事務局から
矢部 元法 やべ・もとのり
中川 順一 なかがわ・じゅんいち プロフィール紹介>>>
長澤 耕一 ながさわ・こういち
2023年8月
賢者の学習 高値安定と無償配管、保安投資
日本の家庭用LPガスは1950年代後半から普及が始まりました。LPガス販売業界はすでに70年の歴史を刻んだことになります。その歴史を振り返ることで、現在とこれからの業界課題を考える上での材料を得たいと思います。
(事務局・中川順一)
史上最悪のLPガス事故
1983年(昭和58年)11月22日、静岡県掛川市のレクリエーション施設「ヤマハレクリエーションつま恋」で爆発事故が発生しました。死者14名、重軽傷者27名を出したこの「つま恋ガス爆発事故」は、現在まで、国内におけるLPガスの爆発事故としては最大の人的被害となっています。
事故原因は、現場となったレストランで、多数あった末端ガス栓の開閉状況を確認せずに中間バルブを開けたためです。開状態だった末端ガス栓からガスが漏出し、ガス警報器が鳴動したものの対応が遅れ、何らかの着火源(製氷機とみられている)から引火し、爆発・火災に至ったというもの。施設側の安全意識の低さから、作業面、設備面でガス事業者側が十分な安全管理が行えなかったことも、大惨事となった要因とされました。
安全器具3点セット全戸設置へ
事故の翌年、1984年(昭和59年)7月に省令改正が行われ、料理飲食店等へのヒューズガス栓の設置が義務付けられました。さらに1986年(昭和61年)にはLPガス安全器具普及懇談会(通産省立地公害局)が、当時年間500件発生していたLPガス事故を「5年後に5分の1、10年後に10分の1」とする減少目標を提言しました。
これを受けた業界側は、「誤った使い方をしても事故にならない」、ガス利用におけるフェールセーフ確立のため、安全機器普及促進運動を展開することとなります。具体的には、マイコンメーター、ヒューズガス栓、ガス警報器という安全器具3点セットを全消費先に普及させるという運動でした。
業者負担だからこそ達成できた
通商産業省(現・経済産業省)と日本LPガス連合会(現・全国LPガス協会)が牽引役となって、官民一体で推進したこの運動により、事故数は直線的に減少することとなります。1994年(平成6年)のLPガス事故は82件で1979年(昭和54年)時の10分の1、運動開始の1986年(昭和61年)時の6分の1強に減り、1997年(平成9年)には、過去最低の68件にまで減ります。
LPガスは都市ガスよりも早く、一般家庭消費先でマイコンメーターのほぼ100%設置を完了しました。事業者自らの負担で、安全をより確保する機器を普及したからこそ、全戸設置が可能となったわけです。家庭用ガス警報器設置でもわかるように、戸建住宅など設置義務がない場合、顧客に有償で安全機器を取り付けることは大変な苦労を要します。安全機器3点も顧客負担であったら、全戸設置は達成できなかったでしょう。
もちろん安全機器普及促進運動の当初は、販売事業者側の負担で全戸設置することへの抵抗もありました。とくにマイコンメーターについては、当時の通常メーターの2~3倍もの値段がしました。マイコンメーターをつけたくない事業者からは、「計量器であるメーターに保安機能をつけるのは過剰スペックだ」とか「ガスを売るべきガス屋が、ガスを止める機械をわざわざ付けるのか」といった声さえあったのです。
儲けがあったからこその保安投資
行政の強い指導も相まって、業界の大勢は業者負担での全戸設置に動いていきます。それが可能だったのは、言うまでもなく、ガスが儲かっていたからです。
当時も「プロパンは高い」「プロパン屋は儲け過ぎだ」という声がありました。儲かっていたからこそ、顧客に負担させることなく安全機器に投資ができたということもあります。
80年代にすでに「プロパンは高い」と言われていましたが、では、プロパンが高いものだったのはいつからなのでしょうか。50年代の終わり頃に、家庭用プロパンガスが登場した当初から、「プロパンは高い」と一般の人からは思われていました。当時の家庭用燃料の主力だった薪炭や石炭と比べて、ボンベと調整器とコンロをセットで購入する「プロパンは高い」商品だったわけです。「高くても、都会と同じようにガスが使える」ことを良しとする非都市ガスエリアの高所得者から、家庭用LPガスは普及していくわけです。
やがて質量販売からメーター販売となり、利便性に優れたプロパンガスや灯油は、家庭から薪炭や石炭を駆逐していきました。高度経済成長の時代となり、プロパン価格も相対的には、それほど高いものではなくなっていきます。
高値のスタートはオイルショックから
では、「プロパン屋は儲け過ぎだ」と言われるようになるのはいつからでしょうか。
1973年(昭和48年)10月、第4次中東戦争が勃発。中東各国の産出削減やイスラエル支援国への石油禁輸発表などにより「第一次オイルショック」が起こります。LPガスも供給不安が生じますが、他の商品同様に売り惜しみ・出し惜しみが頻発し、小売価格が暴騰します。政府はその対策として、「買占め売惜しみ防止法」の対象品目にLPガスを加え、10kg1,300円(北海道地区1,500円)の指導価格を提示、翌1974年(昭和49年)8月には「標準価格」1,500円と告示します。ちなみに当時の大卒初任給は72,800円(公務員)でした。
この標準価格に、多くのLPガス販売事業者は「一息つく」ことになります。というのは、オイルショック直前のLPガス販売業界は、小規模業者がほとんどで、顧客獲得をめぐって販売価格のダンピングを中心とした激しい販売競争が繰り広げられていました。さらにメーター法制化により販売経費や設備投資が増え、赤字経営の店も少なくなかったのです。
無償配管業者が大手になった
オイルショックの収束で仕入れ高騰は収まりますが、その後も多くの店は標準価格に準拠して価格を設定します。「これ以上高く売ってはいけない」標準価格は、「この値段までなら売っても構わない」値段になったのです。
高値安定が続き、多くのLPガス販売店の経営は安定します。ではこの利益はどこへ行ったのか。多くは悪名高き「無償配管」に回ります。無償配管の発祥は不明ですが、1960年代の後半から1970年代初頭に、配管代を無償にするサービスで顧客獲得を行う業者が登場し始めます。それまでのLPガス販売店の新規獲得営業は、不動産屋や工務店に菓子折りを持って営業するか、新聞屋や牛乳屋と一緒に引っ越しの手伝いをするなどして、直接契約を得ていました。ここに「無償配管」という営業ツールができたのです。
住宅建設ラッシュが進む中で、都市ガス競合エリアでは消費者にとって配管工事代が無償になることはLPガス選択の大きな動機でした。無償配管が一般家庭のガス化促進に一役買ったことは事実でしょう。
仕入れが下がっても料金を下げず、その利益を無償配管投資に回す業者が、顧客数を伸ばしました。「大手が無償配管で顧客を増やした」というよりも、「無償配管を積極的にやったところが大手になった」とする方が、正しいかとも思われます。この時、無償配管よりも料金値下げを選ぶ業者が多ければ、小規模事業者は苦戦したかもしれません。ただ、見方を変えると、当時の多くの消費者は、安いガス代よりも無償配管に魅力を感じていたのだとみることはできないでしょうか。
切替阻止のための無償配管
しかしやがてこの無償配管サービスは、一般消費者へのサービスではなく、工務店へのサービスになっていきます。工務店は消費者から配管代を受領しながら、販売事業者側はそれを請求せず、月々のガス代から徴収するということも出てきました。いずれにせよ、無償配管で顧客を増やすことは全国的に常態化します。
無償配管問題は、設置時の配管工事費を無料にすること自体が問題なのではなく、費用回収がどのように行われ、それを消費者がどう理解しているかが問題です。80年代、多くの消費者は、無償配管の事実を知らずにガスを利用していました。1990年代になっていわゆる「切替ブローカー」が登場し、顧客争奪戦が顕在化します。背景には、住宅着工件数の減少など今後は市場拡大が見込めないと考えた大手業者らが、工務店営業よりも、他社客を安値で勧誘切替する方がメリットがあると考えたからです。
切替営業に対抗するために、切り替えられる側は、自社が無償で設置した配管の所有権を主張しました。「自社に所有権がある屋内の配管は使わせない。それでも切り替えるなら、配管を買い取れ」という論法です。これをルール化するために無償配管の「所有権」が議論され、販売契約書による配管所有権や解約時の残存精算方法の明確化が行われるようになります。この頃から、切替をめぐる裁判も行われるようになり、民法の「付合」の問題や、消費者契約法との兼ね合いなど、今日に至るまで議論が続いています。
無償配管・無償貸与禁止後の世界は
2000年代に入ると顧客争奪戦はいっそう激化し、集合住宅オーナーに対する機器類の無償貸与もさかんに行われるようになってきました。本来オーナーの費用で設置すべきエアコン、温水便座、ドアフォン、Wi-Fiといった設備をLPガス販売事業者が負担し、その費用を入居者から回収するスタイルは、現在、大きな問題となっています。
集合住宅の場合、業者選択の決定権者はオーナーで、ガスや設備を利用しガス代を払うのは入居者です。戸建住宅の無償配管問題とは別の要素もある中で、現在、戸建、集合それぞれについて、無償配管・無償貸与問題の解決に向けた議論が行われています。
これについては「大手が金にあかしてオーナー・管理会社に利益供与するからいけない。法律で禁ずるべきだ」という声が、中小事業者から出ています。では、戸建、集合を問わず、無償配管・無償貸与が全面的になくなったらどうなるでしょうか。大手はそれまでの無償配管・無償貸与の投資、切替時の配管精算代を料金値下げに投じていくでしょう。無償配管・無償貸与を前提としたLPガスの料金設定は崩れていきます。料金競争となれば、体力ある大手に有利です。オイルショックをしたたかに乗り切った中小LPガス販売事業者ですが、今度は……。
2023年6月
価格上昇傾向は続く!? 今後の原油動向についての情報整理
LPガス輸入価格に影響を与える原油価格の動向について、最近の動向と識者の見通し等を整理しました。なお、関連情報として本会ホームページに掲載している例会講演録「エネルギーの地政学/一般財団法人日本エネルギー経済研究所専務理事・小山堅氏」(全文は会員限定公開・第154回例会2022年12月7日)、エネルギー業界ニュース「サウジCP・米MB価格推移」(2017年以降月別)も併せてご参照ください。
国内外の事象と歴史から動向を予測
原油価格は国際経済、国際政治、国際関係の原因でもあり、結果でもあると言えます。それだけに、原油市場をウォッチングすることは、国際社会の展開を予見するうえでも有効なことでしょう。しかし、原油価格の形成には複雑多岐にわたる要因が相互に絡み合い、先を展望することもそう容易ではありません。
LPガス業界でお馴染みの橘川武郎教授は専門である日本経営史・エネルギー産業論の視点から、「エネルギーの歴史を振り返ると、これからの大きな流れ、方向性を把握できる」(「週刊エコノミスト」2023年5月9日号への寄稿)と述べています。寄稿では原油価格100年間の推移についても触れていますが、原油価格動向も過去の歴史を踏まえたうえで、その予測が立てられると言えるでしょう。
これからの展開については、新型コロナ関連の規制緩和を受けて経済活動再開、ウクライナ情勢といったことが今後どのように進展するかなどをもとに予測が立てられるでしょう。すでに、さまざまな機関やアナリストが予測を行なっています。
以下に、そのうちのごく一部について要旨を紹介します。
まず、日本総合研究所(「原油市場展望」)によれば、今年後半にかけては、中国などの景気回復に伴う需要拡大、「OPECプラス」による減産策の強化、アメリカの原油増産ペースの鈍化などが相まって、原油価格に上昇圧力がかかりやすくなるであろうという見通しが示されています。
また、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC;鑓田真崇氏)の見解は、現在の価格水準あるいはそれ以上の水準で推移する可能性が予想されるということです。引き続き世界経済成長見通しの不確実性はあるものの、中国も新型コロナ関連の規制緩和を受けて経済活動再開、これに伴い同国による石油需要回復が見込めるほか、OPECプラスによる大規模減産決定、すでに導入されているロシア産原油の禁輸・価格上限設定とこれに対するロシアからの減産可能性などに下支えされるからというものです。
