技術革新で業界をリード、海外展開も-
――計量器メーカーとしての貴社の特徴はどこにあると見ていますか?
土田 当社の特徴は、“計量の価値を高める”という基本理念を掲げてたゆまず技術革新を続け、メーターの計測技術と通信技術の融合による検針の合理化や保安の向上、さらに高齢者の見守りサービスなど、広く社会の発展に貢献しようと努めていることにあると思っています。
最近は、社会インフラの整備が進む東アジアへの海外展開にも力を入れています。フィリピンのセブ、ベトナムのホーチミン、中国の寧波に製造協力拠点を配して輸出を拡大。土地が狭く高層建築が多い台湾では、ハンディターミナルによる無線検針システムを4万戸に取り付け、高い評価をいただいています。また、天然ガスが豊富とは言え浪費が社会問題化しているバングラディッシュでは、今年、当社のプリペイド式ガスメーター27万台を採用いただきました。
検針〜電子請求・決済まで行う“スマート化”実現-
土田 当社は、当地松本市出身の桑澤松吉氏が1905(明治38)年に作った我が国初の水道メーターを源流に、1949(昭和24)年に会社を設立、まず水道メーターの製造販売会社としてスタートしました。その15年後、1964(昭和39)年からはガスメーター の製造販売にも乗り出し、業界挙げて推進した「安全器具普及運動」が始まる前年、1985(昭和60)年には、松下電子部品様との共同開発によるLP用マイコンメーターで国内初の「セキリティメーターシステム」(マイコンⅠ)を誕生させました。
以来、“マイコンで保安、テレメで合理化”を呼びかけ、お客様の安全安心の向上と、販売事業者様の合理化・効率化を追求し続けてきています。そうした中、2000(平成12)年にエア・ウォーター様と共同で開発した、ガス使用量を時間別・用途別に分計する「ハイブリッド・カウンタ」は、「新・料金メニュー」づくりに貢献してきています。電子請求・電子決済システム「eガスチケット」を取り入れれば、エネルギー全面自由化時代に対応した、検針から電子請求・決済・督促、開閉栓までの“スマート化”が実現できます。
ガスの時代を創ろう!-
――現在、最も力を入れているのは?
土田 電力、都市ガス、LPガスの競合が激化する中で、「ガスの時代を創る」ことが大切です。LPガス業界は料金の透明化とガス需要の拡大が2大テーマです。お客様の満足度を向上させ、暖房・給湯などのガス需要を拡大させるには、料金戦略と需要拡大をどう行うか、大変重要なときを迎えているわけです。
そこで今、当社が2016(平成28)年春に開発した「料金表統合化支援ソフト」の導入が大手事業者様を中心に相次いでいます。「地域の料金表を再構築する際、共通の手法で料金表策定を行えるなどメリットが大きい」と高い評価を得ているのです。
このソフトを入れて、顧客の月別ガス使用量(12カ月分)と顧客の保有器具情報、適用料金表の種類を、一定のフォーマットでインプットします。すると、「現在の売上」「統合化料金表導入時の売上」に加え、「任意に外挿した料金表での売上」や「新・料金メニューを導入したときの売上」、さらに売上の変化を補填するために必要な給湯や暖房世帯の開発件数、値上げとなる世帯の一覧などを、自在にシミュレーションすることができます。
そして最も大切なことは、統合化した「料金メニュー」がガス需要の拡大につながるかです。ガスを給湯帯・暖房帯など用途別に分計し、また時間帯別・曜日別に分けて計ることで、様々な販売促進を可能にする戦略的料金メニューが誕生します。多くの成功事例がでてきております。
多くの販売事業者様が共通の課題に直面しているので、当社では6月から8月にかけ、全国25都市で「新・料金メニュー研修会」を開催しました。当社では「料金表統合化支援ソフト」の導入、ガス拡販可能な料金メニューの支援などの受託業務体制も整えています。お気軽にご相談いただければと思っています。
「社会における計量の価値を高める」ため研鑽-
――貴社の今後の方向性については?
土田 私の口ぐせは“現場・現物・現生”です。“現生”はお金ではなく生データのことです。毎年500社様・2000人以上の方に参加いただいているガス業界の横断的な研究会「東計会」はもちろん、新・料金メニュー研修会でも、努めて私自らが現場に立っています。ご報告する内容は、極力現生たる生データを第一に、真実を伝えるよう努力しています。
私は大学で土木工学を学び、本州四国連絡橋の経済効果の試算や大鳴門橋の設計に携わりました。そして、29歳、第30期のときに義父が経営する当社に入りました。それからの40年を振り返りますと、日本計量史学会の元会長、岩田重雄博士から賜った言葉、「計量は文明の母である」の重みを改めて感じます。
当面の売上目標の達成ももちろん大切ですが、豊かな社会づくりに貢献して、正しい利益を得、「社会における計量の価値を高める」ことこそ、私どものあるべき姿であると思っています。そのためには、これからもたゆまず技術革新を続け、より付加価値の高い製品やサービスの提供を通して、ガス・水道業界に貢献して社会的責務を遂行していきます。