。
全L協、災害への強さ踏まえ、普及啓発・避難所等への導入・中核充填所の拡充を表明
第1回会合で、LPガスについては(一社)全国LPガス協会が、2016年の熊本地震・台風10号、2017年の九州北部豪雨、2018年の北陸豪雪・大阪北部地震・西日本豪雨・台風21号・北海道胆振東部地震といった大きな自然災害で「LPガスの供給途絶や二次災害は発生しなかった」と紹介。そのうえで、この特性を生かした減災・復旧支援に向け、①LPガスの強みをよく知ってもらうため、これまで以上に普及啓発に注力する、②避難所、自治体での燃料多様化における選択肢の一つとしてLPガス・設備の導入を推進する、③災害時に地域の燃料供給拠点となる中核充填所の拡充を検討する、と表明しました。
今後の災害対応能力の強化に向けた論点(対応の方向性、資源エネルギー庁案)
- 燃料供給インフラ(製油所・油槽所、SSなど)の停電時の供給能力や強靭化対策の状況を点検し、必要な整備を加速。また、より機動的な燃料供給が行える体制を検討する。
- 病院などの重要施設における燃料備蓄状況を把握するとともに、自家用車も含め平時からのさらなる燃料備蓄を推進する。
- SSの営業状況の正確かつ迅速な情報収集のあり方や燃料供給に係る積極的な情報発信など、被災地域・被災者とのコミュニケーションを強化する。
- (天然ガス)事業者による対策、地域の安定供給に与える影響を確認し、必要な体制を構築する。
- (石炭)事業者の実態、地域の安定供給に与える
2018年11月
スイッチング、直近1年で電力422万件、都市ガス105万件増える
電力小売自由化(2016年4月~)、都市ガス小売自由化(2017年4月~)からそれぞれ2年半、1年半が経過した2018年9月末現在のスイッチング状況(累計)が、電力広域的運営推進機関、資源エネルギー庁から公表されました。 それによれば、電力は905.7万件、都市ガスは141.3万件へと増加し、低圧・家庭用需要家総数に対するスイッチング率は、電力が14.48%、都市ガスが4.99%となっています。前年8月数と比較すると、電力は422.3万件、都市ガスは104.6万件増えました。
災害対応マニュアル
災害対応の全ての第一歩は、事業者・お客様被災情報
熊本地震(2016年4月)、西日本豪雨(2018年6~7月)を反映した「LPガス災害対応マニュアル」(第2次改訂版<改>、経済産業省・高圧ガス保安協会)が9月に公表されました。
新たに「第一報のあり方」設ける
総数3,000本に及ぶ容器流出を踏まえた「流出容器の回収体制の確立」が追記されたほか、「情報収集・発信体制の一元化と複層化」を記載し、災害対策本部と地方協会の役割を重視。さらに、被災時に把握すべき情報に「市町村別消費世帯数」を明記するとともに、「災害が発生した場合の全ての第一歩は、LPガス販売事業者及び一般消費者等の被災状況に関する情報の迅速なる把握である」として、新たに「第一報のあり方」が設けられました。
LPガス災害対応マニュアル
2012年度に作成され、2013年度以降は毎年度、参考資料の更新と本文の一部改訂を実施。2014年度には「中核充填所一覧」を掲載した改訂版を、2017年度には熊本地震を踏まえた一部見直し(第2次改訂版)を、同年度3月には全体に反映させた第2次改訂版(改)が作成されている。
第一報のあり方 第一報は、情報伝達に方法、タイミング、内容等に限界があることを踏まえ、次のイからハを基本とする。
イ:LPガス販売事業者の従業員の安否
ロ:LPガス販売事業所の被害の有無
ハ:LPガス消費者等への安全点検ができるか否か
2018年10月
北海道電力、北海道胆振東部地震で「全系崩壊」
相次ぐ自然災害で停電が大きな社会問題化している中、9月6日に起きた北海道胆振東部地震では北海道電力の全需要家295万戸が停電する全系崩壊(ブラックアウト)が発生しました。電力供給は8日昼に約294万戸が復旧したものの、地震で被災した北海道最大の火力発電所・苫東厚真火力発電所の復旧は、当初見込み(1週間ほどで復旧)と大きく違い、「11月以降にずれ込む見通し」(経済産業省)となり、いったんは計画停電も検討されました。しかし、その後復旧は前倒しで進められ、9月下旬現在、1号機、4号機などを再稼働させつつ、需要家に「無理のない範囲での節電」を呼びかけて乗り切っていく動きになっています。
苫東厚真火力発電所は、出力35万kWの1号機、60万kWの2号機、70万kWの4号機の3発電施設(3号機は不調で廃止)を持ち、全体出力は165万kW。世耕産業大臣は9月11日の会見で、「復旧は1号機が9月末以降、2号機は10月中旬以降、4号機は11月以降となる。京極揚水発電所2号機が9月中旬に稼働すれば電力需給は改善が進む」と発言。全面復旧への成り行きが注目されていました。