原油見通しは楽観できない
独立行政法人経済産業研究所(RIETI;藤和彦氏)による予測は、2023年後半以降、原油価格は上昇するとみています。この予測は昨年末に執筆され今年年初に発表されたものですが、世界の原油・天然ガス開発の投資額が低迷したままであることに着目しています。「国際エネルギー機関(IEA)」も、「投資額が早期に5000億ドル以上に増加しないと生産不足が生じるのは時間の問題だ」と警告を発しています。
ロシアの原油生産量(日量約1000万バレル)が早期に減少することはないにせよ、10年後に日量200万バレル以上減少するとの見方が有力になっていること、世界最大の原油生産国となった米国の生産量も日量1200万バレル程度で頭打ちとなっており、米国のシェール産業は成熟期に入った公算が高いという見方を示します。
増産余力が期待される中東産油国にしても、それぞれに地政学リスク、政情不安を抱え、危機の要因が多いこと、とりわけ、原油の中東依存度が95%を超える日本にとって、とても楽観視などできる情勢ではなく、「2023年の原油価格の見通しは『先憂後楽』ならぬ『先楽後憂』なのではないだろうか」と結んでいます。
1970年代 | 70年代前半の原油価格は2~3ドルで安定 |
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1973年10月、第4次中東戦争で約4倍に(第1次オイルショック) | |
70年代後半~80年、第2次オイルショック、イラン革命などで上昇 | |
1980年代 | 80年イラン・イラク戦争ぼっ発で上昇 |
80年代半ばまでは原油需要の減退や非OPEC諸国の増産で30ドル前後で安定 | |
1986年、サウジアラビアの実質的な値引と増産で10ドル水準まで急落 | |
1990年代 | イラクがクウェートに侵攻。40ドル台に高騰 |
96年頃まで10~20ドル近辺で推移 | |
97~98年OPEC増産決議とアジア経済危機で10ドル近くまで下落 | |
2000年代 | 00年、OPECと非OPEC産油国との協調減産で30ドル近くに |
01年、アメリカ同時多発テロの影響による石油需要減退で一時的に下落 | |
02~08年、石油需要増、生産減、イラク戦争等で高騰 08年、147.27ドルの史上最高値を記録 | |
09年、リーマン・ショック、ドバイ・ショックで40ドル台まで暴落 | |
2010年代 | 10~14年、中東、北アフリカ、シリア、クリミア等地政学的リスクの高まりで100ドル前後上昇 |
16年、アメリカのシェール・オイル増産、供給過剰等で26ドル水準まで急落 | |
18年、OPECの減産合意等で70ドル台後半。以降50ドル前後で推移 | |
2020年代 | 20年、新型コロナウイルスの感染拡大で下落。NY原油は史上初のマイナス価格 |
21年以降、経済活動再開への期待やロシアのウクライナ侵攻等で上昇基調 |
2023年4月
無償配管問題と料金問題の行方 法改正はどのようになるのか
貸付配管・無償貸与問題を含めた「LPガス料金の不透明さ」を是正するための法改正が、年内あるいは年度内に行われると業界内で語られています。仮に年内改正が行われるとすれば、すでにその骨子が固まっているとみるべきかもしれませんが、まだ具体的な内容は明らかにされていません。本会タスクフォース21は、もともとの設立が1997(平成9)年の改正「LPガス新法」に対応したLPガスの販売契約の検討からスタートしています。契約のあるべき姿、業界の健全な競争環境のために何が必要かについて継続的に情報発信を行っています。今回は、先ごろ開かれた第4回目の総合資源エネルギー調査会LPガス流通ワーキンググループの議論について整理します。
LPガス流通ワーキンググループで貸付配管・無償貸与問題を議論
同ワーキンググループは3月2日に開催されました。大手、中小の販売事業者や業界に精通した弁護士、消費者団体らが委員として出席した今回の会合では、冒頭で事務局の資源エネルギー庁石油流通課・永井岳彦課長が「顧客獲得のコスト増が料金に反映し、消費者の不利益につながっている」と指摘。LPガス料金の不透明性に対する問題認識では一致したものの、戸建住宅と集合住宅では受益者や不利益を被る側が異なることから、切り離して議論すべきとの声が複数の委員から出されました。
中継により公開された会合の内容について、業界専門紙は性急な法改正による「取引混乱を懸念」(『燃料油脂新聞』LPG版・3月6日付)と報じる一方、一般紙は「LPガス料金制度改正へ・設備費、建物のオーナー負担に」の見出しの下で「新制度がうまく機能すれば、月々の料金が数千円安くなる可能性もある」(『朝日新聞』3月3日付)と報じています。
石油流通課配布資料より ※資料はタスクフォース21HP会員専用ページで閲覧できます
夏までに制度改正の方向性 国土交通省と連携して規制
こうした一般紙報道については、「行政のレクチャーをもとに記者が組み立てた記事」といううがった見方もあります。その視点から前記の朝日新聞記事から引用すると「LPガス料金制度改正へ」は「夏までに制度改正の方向性をまとめる」こととなり、「設備費はオーナーに請求するようガス会社に求める。省令を改正し、すでに結ばれている契約は除外する方向」ということになります。
一方、「無償配管の慣行をなくすには、住宅・不動産業界の協力が欠かせない。2日の会議でも『賃貸物件を紹介する際にガス料金を明示することを義務づけるべきだ』といった意見が出た。国土交通省と連携して規制に踏み込めるかが課題だ」ともしています。また「日本瓦斯(ニチガス)の吉田恵一・専務執行役員は『客をとられると考えると、やるインセンティブが働く。業者間の監視体制や違反した場合の制裁をセットで考えないといけない』と発言した」とも書いています。
無償貸与と無償配管は異なる 無償配管慣行はなくなっている!?
今回のテーマについて法律面での意見、指摘を述べた柴崎栄一弁護士は、無償貸与と無償配管は異なる点を配布資料とともに改めて整理して示しています。それによると、「『無償配管慣行』とは、『LPガス販売事業者が配管等の設置費用を負担しているにもかかわらず、そのことを消費者や建物所有者に告知せずにLPガスを供給する慣行一般』を指し、消費者がエネルギーの供給業者を切り替えようとした際に、LPガス販売業者が初めて配管等の所有権を主張し、配管等の買取を請求したり、消費設備の利用を禁止したりして、エネルギーの切替を拒否するものである」とし、これは業界自主ルール(販売指針)により「現在、無償配管慣行はなくなっている」と述べています。一方、現在問題となっているのは無償貸付配管で、「消費者または建物所有者がLPガス設備の所有権の帰属を確認し、かつ、買取方式を認識している点で、無償配管慣行とは明らかに異なっている」としています。
ワーキングの模様(YouTube 中継・録画より)
戸建と集合の問題点は別 「戸建問題の解決が先」の指摘も
柴崎委員はLPガス事業者が消費配管等を無償で設置するようになったのは昭和40年代の都市ガス対策によるものだとし、大手事業者が先行した後に中小が追随したとしています。
その後、投資負担が大きくなることに対して中小事業者から無償配管是正の声が上がっていましたが、問題が顕在化するのは、1997年の法改正による販売と保安の分離によりブローカーが出現し、既存業者の配管をタダで利用する切替営業が始まったことによるとしています。
また柴崎委員は「集合住宅における貸与配管の所有権を争う業者がいない」とし、「一部の大手LPガス販売事業者は、個別住宅に関する貸与配管では、その所有権がLPガス販売事業者にあることを否定して消費者の切替を図りながら、そこで得た利益で集合住宅に多大な投資をし、その投資の回収のためにガス料金を高額に設定して、消費者から回収しようと図っていると思われる」と指摘。戸建住宅の問題と集合住宅の問題を分け、かつ「集合住宅における問題は、個別住宅における問題を解決せずに解決することはできない」と指摘しています。
注目された大手販売事業者の意見 法規制について公取の判断も注目か
無償貸与・無償配管や料金についての法律による規制に対し、公正取引委員会が難色を示すのではないかという指摘も一部にあります。公取への対応について、前述のニチガス・吉田委員は、「業界の監視体制は法律ということであればとくに問題ないかもしれないが、事業者間の申し合わせだと公取からカルテルと指摘されないか」とし、経産省側での調整を要望しています。
ニチガスとともに委員として出席し発言が注目されたTOKAIの豊國浩治常務執行役員は、配管訴訟が多数発生している状況を認めつつも、「紛争事例の解決というものが目的であり、そのロジックで直ちに法改正というのではなく、相当な検討が必要と考える」と発言。事業者が配管を資産として計上している現状で、民法の付合の議論でそれを認めないとすることは大きな混乱が予想されるとしています。前述の燃料油脂新聞の記事はこうした発言を踏まえていると思われます。
石油流通課配布資料より
第4回目の総合資源エネルギー調査会LPガス流通ワーキンググループのメンバー
ワーキングは7年ぶりの再始動で、座長は青山学院大学の内山隆教授。前回まで座長を務めた橘川武郎国際大学副学長はオブザーバーに回っています。
委員は以下の各氏。浦郷由季氏〈(一社)全国消費者団体連絡会事務局長〉、柴崎栄一氏〈栄総合法律事務所所長〉、高橋宏昌氏〈テーエス瓦斯(株)代表取締役社長〉、豊國浩治氏〈(株)TOKAIホールディングス常務執行役員〉、中田みち氏〈(株)トーエル代表取締役会長〉、林弘美氏〈(公社)全国消費生活相談員協会エネルギー問題研究会代表〉、吉田恵一氏〈日本瓦斯(株)代表取締役専務執行役員〉。橘川氏以外にオブザーバーとして嘉村潤氏〈(一財)エルピーガス振興センター専務理事〉、村田光司氏〈(一社)全国LPガス協会専務理事〉、吉田栄氏〈日本LPガス協会専務理事〉。
2022年8月
ホームページ「会員専用ページ」のご案内
コロナウイルス感染拡大防止のため、現在、例会は基本的にオンライン配信とさせていただいておりますが、多少鎮静化してきたこともあり、前々回から会場と併用開催にさせていただいております。コロナ後もオンラインと会場の併用とさせていただく予定です。皆様が集まって名刺交換をすることも価値としてありますが、すでに「会場に行かない」ことも浸透しておりますから、どういう形にしていくべきか、幹事の皆様と事務局で相談しているところです。いつでも、どこでも視聴できる「見逃しチャンネル」は好評ですから、続けていく予定です。
また例会で行う講演やプレゼン以外のコンテンツも、会員限定でご覧になっていただける体制を整えています。これはホームページ上での会員登録が必要になりますので、まだご登録されていない方は、ぜひお願いいたします。ご登録には、仮パスワードが必要になります。なくしてしまった、わからないという方は事務局までご連絡ください。ご登録後のパスワードについては、事務局側でもわかりませんので、再度ご登録をお願いいたします。
では、会員登録するとどういうものが見られるのか、少しご紹介します。まず、情報誌のバックナンバー全号がPDFで見られます。そのなかで連載した記事、インタビューなどもウェブページとして閲覧することができます。
また、情報誌には講演録をすべて掲載していませんので、全文は、この会員限定のページ内で読むことができます。
そして、「見逃しチャンネル」です。これは例会が開催されたら、翌週あたりに見ることができます。その際は、視聴申込みが必要になります。それより前の過去の例会については、講師の方の許可を得たものなどがご覧になれます。ご要望をいただいたものなど、人気の高い講演を出すようにしています。
次に、「オンライン講座」です。社員研修やオーナー研修などで使えるコンテンツです。会員であればご覧いただけます。まだ少ないですが、徐々に増やしていく予定ですので、ぜひ見てみてください。
また、会員外の方に向けては、講演ダイジェストなどを掲載するYouTubeチャンネルも開設しています。チャンネル登録をお願いいたします。
そして、「エネルギー業界ニュース」については、一般、会員限定で分かれています。動画もありますから、ぜひご覧ください。ニュースについてのコメントも募集しています。
特定の日を決めて集まるという方法もいいのですが、時間的な制約やコストもありますから、こういったツールを使って情報交換をしていける仕組みを考えています。アイディアがありましたら、お寄せください。
