タスクフォース21を基礎にオープンセミナーを開催
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――まず、三愛石油と三愛オブリガスという会社について教え てください。
平林 三愛石油は、1952年(昭和27年)に米軍から返還されて民間飛行場となった、羽田空港の航空機への給油を行う会社として設立されました。社名は創業者である市村清が生涯の信念として掲げた「三愛精神――人を愛し、国を愛し、勤めを愛す」 からきています。LPガス事業は1960年(昭和35年)から開始し、九州、関東、そして中国地方で卸売、小売を展開しています。
三愛オブリガスは三愛石油のLPガス卸売部門の支店と直 販、子会社等を地域ごとに統合し、2006年(平成18年)に設立されました。関東・東海をエリアとする当社・三愛オブリガス東日本と三愛オブリガス九州、三愛オブリガス中国の3社が最初に発足し、現在は九州・佐賀地区に三愛オブリガス三神が拠点展開しています。
――タスクフォース21には1997年(平成9年)の設立時からのメンバーとして参加されています。
平野 取引先のカナジュウ・コーポレーションの牧野修三社長から、系列の枠を超えた勉強会を作ろうとお誘いを受けて参加しました。私は横浜の出身で1993年(平成5年)に入社し、厚木ガス(営)に配属されました。ちょうど切替セールスによる顧客争奪戦が始まった頃で、牧野社長をはじめ神奈川の取引販売店の皆様に仕事を教えていただいたと言ってもいいくらいです。
神奈川には13年いましたが、その間、タスクフォース21(以下、タスク)で得た情報や知識をもとに、卸先の販売店さんと切替防御や料金問題などを一緒に考えてきました。神奈川の特約店会・三愛ガス会で、タスクの例会のような勉強会をやろうと始めたのが、「三愛ガス会オープンセミナー」です。タスクの精神と同様に、ガス会会員だけでなく他社の取引先にも門戸を広げようと「オープンセミナー」としました。2003年(平成15年)に第1回目を開催。業界で大きな反響となり、10年間毎年開催しました。年2~3回の開催で、延べ700〜800人の集客をしましたから、内容・規模ともに業界で一番だったと今でも思っています。
当社の成功に倣って他社さんも同じようなオープン型のセミナーを開催されましたが、継続したのは当社だけでしたね。
タスクで講演していただいた講師の方にも多数、登壇をお願いしましたが、当社がタスクに主体的にかかわり、かつ牧野社長が会長を務めておられたことで、あれだけのセミナーができたのだと思います。
対価を払いオープンにして情報を得る
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――関東、九州、中国の市場環境は違うと思いますが、オブリ各社の連携は?
平林 三愛石油のガス事業部門の基本方針は、取締役ガス事業部長の下、本社ガス事業部が立案します。その基本方針の下で地域の実情に応じた個別施策をオブリ各社が立案し展開します。
タスクの情報は当社・オブリガス東日本が幹事会も含め参加し、そこで得たものは本社ガス事業部はもちろん、九州、中国にも発信し共有するようにしています。
また出先でも各自タスク会報会員に登録するなどして、直接、情報を得ています。タスクで得た情報やツール類などは、そのまま、あるいは当社なりにアレンジして活用しているものがたくさんあります。「情報を得るには対価を払う」がタスク設立以来の精神と聞いていますから、三愛石油とは別に関係会社も正会員や会報会員になっています。それがあるので、販売店さんを気兼ねなくタスク例会にお連れすることもできます。
平野 私はオープンセミナーが始まってまもなく、2006年(平成18年)に九州に転勤になりました。タスクやオープンセミナーで得た知識と情報で、激戦区の販売店さんに自分なりにいろいろ提案できるようになったと考えていましたから、ちょっと残念でした。転勤後は、年に1度、九州の販売店さんをオープンセミナーにお連れして、神奈川などの激戦区の状況や全国の先進的な事業者さんの取り組みを見ていただきました。九州にはタスク会員の南部プロパンの高橋寿明社長のような先取の方もいらっしゃいますが、顧客争奪のないエリアの販売店さんはのんびりしていました。でも、九州転勤後数年もしないうちに、私の担当エリアである福岡県内でも顧客争奪戦が始まりました。
こうした中で、タスクの情報は営業活動で随分と役に立ちました。そして2015年(平成27年)に東海支店(掛川)に転勤となりますが、私が着任した頃から、このエリアは関東大手が侵攻し、顧客争奪戦が激化。そして今回、激戦区の神奈川に再び戻ったわけです。
平林 タスクには同業者だけでなく異業種の情報も入りますから、それらをヒントに競合対策を考えることができます。私も九州や中国に転勤しましたが、神奈川の様子を「特別だ」と言っていられたのは、はるか昔のことです。どのエリアでも毎日のように切替情報が流れてきます。切替対策の究極は「委任状がこない」状態をつくることです。では、それをどうやってやるか。答え は、「お客様の信頼を得る」ことに尽きます。当たり前のようで難しいことですが、タスクでの議論や講演などに触れると、やはり信頼を得るためにはどうすればいいかを日々考え、地道にやっていくしかないのだと思います。販売店さんや自社の小売部門の社員には、それを理解していただくことを目的とした研修会も開いています。
平野 今年に入ってからも切替対策や需要開拓をテーマとした「エネルギー自由化対策セミナー」を2月に横浜で、3月に静岡で開催しました。講師をお願いした角田憲司さんには、事前に「タスクでお話しいただいたココとココを掘り下げてください」とお願いしました。私の「タスク利用法」です(笑)。
2019年2月15日に開催された三愛ガス会の研修「エネルギー自由化対策セミナー」には、神奈川県内だけでなく、関東全域と中国、九州の販売事業者と直売担当者が参加した平林 研修会では当社の取引先だけでなく、他社のお取引先にもお声がけしています。もちろん、切替対策や需要促進では当社独自のノウハウもありますし、現場の社員が苦労してつくり上げた仕組みやツールもあります。それらを他社にそう簡単には出したくない(笑)。しかし、かつての三愛オープンセミナーでの基本的な考えである「情報はオープンにしなければ集まってこない」に則り、取引先のご理解を得るために非取引先からは受講料をいただくこともありますが、可能な限りオープンでやっていきたいと思っています。