2018年における主な停電
- 大阪北部地震(6月18日、最大震度6弱)
- 最大停電戸数:17万戸(関西電力) (uk)
- 西日本豪雨(7月5日~8日)
- 最大停電戸数:6.3万戸(四国電力5.3万戸。ほか、関西電力など)
*6月28日~7月8日では、延べ25.4万戸(中国電力・四国電力)
- 台風21号(9月4日~5日)
- 最大停電戸数:260万戸(関西電力170万戸、中部電力73万戸、北海道電力8.7万戸。ほか東北電力、東京電力、北陸電力など)
- 北海道胆振東部地震(9月6日、最大震度7)
- 最大停電戸数:295万戸(独立系統<離島>を除く全需要家)
*地震で苫東厚真火力発電所が被災し、運転不能に。これにより、全需要家の過半にあたる供給力が一挙に失われ、エリア内の周波数の維持が不可能になった。このため、稼働中だった全電源が脱落し、全系崩壊(ブラックアウト)にいたった。
地方自治体との91%と防災協定締結、100%は34道府県に
(一社)全国LPガス協会によれば、地方LPガス協会が地方自治体と締結を進めている防災協定は、2018年3月末時点で、全国1,787自治体のうち1,632自治体が締結済みとなりました。締結率は91%。前年3月末より4ポイント上昇し、締結率100%は前年より5県増えて34道府県になりました。一方で、東京都(締結率41%)、奈良(48%)、福島(50%)は遅れています。
火災警報器、設置10年超で本体交換期が到来
住宅用火災警報器が設置後10年前後となり、電池切れ、それにともなう本体交換期を迎えています。
消防庁が9月4日に公表した今年6月1日現在の設置状況は、設置率が全国平均で81.6%、条例への適合率が66.5%。前年結果とほぼ同じですが、まだ1カ所も設置されていない住宅が18.4%、市町村条例に適合した設置になっていない住宅が33.5%も残っているうえ、設置済みの住宅では電池が寿命(目安:10年)を迎え、本体が交換期に入っているケースが増えています。
住宅用火災警報器の設置と消防庁の対応
火災警報器は2006年6月1日の消防法改正で、まず新築住宅の居室や階段上などへの設置が義務付けられました。既存住宅も、戸建住宅や自動火災報知設備が付いていない共同住宅は、最短で2008年5月中まで、遅くとも2011年5月中までに設置することが義務付けられました。消防庁では「設置から10年以上経過している場合は、電池切れや本体内部の電子部品の劣化により火災を感知しなくなることが考えられる」として、警報器本体の交換を推奨しています。
LPガス関係概算要求、自衛的燃料備蓄8.5億円に増額
バルク告示検査の頻度・検査法見直し調査に6.6億円
経済産業省におけるLPガス関係の2019年度概算要求が8月31日に明らかになりました。2017年度にLPガス国家備蓄体制が確立したことから、総額は前年度より▲33.6億円少ない384.7億円への減少。ただ、災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄に向けては、+2.5億円増の8.5億円を計上し、特に商業施設や病院などの民間施設におけるLPガス備蓄を支援します。
2017年度の国備確立で、総額は384.7億円に減少。
流通面では、この自衛的な燃料備蓄が大きなポイント。自然災害の多発や酷暑傾向などを背景に、災害対応バルクの導入拡大のほか、自家発電設備やコージェネ、GHPの設置を促進し、民間施設の事業継続や災害対応力の強化を支援します。
保安面では、バルク貯槽告示検査の頻度や検査方法の合理化について調査する石油・ガス供給等に係る保安対策調査等委託費を6.6億円(+0.1億円増)へと増やす一方、高圧ガス設備に対する耐震補強支援事業は交付対象の減少にともない1.6億円(▲0.5億円減)に減額します。
2018年9月
安全装置未装着器具、1.1万台交換し残り7.5万台
(一社)全国LPガス協会の集計によれば、不完全燃焼防止装置などの安全装置が付いていない燃焼器具の交換は、2017年度中に全国で1.1万台ほど進んだものの、年度末(2018年3月末)時点では7.5万台残っています。報告書回収率は91.6%。
残数の内訳は、湯沸器4.4万台、風呂釜2.6万台、排気筒0.5万台。一方、業務用厨房施設は総数41.1万施設に対し、①法定以外の周知の実施:30.7万施設、②業務用換気警報器(CO警報器含む):設置済み18.9万施設、設置不要(屋外)3.5万施設となりました。