現在、「もう一度聞きたい講演」アンケートをやっております。ホームページのトップからフォームにいけますから、ぜひ回答をお願いいたします。
(事務局・中川順一)
2021年2月
異業種講演は会員の「頭の体操」
必要だけど、欲しいものを売っているわけではなかった 逆境のハンコ業界から何を学ぶか
脱ハンコ化で逆境の業界 LPガス業界に置き換えて考える
山田講師の講演内容は本誌と会員ページ(講演録全文)とを参照していただきますが、印章業界はコロナ禍のまさに“とばっちり”で急に逆風にさらされました。市場規模1,700億円規模とされる伝統のハンコ業界は、官によるデジタルガバメント化の推進と、民におけるテレワークの推進で、たとえば行政手続きで必要なハンコ1.5万件のうち、99%にあたる認印が廃止済み、または廃止方向となり、急速に縮小化が進もうとしているとのことです。
一方、LPガス業界は、オール電化攻勢、脱炭素化への流れといったことが生じてはいるものの、需要の「99%が廃止済み、または廃止方向」という事態は当分来ないというのが業界人の大方の見方でしょう。しかし、同様のことがLPガス業界にも生じないとは断言できない。その感覚を会員間で共有することが、今回のタスクフォース21例会の目的でした。
山田講師が自らの業界を振り返って言った「必要だけど、欲しいものを売っているわけではなかった」という感想に、深く頷いたという感想を後日会員からいただきました。
企業存続のためには、現業において同業他社に勝る点の磨きをかけてシェア拡大を図り続けると同時に、新しい需要の開拓に間断なく取り組み続けねばなりません。それはハンコ業界も、LPガス業界も同じです。
“自社の強み”だけでなく自社や業界の持つ“癖”を生かす
山田講師の会社が取り組んでいる新事業についても、LPガス事業者の新サービスや業態開発のヒントがたくさん含まれていました。それは、技術や販売ルート等での“自社の強み”を生かす、という点以上に「自社や業界の持つ“癖”が生きた」からこそ新しいビジネスが成功したということです。
同社では新規事業としてペットシルエット商品の製造販売を始めました。プリント技術や文具店等流通ルートは“自社の強み”ですが、自社や業界の持つ“癖”が成功の要因となったという点が面白く、かつ大いに参考になる点ではなかったでしょうか。ふつう、こうした商品の製造販売を始める場合、一定の販売量が見込める売れ筋、ニーズの多いものから順に市場に出していくものです。ところが同社の場合、犬のペットシルエット商品の製造・販売にあたり、売れる可能性の低い希少犬種も含め300種類以上を一度に商品化して並べました。これは、まさに“ハンコ屋さん”の発想です。
文具店の認印は、そのハンコ(名字)を使用する人が多いか少ないかに関わらず、とりあえず可能な限り揃えておくというスタイルです。揃えてあっても「必要なモノ」であるハンコは、必要な人が必要なモノしか購入しませんが、「欲しいモノ」であるペットシルエットは、欲しければいくらでも買い揃えていくことになります。他のペットグッズメーカーが品揃えしない希少犬種を飼う人は同社の商品を買い、メジャー犬種を飼う人や愛犬家らは同社の品揃えで希少犬種のグッズ知り、コレクションします。そのような流れで、ペットグッズというまったく未知だった業界に後発参入でありながら、短期間で一定のポジションを確保できたわけです。
考え方を学び共有し 自分で考えて成果は共有する
タスクフォース21での異業種の講演やプレゼンテーションは、その目的から次のように分類されます。
一つは、需要が拡大しつつある、あるいは今後拡大が予想される新商品や新サービスを扱う事業者の講演やメーカー、フランチャイザーのプレゼンテーション。2000年頃には、当時、異業種においてもまだ始まったばかりであったインターネット販売を行う事業者らに講演依頼を行い、分科会を設置。その成果をもとに、ガス機器販売の実験サイト「Gモール」を開設したこともあります(2001年)。
かつては便利ビジネスや牛乳宅配、最近ではカルチャーセンターやコインランドリー、消毒剤といった事業や商品のプレゼンテーションを実施し、会員各社の新事業・新商材の検討材料として提供しています。
もう一つは、異業種のさまざまな取り組みを自社やLPガス業界の現状に置き換えて、自社の将来を考える上でのヒントを得ようとするものです。今回のハンコ業界の講演も、「新ビジネスとしてペット業界参入はどうか」という短絡的なものではなく、“自社の強み”だけでなく、自社や業界の持つ“癖”を生かすとすれば何ができるのかを考えるためのものです。
講演で得た情報をいかに活用するかは、聴講者それぞれが考えることです。講演会の感想でありがちな「もっと具体的な話を聞きたい」という感想の大半は、自社の個別事情にどう置き換えるまで懇切丁寧に教えてほしいというもの。例えば、料金表作成の具体的な講演を聞きながらも、自社の原価構造などまで踏まえて「いくらにすればいいか」まで話してほしいというのは、講演会に求めるものではなく、個別のコンサルや業務支援の範囲です。個別のコンサルを大勢参加の講演会の席で求めるのは筋違いですよ、というのが本会の考え方です。
実際、例会での講演で自社の個別事情に応じたコンサルやプレゼンを依頼する会員は、個別に案件依頼し、必要であれば費用を払うという形で対応していただいています。
「ここから先は会員各社が自分で考えてほしい」がタスクフォース21のスタンスであり、「基本的な考え方は可能な限り共有する」「個別応用は各自で考える」「うまくいったら共有する」という方針があったからこそ、20数年にわたり「地域・系列を超えた同業者の勉強会」として会が継続できたと総括できると思います。
異業種講演は会員の経営面での「頭の体操」と言えます。これからもアンテナを張り巡らせ、異業種情報を集めたいと思います。
(事務局・中川順一)
最近の主な異業種講演
■マイルドクリア67のご案内
(笹岡薬品・笹岡ウエルネス販売 代表 笹岡 邦充 氏)
■コインランドリー事業説明
(株式会社センカク 北出 武大 氏)
■需要が多く供給が少ない“戸建賃貸”
(株式会社洋館家本店 生澤 貴広 氏)
■100円家事代行・御用聞きを通じたソーシャルビジネス最前線
(株式会社御用聞き 古市 盛久 氏)
■安心・安全なまちづくりに貢献するカメラのご提案
(株式会社 CHO&Company 営業部 部長 廣橋 宣光 氏)
■社会貢献 新ビジネス
(株式会社サンコーライフサポート 代表取締役 橋本一郎 氏)
10年後のわが社をつくる
中小企業の経営者は、現場が大好きです。経営者も幹部も、現場で、いま目の前で起きている問題を、いかに解決するかということに熱中するのが、好きですよね?
目の前の問題に対処していれば、仕事している気になれますよね?
でも、「あなたの仕事は、それじゃない」っていうのを、分かってください。現場の楽しさに酔っていては、あなたの会社は、成長はおろか、生存すら危うくなっていきます。
経営者の仕事は、5年後10年後を見据えた再投資するべき「新業態」を見つけてくることなのです。もし分からなければ、こう考えると分かりやすいですよ。
「10年後のわが社が、今の業態のままで、食っていけると思うか?」
(鈴木隆明氏「LPガス事業者の業態開発で未来につなぐ」タスクフォース21第129回例会より)
2020年12月
タスクフォース21 幹事会報告 Afterコロナを見据えたLPガス事業とは
1都3県の緊急事態宣言解除の延期が発表される(3月5日現在)など、コロナ禍は依然、収束の目途が立ちません。タスクフォース21では、オンライン形式での例会、幹事会を開催するとともに、さまざまなルートでの情報収集を行いつつ、Afterコロナを見据えたLPガス事業のあり方を模索しています。
コロナ禍での点検訪問への懸念客は7.9% お客様は「インフラ事業者」を待っている!?
コロナ禍による訪問活動自粛により顧客接点機会が失われ、営業活動に支障が出ているという声があります。保安点検を拒んだり、先延ばしを求めるお客様が多くなっているとも言われていますが、「実際はどうなのか」、裏付けとなるデータは業界内でまだ発表されていません。
こうした中で、本会の牧野修三会長は自社(㈱カナジュウ・コーポレーション)の「定期点検訪問予約状況」を集計し、3月3日の幹事会に情報提供しました。それによると、2度目の緊急事態宣言が発出される直前の12月以降、約1,000件のお客様への電話による点検予約依頼で、訪問に対して何らかの「懸念」を示すお客様は7.9%という結果になっています。牧野会長が幹事に語ったのは、次のような内容でした。「懸念客が7.9%だったことをどう見るか。1割近くが懸念しているから訪問はすべてやめようと考えるか、92.1%のお客様は来ても良いと言っていると考えるか、見方はいろいろあるだろう。我々はライフライン事業者を任じてきたが、感染症特措法上はインフラ事業者となる。感染対策をしっかりしたうえで、という前提はもちろんだが、お客様はインフラ事業者の訪問を望んでいると考えることも大切ではないか」。
実際、コロナ禍でむしろリフォーム受注や器具販売が好調だという販売事業者も少なくありません。一般論としてコロナ後も「非接触」志向が続くとされてはいるものの、LPガス事業者は必ずしもそうではないのではないか、という“仮説”の検証も、今後の本会のテーマとしてピックアップすることになりました。
経済産業省 資源エネルギー庁・橋爪企画官が本会例会での講演で提起した「LPガス産業の長期的な課題」
- ①長期的なLPガスの需要減
- ②経営者の高齢化による事業継続の困難、後継者不足
- ③取引適正化、料金透明化問題
- ④2050年のカーボンニュートラル実現の要請
※上記のほか、人手不足といった課題もある
(参考)海外におけるLPGのカーボンニュートラルへの対応
- ●カーボンニュートラルへの対応のため、欧米では植物由来のバイオLPガス生産に取り組んでいる。
- ●バイオLPガスは、販売事業者によってブランド化され、プレミアム価格で販売されている。
- ●長期的には、欧州ではLPガス需要の9割をバイオLPガスで供給する可能性(世界LPG協会報告書の見解)。
脱炭素化の動きとLPガス産業 オール電化対策とライフライン事業
昨年、菅義偉首相が宣言した「2050年までに『カーボンニュートラル(炭素中立)』を実現する」という目標は、日本の産業政策において重要テーマとなっています。本会例会での経済産業省資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課・橋爪優文企画官の講演でも触れられていました(本号掲載)が、LPガス産業の具体的な対応策についてはまだほとんど見えていません。流通レベルでは、脱炭素のLPガスが供給されれば、それを売るという選択もありますが、技術的にはまだハードルが相当高いようです。
2050年までに脱炭素を達成することが実現可能であるかどうかはひとまずおくとして、懸念されるのは、世の中に「脱炭素」の“ムード”が醸成され、それに乗ったカタチを変えたオール電化攻勢がくるのではないかということです。本会顧問のエネルギー事業コンサルタント・角田憲司氏は、幹事会において、この面での電化対策の検討も呼び掛けています。
「屋内電化」が確実に進む中で、LPガス事業者はどのような将来像を描くべきか、これは本会が設立時より追求しているテーマです。
牧野会長が語ったように、LPガス事業者は感染症特措法上の「インフラ事業者」であり、かつ「ライフライン事業者」を標榜してきました。インフラとライフラインの違いの例として「インフラは道路。ライフラインは道路があることを前提としたクルマやバスといった交通・輸送機関、あるいは物流」と言われます。これに倣えば、LPガス事業者はガス設備の設置・供給から、その先の機器の利用やサービスをも担っているということになります。その立ち位置から、脱炭素時代をも視野に入れた事業形態を創造していけるのではないかと考えます。
(事務局・中川順一)
2020年10月
切替対策はコロナ禍に似ている!? 防御から攻めへ 新しいフェイズに入った
オンラインセミナーは進化する
今年2月以来、コロナ禍で各社の系列向け研修会も開催できずにいましたが、最近になってオンラインで開催する事業者や販売店会も増えてきました。私自身にも、オンラインセミナーの設営の協力や、講師の仕事が入ってきています。
タスクフォース21の開催もオンライン開催が続いていますが、毎回、設営に苦労しています。Zoom会議などと違い、配信用のアプリを複数併用したり、講演の中継用の機材などを揃えて操作しながら、一方で進行係などもやるとなるとなかなか大変です。これからの例会の形を考えたいと、いろいろ欲張ってやろうとしている分、失敗も増えています。
機器やアプリで生じがちなトラブルは、経験によって回避できるようになります。また、ある程度慣れてくると、どういう割り切りをすればいいのかもわかってくるものです。
さらに、緊急事態宣言の直後は品薄だったオンライン用機材も入手が容易になり、短い期間に高性能で比較的安価な機器類も続々登場しています。
いまはいろいろ苦労が多いオンラインセミナーの設営も、もっと簡単に、そして面白い演出が可能になるよう進化していくのでしょう。
20年前の販売事業者の方針発表会の設営サポートでは、写真フィルムからスライドをつくる仕事がありましたが、それがパワーポイントになり、いまではパワポは主催事業者の担当者が自前で作っています。
オンラインセミナーの設営や動画編集も、すぐにそうなるのでしょう。現在は「設営業者」として費用をもらって仕事をしている我々も、各社が自前でやられるようになれば、いずれその仕事はなくなるのでしょう。
切替対策はコロナ禍の類似点
夏以降、切替対策をテーマにしたオンラインセミナーで話す機会が何度かありました。
切替問題での講演は、地域によって事業者の知識や経験に差があるので、広範囲に配信されるセミナーでは、どのあたりをターゲットに話せばいいのか迷うところがあります。また、リアルの講演であれば、ウケを狙って脱線したり、特定業者について名前を挙げて問題点を指摘したりもできますが、オンラインは誰が聴いているかわかりません。
なので、これまで内容の薄さを言い回しで胡麻化してきた(?)身としては、我ながらいつも以上に物足りない内容となってしまっているような気がして反省しています。
ところで、講演のマクラで、コロナ禍と切替対策は似ている、という話をしています。切替対策は、現在のコロナ同様に「特効薬」がありません。とにかく防ぐための努力をするしかないわけで、それでも、だれでもどこでも感染/切り替えられるリスクがあります。
感染防止対策の基本は、3密回避、マスク着用、手洗い励行をしっかりやることとされています。
では、切替対策の基本は何かというと、お客様への事前の情報提供と、顧客接点強化、そして顧客満足を高める施策の工夫ということになります。
もっと具体的にいうと、事前に防御チラシを撒くこと、お客様に会って、会えなければチラシやDM、電話、ホームページなどさまざまな手段で自社を理解してもらうこと、そして、クレームなどに対応でき、お得感を演出できる料金やサービスメニューなどを用意することです
切替がなくても顧客数は減る
そして、コロナ禍と切替対策は似ていると思うことでは、もう一点あります。
コロナ禍では自粛ばかりではだめだ、経済をまわせということで、GOTOキャンペーンなどが行われています。切替対策も同じで、防衛だけではだめです。攻めていかなければなりません。
LPガス業界では、切替がなくても顧客数の自然減が進みます。どんな業種でも、市場が収縮していけばその中でパイの取り合いが始まるのは当然です。LPガス事業者も、商圏の人口が減り、家が建たなくなるのであれば、これまでのようにハウスメーカーや工務店、不動産会社に依存して仕事をもらうスタイルでは新規は増やせなくなります。
他社の既存のLPガス顧客を奪わなければ事業は存続できません。上場大手の一部は、すでに20年以上前にその判断から、新規営業で切替を軸とする方針にしたわけです。
中小規模の販売店も、地域を問わず切替営業を積極的にするという経営判断をせざるを得ない状況になってきました。切替営業を躊躇している店は衰退していきます。
GOTOキャンペーンの実施は、感染を拡大させるのではないかという危惧があります。LPガスの切替についても、あらゆる地域のあらゆる業者が切替に舵を切ったら、業界がぐちゃぐちゃになるのではないかと心配する人がいます。私はそうは思いません。切替が悪いのではなく、悪い切替が問題なのです。
切替のルールが守られ、健全な競争が促進されることは、業界の発展にもつながります。これからは切替をするのは特定の事業者だけではなくなります。
(事務局・中川順一)
2020年8月
「with コロナ」時代のLPガス経営を考える
緊急事態宣言が解除され、徐々に経済活動は再開されていますが、首都圏など、依然として新型コロナウイルスの感染拡大の勢いが衰えない地域もあり、予断を許さない状況が続いています。ソーシャルディスタンスが叫ばれる中で、LPガス販売業界では「withコロナ」時代の営業活動のあり方が大きな課題としてクローズアップされています。こうした中、去る7月1日にエネルギー事業コンサルタントの角田憲司氏(前日本ガス協会理事)をゲストに迎えて開催したオンライン幹事会で決まった、主な方針・内容をリポートしてみました。
角田氏がタスク幹事会にゲスト参加
タスクフォース21では6月16~18日に開催された「リンナイ 乾太くんWebセミナー」の設営協力をさせていただきました。そのご縁で、そのセミナーの講師を務められた角田氏に8月開催のタスク例会でも、「コロナ後のLPガス業界への提言」(仮題)についてご講演をいただけることとなりました。
角田氏には、新型コロナ禍を受けてLPガス事業の経営をどうするかという喫緊の課題に加えて、同氏が以前からLPガス業界の主要な問題点として挙げておられた① SDGs(持続可能な開発目標)に向けたLPガス業界が取り組むべき長期的な課題、および②料金透明化、取引適正化―についても併
せてお話いただきます。
さらに、これらの課題に加えて今回、「リンナイ 乾太くんWebセミナー」で話されたガス衣類乾燥機「乾太くん」の普及拡大のお話にも触れていただくこととなりました。
需要拡大に向け分科会を設置
タスクフォース21のオンライン中継スタッフが
「リンナイ 乾太くんWebセミナー」の設営を協力
(事前受付システム・アンケートサイト設置、中継・配信)
角田氏のお話は、「乾太くん」はガス業界が胸を張って消費者の信頼に応えられるシンボリックな戦略商品といえるもので、この商品をピックアップしてLPガス販売事業者の需要拡大力を強化していこうと呼びかけていただくものです。
幹事会では角田氏からこうしたお話を伺い、今後はタスクにおいてガス需要拡大に向けた息の長い普及促進活動をやっていこうということになりました。角田氏の構想にはGHPコンソーシアムのような組織のガス衣類乾燥機版があります。タスクでは将来そういった組織が結成されるまでの準備として、タスク内の分科会を設置し、ガス衣類乾燥性能のすばらしさを世に訴えていく。それにより、ガス需要を創り出していくことを目指します。
また、ここ数年目覚ましい発展ぶりを示しているコインランドリー業界には既に業界団体が発足しているとのことで、将来的にこうしたユーザー団体との連携も視野に入れていくことなどが話し合われました。
「月刊LPガス」でタスク活動をPR
タスク事務局ではLPガス情報誌「月刊LPガス」(産業報道出版発行)を、今年8月から約1年間にわたり、毎月2ページ程度の提供を受け、タスクの活動や魅力を広報・宣伝することとなりました。タスクで行われた講演のダイジェストを掲載して読者をタスクのWebに誘導し、会員拡大につなげたい
と考えています。
この連載の中でも、「乾太くん」の普及促進に向けた需要拡大ストーリーを継続的に流していくことなども検討していくこととしています。
LPガス販売事業者はデジタル化投資を
角田氏の問題提起にはLPガス料金問題があります。
ここには2つの問題があります。一つは透明化・取引適正化問題です。もう一つは輸入価格が下落する中で、家庭用末端価格が高止まりする問題です。これは、いうなればLPガス業界の長年の傾向で、一朝一夕には改められない問題ともいえます。
角田氏は、もしそうであれば得た利益で将来のためにデジタル投資を行うようご提案されています。デジタル化により事業の効率化や、長期的な人手不足対策につなげて、消費者の信頼を得られるような体制を構築していこうという提案です。
デジタル投資はLPガス業界にも積極的な事業者が散見されます。先行事業者はIoTの導入を推進しています。Web請求に切り替える動きもそろそろ目立つようになってきました。小売販売業界でも検針票など紙の伝票をなくすことに努める事業者もいます。目的は効率化による人手不足対策ですが、切り替え防御にもつながるようです。切替ブローカーがターゲットにする会社の紙の検針票を入手して、切替営業に走り回るのと対称的です。紙がなくなれば、比較も難しくなります。また、人と接触せざるを得ない集金業務をやめたいという事業者もデジタル化を行っているようです。
最近は、クレジット業界など他の業界でWeb請求が増えてきているため、顧客もその利便性に徐々に慣れてきているという側面があり、エネルギー業界はこうした動きに追随してWeb請求に踏み込んでいるものと思われます。業務効率化の余禄として切り替え防止になり、集金コスト低減につながればなおさら意義のあることといえます。
また、ある卸事業者では災害時に被災地の販売店のところへディーラーヘルプとして駆け付けていますが、パンデミックの際には現地に応援に行くことはできません。従って日常的に最低限のやり取りはオンラインでできるようにしておいて、パンデミック等の有事の際はオンライン機能を活用した支援を行うことを検討していると聞きました。
LPガス業界には元売から卸、小売業界まで様々な段階があります。
検針、集金、配送、あるいは充填などの基幹業務のデジタルシフトとその他の社内業務のテレワーク化などもデジタル化の一環といえるでしょう。
今後、タスク事務局ではLPガス業界でデジタル投資を積極的に行う事業者へのアンケートを検討していきます。どんな事業者のどんな業務がデジタル化、テレワークに向いているのか、あるいは実際に進んでいるのか、深掘りができればいいと思っています。
またテレワーク化にあたっての障壁が分かれば、問題点を共有化してシステムメーカーなども巻き込んでクラウドシステム化等により解決策を見つけることも意義のあることと考えています。
2020年5月
新型コロナ「緊急事態宣言」への対応と今後
4月7日に7都府県に出された新型コロナ「緊急事態宣言」は、16日には全国に拡大されました。約2カ月にわたる「宣言」期間中、ライフライン事業者であるLPガス販売事業者は、さまざまな制約の中で事業活動を継続しました。タスクフォース21では、そこでの経験を共有し、今後に向けた取り組みを検討することを会の大きなテーマとしていきます。ここでは、去る5月20日にオンラインで開催した幹事会での内容の一部をご紹介します。
参加者(敬称略)
牧野修三(会長。カナジュウ・コーポレーション)、中田英穂(東洋計器)、小谷野陽子(富士ツバメ)、菅英樹(ミライフ)、
高山陽子(冨士クラスタ)、矢部元法(事務局長)、中川順一(事務局。ノラ・コミュニケーションズ)
感染第2波のBCP策定が必要
事務局 「緊急事態宣言」により本会の4月例会は中止しました。その後、6月例会も中止しています。8月5日の定時総会は実施予定で、今回の事態を受けた今後のLPガス事業のあり方などを検討する講師選定をしていきます。また、業界人からのご意見等を多数集めていきたいと考えていますが、まずは皆さんの会社の「宣言」期間中の対応はどのようでしたか。
牧野 当社はショールームを閉鎖しました。また本社1拠点ですから、3つの建屋を3営業所とみなして相互接触を遮断しました。トイレ等の共有スペースも区分し、会議はZoomを使いました。来客はお断りし、客先訪問も極力やめました。
小谷野 当社も時差出勤や出張の禁止など行い、また事務所内は急遽間仕切りをしたりして、3密回避対策を行うなどしています。
菅 営業面では、直売のお客様訪問と同様、卸の販売店さん訪問でも、お客様から「来てもいい」と言われてから行く、という態勢です。小規模な販売店さんの場合、感染者が出たら動きが取れません。幸い、そういう事態はありませんでしたが、そういった場合の支援も想定しなければなりません。
牧野 当社は計画業務はすべて先送りにしました。交代勤務で人のシフトも大変なようですが、業務量を減らしました。そのことは、営業面では打撃で、器具販売の売上では苦戦しています。感染第 2 波は相当大きいという説もあるようです。パンデミックを想定したBCPという視点は少し軽視していた感がありますので、BCP 策定について現実を前にしながらやっているとも言えます。