安全機器の設置数と設置率(年度末)
- マイコンメーター等:設置数1,990.0万戸、設置率99.7%(うち期限切れ0.1%)
- ヒューズガス栓等:設置数1,727.9万戸、設置率97.0%
- 警報器:1,284.6万戸、設置率78.8%(うち製造から5年経過10.0%)
- 調整器:1,350.4万戸(うち7年または10年経過施設2.7%)
経済産業省・ガス安全室、食品工場・業務用厨房のCO中毒事故を要請
経済産業省(ガス安全室)は8月1日、LPガス・都市ガス消費先に向けて、「食品工場及び業務用厨房施設等におけるCO中毒事故の防止」について注意喚起を行いました。事故を未然防止するため、特に①使用中の換気(吸気・排気)、②設備機器の点検(使用前・使用後)、③日常管理の徹底、④フィルターの定期清掃・交換、⑤業務用換気警報器の設置を要請しています。
事故原因の多くは機器の経年劣化や換気不十分 食品工場や業務用厨房施設などでのCO中毒事故は、平成30年は6月末時点ですでに5件(死者0名、症者19名)発生しています。平成29年は3件(死者0名、症者7名)発生。また、平成28年8月には、宮崎県内の高校で、業務用ガスオーブンを使った食品製造実習中に、生徒13名と教諭2名がCO中毒になる事故が発生しています。
経済産業省によれば、これらの事故原因の多くは、機器の経年劣化や換気が不十分なため、消費設備が不完全燃焼を起こし、COが発生しました。
換気・点検・手入れ・業務用換気警報器の設置がポイント
食品工場や業務用厨房施設等でCO中毒事故が免生した場合、多くの人を巻き込み、甚大な被害を及ぼす可能性があることから、「換気、点検、手入れ、業務用換気警報器の設置などが重要であることを、業務用厨房等の所有者や使用者等に理解してもらうことが重要である」としています。
詳しくはこちら→PDF「食品工場・業務用厨房施設等CO中毒事故防止(要請)」
安全装置未装着器具、1.1万台交換し残り7.5万台
(一社)全国LPガス協会の集計によれば、不完全燃焼防止装置などの安全装置が付いていない燃焼器具の交換は、2017年度中に全国で1.1万台ほど進んだものの、年度末(2018年3月末)時点では7.5万台残っています。報告書回収率は91.6%。
業務用厨房(41.1万施設)、換気警報器設置18.9万施設、設置不要3.5万施設 安全装置が付いていない燃焼器具の残数の内訳は、湯沸器4.4万台、風呂釜2.6万台、排気筒0.5万台。
一方、業務用厨房施設は総数41.1万施設に対し、①法定以外の周知の実施:30.7万施設、②業務用換気警報器(CO警報器含む):設置済み18.9万施設、設置不要(屋外)3.5万施設となりました。
安全機器の設置率(年度末)
●マイコンメーター等:設置数1,990.0万戸、設置率99.7%(うち期限切れ0.1%)
●ヒューズガス栓等:設置数1,727.9万戸、設置率97.0%
●ガス漏れ警報器:1,284.6万戸、設置率78.8%(うち製造から5年経過10.0%)
●調整器:1,350.4万戸(うち7年または10年経過施設2.7%)
エネ庁、今夏終盤にも、賃貸入居者6,000人にLPガス料金調査
資源エネルギー庁は、今夏終盤からにも、LPガス消費者を対象としたアンケート調査を実施する予定です。7月27日開催の「北関東地方LPガス懇談会」で明らかにしたもので、2017年6月1日の液石法施行規則等の改正以降に賃貸住宅に入居したLPガス消費者(6,000人)を対象とし、毎月のガス代の中に、販売事業者が費用を負担したエアコン、ドアホンなどの設備代金が含まれていないかをチェックしたい考えです。
2017年度需要開発推進運動、エコジョーズが前年度を上回る
(一社)全国LPガス協会は、快適生活の提案とそれによるガス増販に向けた全国運動、「需要開発推進運動」における2017年度の機器販売実績をまとめました。
今年度も継続して実施中!
それによれば、エネファーム、GHPなど全体としては7品目中6品目が前年度実績を下回りましたが、エコジョーズは19.4万台となり、前年実績を4.1%上回りました。
運動は、成功事例セミナーやリース活用の研修会、また地方LPガス協会が推進する運動を支援するなどして、2018年度も引き続き行われています。
9月から「LPガスワンランクアップキャンペーン」
特に9月から11月までの3カ月間は、対象品目を大幅に拡大した「LPガスワンランクアップキャンペーン」が全国展開されますので、積極的な取り組みが期待されています。