5月20日開催幹事会確認事項
- 6月例会は中止
- 8月5日総会・例会は開催 詳しくはこちら>>>
- 会場定員を設定(30 名)し参加者人数制限
- オンライン参加を呼びかける
- 業界人アンケート実施
- オンライン例会の開催を検討
非接触型の接点強化のしくみづくり
高山 当社も本社業務はテレワークですが、事業所ごとの対応では、感染者が出たことを想定した業務体制も検討しました。こうしたことへの業界各社の対応については、広く情報を集めて自社の対応のあり方を考えたいと思っています。
中田 当社の各事業所からの報告を見ていると、「訪問禁止」となっている会社でも、先方担当者がどうしても会いたいと、近くのファミレスで商談ということもあるようです。今回のことで、オンライン会議を使うという事業者がとても増えています。ただし、オンライン会議の場合、事前の準備をしっかりやらなければなりませんから大変です。
事務局 一般顧客への営業でも非接触型が増えると考えられますか。
牧野 リフォーム業界では「オンライン商談をやります」というところがたくさん出ていますね。実際にどれだけ行われ、どれだけ営業効果があるかはわかりませんが、PR材料にはなっています。「宣言」中の、なるべく人に会わないようにするという感覚は、感染収束後も残るのではないかと思います。
事務局 「宣言」解除後には切替セールスが増えるのではないかという懸念もあるようですが。
牧野 大手切替業者はすでに非接触型の切替セールスをはじめていますね。Web を利用したイベントなど。これからは、接触型と非接触型の使い分けや組み合わせが必要でしょう。
切替対策や料金問題対応も一層重要に
事務局 宣言下の自粛で飲食業界は大きな打撃を受けました。製造業も世界規模の景気低迷でこれからもっと大変になるのではと懸念されています。一方で、LPガス業界では上場大手が「空前の好決算」だという報道も出てしまっていますし、輸入価格が大幅に下落しているのに料金は下がっていないという記事も出ています。
中田 料金問題はまだ一部の業界紙で報道されている段階ですが、今後、電力や都市ガスの原料費調整と値下げが出そろったあたりで、LPガス業界への風当たりが強くなることは予想されます。
事務局 8月例会では、そのあたりもテーマにした講演依頼を予定します。また、ソーシャルディスタンスの観点から、会場参加の人数制限やオンライン参加も進めます。
牧野 今回のことでオンライン会議が定着するでしょう。事務局もそれに対応した新しい会の運営を進めてください。
8月5日総会・例会でのテーマ コロナ後のLPガス業界を考える
- 緊急事態宣言下での各社の対応から、コロナ後の組織・業務、経営のあり方を検討する
- コロナ禍で多くの業界が疲弊しているが、LP ガス業界は「仕入れが下がって空前の利益」という見方がある
- 「仕入れが下がっているのに値下げをしない」という論調で、業界叩きの火をつけようとする動きもあるので、料金 問題への対応は一層重要となる
- 緊急事態宣言解除後は、3月末の全国拡大直前の山梨等のようにブローカー活動が増える懸念がある
- 秋以降の感染拡大の再発に備えたBCPや「非接触接点強化」のしくみづくりも必要
タスクフォース21の今後の活動
- 例会・会合については緊急事態宣言解除後も感染拡大防止を最優先としていく
- 従来からの Web 同時中継のほか、オンライン参加スタイルを採用する
- 「見逃しチャンネル」(会員向け。過去の講演の録画公開)の充実、オンライン例会(当面はZoom利用)の開催など、Web・オンラインを利用した活動を展開する
幹事会にオンラインで参加しませんか
幹事会、オンライン幹事会には、正会員であればどなたも参加できます。定例幹事会は隔月(奇数月)第1水曜日、オンライン幹事会は案件発生時に随時開催します。 詳しくは事務局(task@noracomi.co.jp)までお問い合わせください
2019年12月
多発化・激甚化する自然災害
「被災したお客様への対応」「応援・受入れの費用負担」の共通ルール化
“ 忘れたころにやってくる ”とされてきた自然災害。でも、近年は多発化・激甚化する傾向にあり、昨年の大阪北部地震、西日本豪雨、北海道地震に続き、今年は台風15号、19号の来襲、さらに21号にともなう大雨など、大きな自然災害が相次いでいます。私たちLPガス事業者間でも、被災したお客様に対するLPガス料金の徴収、保安点検・修理費用といった災害対応の共通ルールのあり方を本格的に考えるときにきているのではないでしょうか。また、同様の視点から、災害時の応援・受入れ体制についても費用負担の共通ルールをつくっておくべきではないでしょうか。
大災害直後の「特別措置」は……
今年も15号、19号、大雨襲来で深刻な被害
今年、我が国本土に上陸した5台風のうち、記録的な強風をともなった15号(9月8~99日)は、千葉、神奈川両県に大きな爪あとを残し、多くの住宅が屋根を飛ばされました。また、鉄塔・電柱・樹木がなぎ倒され、最大93.5万戸が停電。復旧に17日
間もかかるとともに、その間断水も続きました。
北に長く伸びる厚い雨雲をともなったスーパー台風、19号(10月12~13日)では、東海・関東から東北にかけて記録的な大雨が襲い、71河川 135カ所で決壊、271河川で越水が発生。損壊・浸水住宅は8万件近くに及び、死者・不明者は100人近くに達しました。(一社)全国LPガス協会や経済産業省によれば、6充填所が浸水、また600本以上のLPガス・高圧ガス容器が流出・埋没した模様です。
千葉県などはさらにこのあと、大雨にも見舞われました。
素早い都市ガス・電力、LPガスはN社が…
これらの災害で、お客様に加え、自社まで被災したLPガス事業者も少なくないと思われます。そうした中、都市ガス・大手電力は、19 号に災害救助法が適用されたことを受け、「お見舞い」などとともに、経済産業省から認可を得た「料金等の特別措置」を周知しましたが、被災地にお客様を持つLPガス大手の対応はどうだったでしょうか。
各社では自社ルールに基づく被災者対応を徹底されているのでしょうが、HP上では「お見舞い」や「電気料金の特別措置」などを掲載したケースこそ散見されたものの、LPガス料金などに関して特段の措置を講じた動きは見られませんでした。
そうした中で際立ったのは、大手Nガスが載せた「都市ガス・LPガス・電気料金の特別措置」の周知でした。
Nガスの周知は、被災したお客様から申し出があった場合、関東経済産業局への申請・認可を踏まえ、ガスについては①料金支払い期日の1カ月間延長(10*~ 12月分)、②不使用月のガス料金の免除(基本料金、6カ月間)、③臨時工事費の免除(~12月末)の3措置を講じるという内容でした(*:災害救助法適用日以降)。
ちなみに、昨年の西日本豪雨では、広域大手の中国エリア会社が、被災し申し出たお客様に対し、①ガス支払い期日の1カ月延長(7~8検針月)、②不使用期間の基本料金の免除、③損傷配管工事費用の免除といった、ほぼ同様の特別措置をHPなどで周知して講じました。
東京ガスも、臨時工事費免除・支払い期限延長など周知
これに対し、今回の19号で東京ガスが講じた特別措置も、被災したお客様から申し出を受けた場合に、災害救助法の適用地域のお客様については、適用時点でガス契約を締結しているときは、①臨時ガス工事費の免除(~ 12 月末)、②ガス料金支払い期限の1カ月延長(9*~11月検針分)、③不使用期間の基本料金の免除(6カ月間)を実施(*:同)。被災による転居等で新たにガス契約を締結するお客様は、10~11月使用開始分のガス料金支払い期限を1カ月延長するとしています。
同社HPではほか、他ガス小売事業者と契約し被災したお客様に対する「当社供給区域でガス供給する託送供給依頼者への対
応」も周知しています。
同様の特別措置の周知は、通信大手(固定通信サービス)やNHK(放送受信料)などでも行われ、広く共通ルール化されているように見えます。
全L協、「事業者個々の判断によるべき」
こうした動きに対して(一社)全国LPガス協会では、国の認可対象である都市ガス・電気料金の「供給条件の変更」と違い、「LPガスは基本的に自由市場にあるので、被災したお客様に対するガス料金の支払いや復旧に向けた臨時工事費は、事業者個々の判断によるべきもの。独禁法などの観点からも、猶予期限を設ける・設けない、費用を徴収する・しないを業界団体が方向づけるのは望ましくない」との考え方にあります。
それゆえ、全国業界の動向も把握されてはおらず、現在は「現状を見守る」というスタンスに立っているようです。
しかし、業界団体、事業者間での競争制限的な行為に法的な制約がかかるのは当然ながら、都市ガス・電力業界などで一般化している特別措置をLPガス業界でも共通ルールにすることが、果たして競争制限的な行為のひとつと見なされるものなのでしょうか。
また、LPガス業界の現在のようなスタンスを、お客様側から見ればどのように映るでしょうか。仮に、結果として都市ガスなどと同じような対応を徹底していても、各販売事業者のHPからは見えてこないので、業界全体のイメージアップにはつながりませ
ん。また、各社ばらばらでは、それらの措置の違いが疑問視されかねません。
そうした一方では、自社・自宅も被災しながら、料金の未払いや無償工事にさらされ、苦境に陥ったケースも少なくないと思わ
れます。
大きな自然災害は、結果として、LPガスの優位性を広く認知してもらうことになるはずです。だから、私たちはむしろ進んで、
LPガス業界の被災者対応措置を共通ルール化し、お客様の安全・安心とお客様からの信頼向上へとつなげるべきではないでしょうか。
応援・受入れ体制は…
災害対応マニュアル…費用には明確に触れず
LPガス業界の災害対応で、同様の観点からもうひとつ課題となっているのが応援・受入れ体制です。
経済産業省・高圧ガス保安協会の「LPガス災害対応マニュアル」では、全国的な応援・受入れ体制の整備にあたっては、「応援隊は応援活動を行う間の宿泊、食事等の手配は、被害地域では対応することが困難であることから自ら手配、または持参する」とともに、「不慮の事故に備えて保険に加入すること」と記載。また、「応援活動に要する工事、応援活動における事故に関する保
険等の費用負担のあり方について中央団体等が主となり予め協議しておくことが望ましい」としています。
しかし、応援者の心構えや応援者が持参する物資等、災害応援者受付表(県内)、同(県外)は例示しているものの、費用面はそれ以上触れていません。
これに対し、都度大規模な災害対応派遣を迫られている都市ガスは、(一社)日本ガス協会が指針を提示。たとえば、救援費用の負担については「救援事業者が要した費用のうち、その社員・職員の人件費(基準外給与を含む)はその事業者が負担し、それ以外(宿泊費、資機材、業務委託先の人件費など)は、被災事業者が負担する」などと方向づけています。
「LPガスは災害に強いエネルギー」ですが、それとともに「災害に強いLPガス供給・防災体制」が構築されていなければ、真の評価にはつながりません。南海トラフ地震などが想定されている中、費用負担は表立って論議しづらいからこそ、それらを含めた即応体制の確立も急がれています。
LPガスの防災力アップは、新たな飛躍への布石づくり
災害対応バルクの前年度比3.3倍という2020年度予算概算要求は、国のLPガス業界への期待度の大きさを反映しています。私たちには今、学校空調の促進、企業へのBCP提案と並行して、都道府県協会・支部というヨコ組織と、元売・卸売・小売というタテ系列、またそれらの協力体制で防災力を拡充していくことが強く望まれています。
また、こうした取り組みの推進にあたっては、防災力の向上が平時にも付加価値をもたらすよう、LPガスによる独立分散供給がゼHなど国が進める地産地消、脱炭素社会への布石になることを広く呼び掛けていく姿勢も求められています。
LPガスによる防災力の拡充は、実は、LPガスの優位性を広く訴求し、新たな飛躍につなげる取り組みであることを、私たち自身がもっとしっかり自覚し行動すべきであると言えます。
2019年10月
学校空調特需、1~7月のGHP出荷は3割増
電気・ガス空調市場は、2018 年の酷暑特需(電気)に続き、この 2019年は文部科学省補助金による学校空調特需に沸いています。そのヤマ場でもある1~7月の出荷実績(日本冷凍空調工業会調べ)を見ると、圧倒的な電気市場の下で、電気のEHP(パッケージエアコン)が前年同期比 12.7%増、家庭用が 0.2%増であったのに対し、ガスのGHPは 30.5%と高進しています。LPガス業界紙が1~6月の公立学校向けの出荷数をGHPメーカー各社に聞いたところ、総数は 5,732台に達し、うち 14.7%にあたる 843台がLPG仕様であったということです。
岡崎市24校、飯田市・泉佐野市各18校、多治見市14校…
こうした健闘ぶりは、全国LPガス協会がまとめた「公立小中学校へのGHP導入提案成功数」でも明らかになっています。
昨年夏以降に提案活動が行われた15都府県・27市区町村(788校)のうち、3~6月中に納入が決定したのは計181校。設置校数が多いのは、愛知県岡崎市(24校)や岐阜県多治見市(14校)、東京都八王子市(13校)、長野県飯田市(18校)、大阪府泉佐野市(18 校)など。納入校は今後さらに増えてくる見通しにあります。
成功事例の背景に「防災協定」「最後の砦」「積極的な提案活動」
提案が成功したケースを見ると、①災害時の防災協定を締結している(LPガスを優先的に応急供給、全国1,787自治体のうち95%が締結)、②LPガスが「災害時のエネルギー供給の “ 最後の砦 ”」に位置づけられていることが認識されはじめている、③市長など行政トップと、教育委員会や危機管理、防災担当部局などに積極的に働きかけた、④独自のパンフレットや資料をつくって、LPガスの優位性を具体的にアピールしたことなどが奏功しています。
一方、これらの学校空調をバネに、GHPを体育館や給食室などへと拡大していく取り組みは、体育館は泉佐野市で18校(前出)への納入が実現したもの、ほかは2市区・2カ所だけ。給食室も八王子市で12校に納入されただけで、これまでのところはあまり成功事例があがってきていません。
空調未設置は公立学校の半数、追い込み強化を
避難所に指定されている公立学校は、総数3万3,638校の92%にあたる3万994校。また、空調が設置されている公立学校は総数の42%(2017年4月)。つまり、50%ほどの公立学校は空調設備が導入されておらず、文科省は児童の熱中症を防ぐために、全 38 万教室のうち 17 万教室への設置を急いでいます。
これまでに明らかになった設置実績はまだ一部。ガス業界の全国的な取り組みが、後半戦でどう成果となって表れるか注目され
ます。
2018年9月
9月幹事会での討議事項
異業種の状況から、ガス業界の今後を考える
9月5日に開催された幹事会では、「LPガス業界が、いま検討すべきことは何か」を踏まえた、本会の講師選定について討議しました。前号で掲載した活動方針にも関連しますが、フリートークの中で、異業種の状況からガス業界の今後を考えることが大切だという視点から、次のような話題が出ました。
1つ目は、深刻化する人手不足への対応として、LP ガス業界も外国人労働者の雇用を考えざるを得ないのではないかという考え方。看護・介護などの業界が、資格業務での外国人受け入れをどのようにしているのか、問題点も含め情報収集をすべきだろうということです。
2つ目は、Amazonなどネット・通信販売が普及・台頭する中で、LP ガスの通販はあり得るのかを考えるべきだということ。生鮮など、従来は「できない」とされたものもできるようになっている現実を受け止め、異業種からの参入前に検討しておくべきではないかという提案です。これまでのネット勧誘だけでなく、通販による質量販売についても検討課題にならないか、考える必要があります。
3つ目は、レンタル・シェアビジネスが盛んになる中で、機器・設備レンタル契約のあり方も、従来の需要促進の視点からだけでなく、顧客ニーズに応えるサービスとしてビジネスにできないか、ということ。
そして4つ目は、需要開拓のツールである衣類乾燥機の話題から、大きく変容したコインランドリー業界について、その“ 進化”を情報収集し、消費者ニーズの変化を理解すべきではないかというもの。
以上について、関連業界人や専門家を講師として招き、直接お話を聞く機会を作っていくことを確認しました。
マスコミ報道を受け止め、LP ガスを正しく伝えていく
「携帯電話料金は4 割下げられる」と政治家が発言したことが話題になっています。報道のされ方によっては、携帯電話会社は料金値下げに踏み切らざるを得ない状況となります。携帯電話会社の料金設定が法外に高いものであるかどうかは、多くの一般消費者にはわかりません。言い換えれば、高いか安いかは、マスコミの報道によって知るのだとも言えます。
携帯電話に比べてはるかにマイナーであるLP ガスの場合、マスコミに登場することもわずかです。しかしながら、過去には私たち業界側が予期しない形で報じられることもたびたびありました。そのような中で、9月2日、毎日新聞に次のような記事が出ました。
【エネ庁】LPガス全国調査へ 利用料金「不透明」上乗せも
液化石油ガス(LPガス)を利用する賃貸アパートなどの居住者が不透明な料金を払わされているケースがあるとして、資源エネルギー庁は月内にも、消費者を対象にした初の全国調査を実施する。同庁は、業界の一部業者が営業経費を上乗せして「ガス利用料」を請求しているとみている。同庁は業界に是正を求めており、実態調査を通じて消費者に注意を促す狙いがある。
関係者によると、業界はバブル期の1980 年代から競争が激化し、アパートなどの物件所有者にガスボンベを置く見返りとして、各戸に設置する給湯器や冷暖房機、インターホンなどを無償提供するサービスが慣習化した。かかった経費をガス利用料に上乗せし、居住者に請求する業者も多かったという。
そうした商慣習の是正を図り、同庁は2017年2月に液化石油ガス法の省令の一部を改正。業者はLPガスの標準的な利用料金を公表する、LPガスの利用料金以外は請求書に「冷暖房機使用料」などと分けて明示する--ことなどを定めた。今回実施する調査では、請求書に明細が記載されているかなどを消費者に確認する方針だ。
かつてガス利用料に営業経費を上乗せしていた関東地方の業者は「LPガスは高いというイメージが奏功したのか、多少上乗せしても、ほとんどの人は不審に思わなかった」と明かす。別の業者も「契約が不透明と分かっても、それを理由に転居する人は少ない。居住者は弱い立場にある」と話した。
同庁が不透明な契約の是正に動くきっかけになったのは電力(16年4月)と都市ガス(17年4月)の小売り全面自由化だ。
LPガスと都市ガスの利用世帯数は拮抗(きっこう)しているうえ、災害時の復旧の早さの面などからオール電化も注目されている。競争が激化する中、同庁は「LPガスの不透明な商慣習は消費者の信頼を損なう。業界にとってもマイナスになる」と判断し、調査に乗り出すことを決めたという。
実態調査は全日本不動産協会など関連団体などを通じ、賃貸アパートなどの入居者に実施する。改正省令が施行された17年6月以降の契約が対象になる見通しで、同庁は「実態調査に加え、入居者に注意喚起する契機としたい」としている。
エネ庁の方針もあり、今後もこうした報道が他紙でもなされることが予想されます。業界側としては、こうした悪弊は不動産業界やオーナーなどにも責任の一端があると主張したいところですが、記者側はどうとらえているのでしょうか。報じられた内容にただ反発するのでなく、報じる側とも情報交換し、積極的に業界情報を発信していくことも大切だと考えます。その趣旨から、マスコミ関係者の講師招へいや情報交換も積極的に行っていきます。
2018年8月
平成30年度事業計画
事業方針
「タスクフォース21」は、ガス体エネルギー事業者の情報交換の場です。業態や取引系列、地域や競合状況を問わず、会の「理念」に賛同した事業者を参加メンバーとする「入退会原則自由」のフォーラムです。
「タスクフォース21」の理念は、「ナレッジを積極的に開示し、オープンな議論を呼び起こし、新しい競争のあるべきモデルを共同で作り出す」ことにあります。
例えて言えば、業界経営情報の「リナックス」=オープンソース型ナレッジ形成プロセスです。相互の情報を交換し、業界としての共有財産を作り、利益を共有する。情報を開示して自らが利益を受けることを目的に、1社でできないこと、1地域でできないこと、1系列でできないことを検討・共有していく場です。
上記理念の下で、本会は平成30 年度において以下の事業を実施していきます。
平成30 年度事業計画
- 取引適正化への対応を検討します。
エネルギー自由化が進展する中で、LPガス業界は取引適正化・料金透明化を求められています。
タスクフォース21 では平成30 年度も取引適正化への対応をテーマに、ガイドライン対応や料金透明化問題にも積極的なアプローチ・検討を行ってまいります。 - 刻化する人手不足への対応を検討します。
- 物流合理化・協業化や業界再編の動きにも対応と分析・検討を行います。
- リフォーム事業への取り組み強化や省エネ住宅への対応を研究します。
- Webを利用した情報発信を推進していきます。
事業計画の補足説明
過去に縛られず「これからの料金」を考える
本会の平成30 年度(2018 年度)の事業計画は、上記の通りです。
まず「取引適正化」については、昨年来の行政による料金の透明化と公開への要請にどう対応していくかが、販売業界各企業の喫緊の課題となっています。
料金が不透明であると、消費者=社会の信頼を得られず、事業の発展を阻害することは言うまでもありません。しかしながら、自由競争の商品・サービスについて、行政が過度に介入することはいかがなものかという指摘もあります。
「明解な料金」=「単一料金」という短絡も、ビジネスの世界では「正解」とは言えず、「値決めこそが経営」という考え方からすれば、企業が価格についてさまざまな観点から工夫して提示することはむしろ健全なあり方だと考えます。
「LP ガスの料金は不透明である」という指摘が出る根本的な問題は、料金が複数あり、そのことが隠されている点にあります。1つの商品に複数の料金があることは、世の中のあらゆる商品を見渡したとき、決しておかしなことではありません。
LP ガスの場合、客先ごとに使用形態が異なり、配送や容器タスクフォース21平成30年度事業計画設置条件など供給方法も千差万別です。売る商品は同じでも、売り方が異なれば料金が違うのは当然で、個々に異なる状況の消費者に均一の料金を押し付けることのほうが、かえって不公平でしょう。
複数の料金は悪くない。悪いのは「複数あることを隠す」ことであり、「条件によって異なる」としながらも適用基準を明確に説明できない点にあります。
キャンペーンの値引きについて、その割引率を論理的に説明できなくとも、「キャンペーン割引」という説明はできます。
行政が求めているのが「説明できる料金」であるならば、料金をメニュー化し、適用基準を明確にしていかなければなりません。また、透明化と公開により料金の引き下げを意図しているのであれば、「どのような契約条件であれば」お客様により有利に(安く)販売できるのかを研究し、それを提示していくことが、顧客満足を高める営業施策となるでしょう。
行政の指導に従うことは事業者としては当然のことですが、一方で経営においては、自らの創意工夫で料金も含めた売り方を考えていかなければなりません。時代状況が変われば消費者の感覚や意識も変わり、当然売り方も変えなければなりません。現在は評判が悪い「相対交渉による料金決定」も、AIが進化すれば、客先の使用形態や供給方法などの条件設定により、「100 戸に100 通り」の料金表が発行されても、それを「不透明だ」とする批判は出てこなくなるのではないでしょうか。そんな「これからの料金」を、異業種の事例も学びつつ、過去に縛られず考える場をつくっていきたいと考えています。
人手不足問題の根本解決をめざす
人手不足が深刻化しています。求職に対する求人の割合を示す有効求人倍率は1.6 倍となっており、これは44 年ぶりの高率です。バブル時代や高度経済成長期なみの状況です。要因としては生産年齢(15 ~ 64 歳)の減少がまずあげられ、これは景気動向だけで解決できる問題ではありません。
すでに従業員不足や後継者の不在で、事業を継続できなくなり、自ら会社をたたむ廃業や人手不足倒産も増えています。帝国データバンクが発表した今年上半期の「人手不足倒産」の動向調査によれば、2018年上半期(1~6月)の「人手不足倒産」は70件発生し、負債総額は106億7,700万円にのぼるとのことです。
倒産件数は3年連続で前年同期を上回り、調査を開始した2013年1月以降、半期ベースで最多となり、年間合計で初めて100件を超えた昨年2017 年の106 件をさらに上回る勢いとなっています。
業種別では「サービス業」「道路貨物運送」「老人福祉事業」「木造建築工事」「受託開発ソフトウエア」が目立っているようです。
LPガス業界各社も、人員確保に頭を悩ませている会社が少なくありません。もともとキツイ仕事と言われているLPガスの配送業務ばかりでなく、営業や検針、一般事務にいたるまで、すべての部門・業務で「人が集まらない」状態となっています。
人を集める=求人のための具体的な方法、集めた人材を定着させるための様々な施策=人事制度や教育、ES(EmployeeSatisfaction =従業員満足度)向上へ取り組みなど、あらゆる角度から講師、事例、専門機関のプレゼンテーションを選定していきます。
ES 向上が必要であることは多くの経営者が理解しているものの、折からの「働き方改革」の諸制度への対応が企業の人員難に拍車をかけかねないことも悩ましい問題です。
これからの人手不足対策は、単に人を多く集め、辞めさせないようにするだけでなく、合理化・システム化を徹底させて労働効率を上げ、さらにCS(customer satisfaction =顧客満足)とES の同時実現をめざすところにありそうです。
本会では、こうした視点で、ガス業界内だけでなく、むしろ異業種の事例研究を徹底的に行うことで、人手不足問題の解決策を見い出していきます。
協業・再編・業態変革
本会正会員の三愛石油、ミライフ(シナネン)と、ミツウロコ、三ツ輪産業、橋本産業の5社は、関東エリアのガス配送・充填業務で提携し、10月1日をめどに共同出資会社を設立すると発表しました、各社の事業所や充填所を統合して物流の効率化、コスト抑制を図ることが目的で、各社20%ずつ均等出資するとのことです。新会社は約100万軒、年間約25万トンをカバーする広域物流会社になり、出資企業をさらに募るとしています。
幹事会では出資企業に対して、新会社の構想や参加について可能な範囲での情報提供を依頼しているところです。
物流の合理化はコスト削減や人手不足対策といった喫緊の課題解決のためには必須であり、同時にLPガス事業の今後のあり方、事業や業務の形態を考えるうえでも、最重要の検討課題の一つでしょう。今回の新会社設立以外にも、地域やグループでの協業化、共同化などはますます増えていくものと考えられます。
また、流通の川上から川下に至るまで、「再編」は今後も必然的に行われていくでしょう。そのことによる影響と、業界内の競争と協調のあり方もテーマアップしていくべきと考えています。
本業の合理化や協業・再編の検討が進めば、自社の業態変革の検討もより具体的に進めていかなければなりません。本会ではこれまでもLPガス販売事業者の業態変革のための情報提供に努めてきましたが、今年度は特に、会員各社が注力する「住宅リフォーム」についてのテーマアップを進めていきます。
2018年6月
LPガス販売事業者の新ビジネスの検討
NHK受信料契約の代理店
NHKが受信料の新規契約や料金徴収の代理店を募集しています。
この情報を入り口に、タスクフォース21 が進める「LPガス販売事業者の新ビジネスの検討」について、整理してみます。
NHKの呼びかけは「貴社の新ビジネスとしていかがですか?」というもの。早速、問い合わせたところ、ガス会社が本格的にやっている例は把握されていませんでした。ただし、入退去に伴う住所変更の連絡情報を提供してもらう契約を結んでいる事業者は存在するようです。この契約は、多くの不動産業者や引越業者などが結んでいるそうです。
タスクフォース21事務局として、この代理店募集についてNHKに問い合わせたのは、次の動機からです。
- LPガス販売事業者の新規ビジネスとなる可能性はあるか
- 切替ブローカーなどが代理店となった場合、厄介なことになるのではないか
ということです。
後者の懸念についてNHKの担当者に業界事情などを踏まえて伝えたところ、
- NHK が受信料業務用に提供する個人情報の利用規定は厳格である
- 受信料業務で訪問し、他の商材を販売することは禁じている
といった内容の説明がありました。しかしながら、現在生じているガスや電気の切替での悪質業者の動向については、あまり情報がないようでした。
NHKにはタスクフォース21 例会での担当部署によるガス業界向けのプレゼンテーションを依頼しました。NHKも地域密着のLPガス販売業界に対して大いに関心を示し、プレゼンテーションについて前向きに検討するとの回答を得ました(5月10日時点)。
会員企業をはじめLPガス販売事業者が、この事業に取り組むかどうかは、プレゼンの内容、提示される条件等により判断されると思いますが、以下の観点で「契約もアリではないか」と考えます。
- 仮にブローカーが代理店となる可能性がある場合は、先行して既存の「まともな業者」が契約すべきである
- 公共放送であるNHK からの業務受託は企業イメージを高めることにつながるのではないか
- NHK が持つ受信料徴収の長年のノウハウが業務支援として提供されることは、営業力を強めることにつながるのではないか
…などがその理由です。
一方で、NHK 受信料について強い拒否感を持つ人も少なくありません。その業務を行うことがお客様との関係性維持の面でリスクとなる、とも考えられます。もっともこれについては、「知っている人(会社)」が受信料契約を求める場合は拒否感も和らぐのでないかとも考えられますし、会社と顧客の距離感を図るバロメーターにもなると言えないこともありません。
新しいビジネスを探す
NHK が代理店を募集するのは、徴収人の高齢化や人手不足が、特に地方において深刻化しており、その仕事を組織で代行する会社を求める必要が生じたからです。代理店となっている会社の中には水道検針業務を行っている会社もあるようです。自治体が行う水道検針は入札制で、業務が毎年継続するとは限りません。そのような事情もあり、余剰人員が生じた際の保険といった観点で、この仕事に手を挙げている例もあると考えられます。
では、LPガス業界では「余剰人員」が生じているかというと、それは一般的には考えにくいと思われます。むしろ、昨今の人手不足の余波はこの業界にも波及しており、多くの事業者が営業マン、検針員、配送員などの新規募集で苦戦し、高齢化も進んでいます。
検針業務については、省力化の観点から集中監視システムに対する関心が再び高まっています。もちろん、省力化ばかりでなく、ガス使用量の計測をIoT の一部とする考え方でシステムも大きく進化しています。これについては、本会の例会でも、幹事会社である東洋計器様からプレゼンテーションをしていただくことなっています。
重労働であるガス配送員の確保はより深刻です。ガスが充填された50kg 容器の重さは100kg になります。容器の軽量化だけでなく、従来のバルクシステムよりもっとコンパクトな軒先充填の登場が待たれています。
労働力の確保、そして有為な人材の採用と育成は、本会の今後の重要なテーマであるという認識も、幹事会で語られたところです。
いずれにせよ「人が余るから他に何か仕事を探す」ということは、今後は考えにくくなると思います。本業でさえ人手が足りないのに、さらに人手を割く新事業など、とても手が回らないという判断もあるでしょう。
しかしそれでも、新事業の検討は必要だと考えます。
LPガスの利用世帯や消費量が、今後劇的に増えるということは考えにくいということは、業界人の共通認識でしょう。どの企業も「ガス単品依存からの脱却」を模索しているのは、企業の存続のため、ガス以外の新しい事業の柱を探しているからです。「将来にわたり企業を維持する」ための仕事探しは、本会の大きなテーマの一つです。
新規事業は、まったく畑違いのところに行くよりも、現業に近いところからはじめるべきだという考えが、いわば「定説」のように語られています。現業に近いところであれば、自社にノウハウがあったり、強みを生かすことができるからです。
では、「現業に近いもの」とは何か。LPガス販売事業者の「現業に近いもの」と言えば、やはりエネルギーや住宅設備に関係するところでしょう。電気や都市ガスなど他エネルギーの契約業務や販売・サービス、水道・水回り、あるいは家電や照明など生活インフラの機器販売や工事、メンテナンス、その発展形としての住宅リフォームなどが考えられ、既に多くのLPガス販売事業者が取り組んでいます。
ただし、「現業に近いもの」であれば成功し、収益に貢献するということには必ずしもなりません。魚屋がお刺身を売るなら、一緒にワサビも置けば売れるでしょうし、お客様にとっても便利で親切です。しかしワサビで利益を出すのは大変です。刺身のツマや醤油や皿まで置くのか、魚をフライにして総菜も売ることで食品スーパー化すれば儲かるのか、そのあたりの判断は慎重を要します。
本会ではこうした事業の成功事例と失敗例や、各種ノウハウの提供を例会の場で行うため日々、情報を集めています。
LPガス販売店の営業力
LPガス販売事業者の新事業への取り組みということで振り返ってみると、本会会員の多くは、10年前のオール電化攻勢激化に対応し、「オール電化も取り扱う」選択を早い時期に決断していました。「お客様はガスが欲しいのではなく、風呂に入りたい」という消費者視点で考えたとき、電化を求めるお客様のニーズにも応えるべきだ、という判断でした。また、電化に敵対し、全面否定している店には、多様なお客様の声は届かない、という考えもありました。「高くても見栄えのいいIHクッキングヒーターの購入を考えるお客様が、最新式のガスコンロの良さを理解するお客様なのだ」という仮説もありました。
「電気もガスもあります。比較して選んでください。どちらも責任を持って販売します」という店が、お客様に選ばれ、勝ち残るのだろうと考えたのです。
当初はさまざまな意見があり、「オール電化阻止」を叫んでいた業界人の中には「電気を扱うのは裏切りだ」という人さえいました。また東日本大震災により一時的に電力のイメージが大きく悪化しましたが、結果として「電気もガスも扱う」選択について、現在、反対する人はほとんどいません。オール電化機器、家電商品、太陽光機器などなど、家庭用エネルギー機器より広範に扱うことが、顧客の支持を得るという点についての異論はないところとなっています。ただし、商売として成功しているかどうかは、事業者によってまちまちです。
かつて、LPガス販売店がオール電化を取り扱うことについて、電気工事業者などは自社のテリトリーが荒らされると警戒しました。震災前、オール電化は大きなマーケットになるとみられており、せっかくの市場を、LPガス販売店が参入すればみんな持っていかれると心配したという話です。なぜ、LPガス販売店の参入が脅威なのか、ある電機メーカーの会合で、「これ以上、LPガス販売業者にオール電化を売らせるな」と言ったある電気工事業者は、その理由を次のように言っていました。
LPガス販売業者は「水」ができる。しかも「営業力」があり、それらになんといっても「客」を持っている、と。
これについてLPガス販売業者の側は、どう考えるでしょうか。確かに「水」はできます。キッチンやバスの設備や機器を扱うLPガス事業者は、水の設備の扱いにも慣れています。ところが、電気の業界、街の家電店などでは、「水回り設備や工事はできない」という例が少なくないのです。
でも、その後の「営業力」についてはどうでしょうか。電気工事業者は、LPガス販売事業者の社員が、客先をよく訪問し、お客様とよく話しているという姿を見て、「営業力」があると感じているようです。確かに検針や配送、保安点検などで定期的に訪問していますが、そこで「営業」をしているかとなると、決してそうではないということを、業界人であれば誰でも知っています。LPガス事業に営業力がある、というのは、残念ながら電気工事業者の大きな誤解です。
そして最後の“「客」を持っている” は、完全に的外れです。LPガス販売事業者はガス供給の固定客を持っていますが、だからといってわざわざ自社のガス客を積極的にオール電化にするなどということはしません。LPガス販売事業者がオール電化を扱うのは、もし自社の供給先で電化を望むお客様がいた場合、まず相談してもらい、どうしても電化ということであれば自社で工事する。ガスの取引がなくなっても電化で取引口座は残す、という判断での選択だからです。
オール電化の機器や工事を扱うLPガス販売業者は、いまや珍しくはありません。あるLPガス販売業者は、「うちは営業力はないが工事には自信がある」と、オール電化や太陽光発電の取り付け工事をどんどん受注しています。その店は、ガス客は切替などもありなかなか増えないが、「工事」で生き残る道を選択しているようです。
「強み」を活かした新ビジネス
本会では異業種のビジネス提案、アライアンスのプレゼンテーションなどを積極的に行っています。フランチャイズや代理店募集といった情報があれば、そのビジネスを調べ、LPガス販売事業者の新しいビジネスとなり得るか、会員の皆さんに可能な限り情報提供したいと考えています。
ただ、異業種の人は前述の電気工事業者と同じで、よく「LPガス販売事業者は客を持っているのが強み」と言います。確かに供給設備を貸している多くのお客様がいますが、果たしてそれだけをもって「客を持っている」と言えるのでしょうか。LPガスの顧客争奪戦が激しい地域の販売事業者であれは「俺の客だ」と言っているのは愚かな事業者だけで、当のお客様はそのLPガス販売事業者の客だなどとは少しも思っていない、ということをよく知っています。
訪問販売のプロと称する人の中には、「自分たちは玄関さえ開けさせればいくらでも売れる。台所から入れるLPガス販売事業者がうらやましい」と言いますが、モノを売りつけないから、点検で家に入れてもらえるということも事実でしょう。それに、「ガス屋さん、よくきたわね」といって家に招き入れるお客様は、現在ではほとんどいないと考えていいでしょう。
そう考えてくると、LPガス販売事業者の「強み」というのは、「ガスの供給先がある」ということだと思うのは誤った判断をしかねないと考えるべきではないでしょうか。
宅配水を展開する大手ガス事業者は、宅配水の顧客やエリアは、自社のLPガス販売の顧客やエリアとはまったく違うと言っています。リフォーム事業を拡大するLPガス販売事業者も、リフォームは自社客か否かとか、LPガスか都市ガスなどは一切考慮せず、エリア展開をはかっているといいます。
もちろん、供給契約を結び、ある程度固定化された顧客がいることは他業種にはないことですが、それ以外にもっと特徴的なことがあるのではないか。異業種にない特徴的なことを自覚し、磨き、さらに活用することで新しいビジネスが生まれるのではないかと思います。
前述の宅配水で成功した大手ガス販売事業者のオーナーは、創業以来ガスの配送効率の向上にいろいろ取り組んでおり、日頃から「わが社は物流業者だ」と言っていました。その自社認定とノウハウとが、宅配水事業を成功させていると言えるのではないでしょうか。
LPガス販売事業で特徴的なことを考えてみると、まず「宅配・定期訪問」「顧客管理・期限管理」「24 時間体制」などがあげられます。この分野を活かせるビジネスはないか。これらは客数が減っても維持しなければならないことですが、客数減でのコスト増を補うためにも、他への転用を考えるべきです。すでに全国のLPガス事業者の中には、この強みを活かせるものとして、不動産管理ビジネスに進出しているところもあるようです。
また、「顧客管理・期限管理」やガスの使用状況などのデータが集められるポジションは、IoT普及観点では、垂涎のポジションとも言えます。このことに着眼し、新しいビジネスを模索するLPガス販売事業者もあるようです。
こうした動きを追いつつ、会員に適宜、情報を提供していきたいと思います。
冒頭に取り上げたNHK 受信料契約の代理店も、LPガス販売事業者の新ビジネスを検討する素材としての情報提供です。未知の分野であっても、そのことが自社の強みを活かせるか、あるいは弱みを補完したり強化することにつながるか。そういったことを考える素材なのだとご理解ください。
2018年4月
焦点は「自助を軸とした共助」と「想定外への対応」
「寒波到来でBCP生かせた」「不測の事態にも備え」(田島理事長)
同コンソーシアムは、東京都内などの有力販売事業者で 2014年に設立し、2017年度は4年目。セミナーには東京や首都圏
外の事業者も出席しました。
田島理事長は開会あいさつで、「コンソーシアム発足のきっかけとなった 3.11から 7年が経ち、記憶が薄れつつある一方で、今冬の寒波に見られるような異常気象や風水害、また世界的には感染症やコンピューターウイルスなどが新たな脅威に浮上し、事業継続の制約要件はむしろ増えつつあるように思えます。皆さんの会社でも数カ月に1 度くらいは、BCP対応の事態が起きているのではないでしょうか」と指摘。
「今冬の寒波では、当社にはわずか5日間で平年の1カ月分のトラブル入電があり、対応に追われました。しかし、インフルエンザで欠員もある中、当日中に一次対応を完了できました。BCPをつくり、訓練してきたことによる一つの成果である考えています」と紹介。そのうえで、「私どもはこれまで地震防災を念頭に訓練してきましたが、それ以外の不測の事態にも “ 備えあれば憂いなし ”となるよう取り組みを拡大・強化していきたいと考えています。皆さんのますますのご支援とご協力をお願いします」と呼びかけました。
「一緒になって防災力を高めていきたい」(服部・都協会専務理事)
次いで、(一社)東京都LPガス協会の服部哲男専務理事が「BCPは計画の策定が目的化しやすい中、実際に訓練を続け、災害対応力に向上に努めておられることに敬意を表します。コンソーシアム会員の多くが協会の会員ですが、協会自体の災害対応マニュアルは昨年度やっとできましたし、防災協定は都内 63市町村中、26市町村としか締結できていません。今後はコンソーシアムと一緒になって推し進めたいと考えています」とあいさつ。
そして、「15~16年前ですか、ある協会の会長さんが、自社の防災教育、防災器材、防災態勢がどう万全か、各地に行って講演されていました。しかし、実際に自社が被災し、充填所も損壊した際、自社、協会ともほとんど災害対応ができず、それが原因となって商権を譲渡された事例があります」と紹介。
「机上の計画だけでは意味がありません。訓練を続け、反省を生かしていくことで、実際の対応力が高まります。当協会としても、一緒に取り組んでいきたいと考えています」とエールを送りました。
「事業継続のあらゆる事態に備えるのがBCP」(津田副理事長)
一方、閉会あいさつに立った津田維一副理事長は、「BCPに対する関心は、BCMS(事業継続計画マネジメントシステム)を含め、再び高まってきています。大地震や風水害だけでなく、人手の不足、為替相場の変動、原価のアップ、資金繰りの悪化など、事業継続に障害となるあらゆる事態を想定して備えるのが本来のBCPです」「このところの寒波は、ガスの消費増につながる一方で、給湯器凍結事故の多発を招いています。人手不足中の突発的な仕事量の急増は、事業活動が削ぐことになるので、BCPでなにがしかの準備をしておくべきであると言えます」と述べました。
そして、「私どもには4年間の蓄積があり、現場を含めた人間関係の深まりは日常的な協力関係にもつながりつつあります。仲間を増やせば増やすほど、それぞれの会社のBCPの基盤が強固になってきますので、新規会員の加入は大歓迎です」と呼びかけました。
これからの活動については、①簡易版BCPを作成して小規模な事業者にも協力・支援していく、②コンソーシアムが目指している共助によるグループBCPに異業者からも関心が高まっているので積極的に協力していきたい、③その一環としてLPガス事業者に無償提供してきたLPガスBCPテンプレートを異業種にも参考配布していきたい—の考えを述べ、「エネルギー企業としての社会的な責任と公共性を考え、私どもの活動を業界全体に広げていきたい」とアピールしました。
「近年の災害と防災施策」講演(光永・消防庁災害対策官)
セミナーではまず、消防庁国民保護・防災部防災課の光永祐子災害対策官が「近年の災害と防災施策」をテーマに、①災害
対策法制、②大規模災害への対応、③防災関係の施策、④地域防災力の充実強化について紹介・解説しました。
この中で、「市町村における災害対応の原則は、企業にもそっくり当てはまります。防災対応の原則とポイント、そしてトップ
の役割を普段から徹底しておくことが、速やかな事業継続につながります」と強調。
また、事業継続計画の重要な6要素として、①トップ不在時の明確な代行順位と社員の参集体制、②本社社屋損壊時の代替社屋の特定、③エネルギー・食料等の確保、④多様な通信手段の確保、⑤重要データのバックアップ、⑥非常時優先業務の整理-を挙げたうえで、「特に非常用電源は、生命維持に必要な “72 時間以上 ” 対応できるよう、浸水への対策と稼働時間の確保を徹底してほしい」と指摘しました。
「自助・共助がどう重要か改めてご理解を」
さらに、地域防災力の充実強化に向けては、共助を担う消防団員が昭和30年の200万人から85万人まで減少していることを紹介。「生き埋めなどからの救助主体は、自力35%、家族32%、友人・隣人28%などで、救助隊は2%。いかに自助・共助が重要か改めてご認識ください」と呼びかけ、行政としても市町村、消防団、自主防災組織をつなぐ要として「大規模災害団員」の募集・育成に努めているとアピールしました。
「2017 年度災害対応合同演習」報告(コンサルタント・吉原氏)
このあと、BCPコンサルタントの吉原敏仁氏が「2017 年度災害対応合同演習」について報告しました。4年目にあたる合同
演習は、各社に昨年と同様に演習担当者をおき、社員がシナリオを考えることで具体性のある演習を実現するとともに、自社の課題を深く考えるように設定。また新たに、演習後半に第2の災害(第1:首都直下型地震、第2:発災4日後の大雪)を設定し、想定外の状況に対する対応力の養成を目指しました。
その結果、①社員名を書いたマグネットシートや整理表などのツールを事前に準備し、作業を効率化する工夫が見られた、②社員や車両、シリンダー在庫など経営資源の数量把握が着実に行われた、③ホワイトボードを使って表形式で整理するなど情報処理の仕方に成熟が見られた—などしたものの、「要改善点」として①想定外の状況に柔軟な対応が十分できない、②他社とのやり取りは顧客対応などと同等のレベルにとどまったことなどが浮上しました。
「相互補完関係を組み込んでこそ共助につながる」
これを踏まえて、2018年度の課題として、①明らかになった課題をBCPの改善につなげる活動の充実や工夫、②安否確認・経営資源の数量点検・外部対応など個々の作業手順書の作成、④他社との共同作業の共助(協働作業)への進化、⑤「想定外」への柔軟な対応力の養成-を掲げました。
吉原氏は「4年間の蓄積で、各社とも習熟度は上がってきましたが、課題はやはり共助の強化と想定外への対応。発災時の代替供給、応急供給は普段の受発注の延長に過ぎず、それらをBCPに組み込んで相互補完関係を構築し、ともに事業継続力を高めてこそ共助につながります。また、今回の演習では想定外の大雪を組み込んだことで、その後の達成度が低下しましたが、普段の活動や工夫の蓄積こそが柔軟な対応力の養成につながります」と総括しました。
2017年10月
自分の足元、地元をしっかり見よう!LPガスの原点、強みとはなにか!(牧野修三会長)
優秀なウェブ制作会社に依頼してみたら
当社カナジュウ・コーポレーションは、ウェブ部署を設け、ネット上でのお客様アプローチを展開していますが、スマートフォンの普及など最近の利用環境の変化を受けて、HPを全面リニューアルすることにしました。大がかりになるのでアウトソーシングが必要。このため、ウェブ制作会社を広く探し、優秀な会社を選定しました。
しかし、担当者がもうひとつだったのか、出来は不満。
そこで、その会社からの紹介で別の優秀な制作会社に依頼しました。ところが、その会社も不出来。それぞれの自社 HPはよくできているが、実際にはうまくない。そこで結局、地元の会社に依頼して、現在制作を進めています。
費用と時間がかかったが、たどり着いたのは地元
いろいろ検討し、見映えのいい会社に依頼したり安い会社に切り替えたりするが、こうした結果から言えるのは、身近なところに最適な会社があったりすること。また、出来の悪い会社や担当者が紹介するのは、やはり出来の悪い会社。費用と時間がかかったのですが、そうした結果にたどり着きました。
お客様の気持ちを左右するのは安全安心と信頼
これって、本日情報交換した内容と同じ。安いからとか切り替えてみても、大切なのは地元ならではとか、長いお付き合いならではの信頼や安心感。エネルギー全面自由化競争時代に入っても基本、原点は同じ。結局は、安全安心、信頼がお客様の気持ちを左右します。
つまり大事なことは足元、地元をよく見よということになります。私たちLPガス会社は、いま改めて、そこをきちんと押さえておくことが大事であるかと思っております。