転換期を乗り切るために役員を一新
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――まず今回の人事について会長のお考えからお聞かせくだ さい。
大和久 私が社長になったのは1997年(平成9年)、43歳のときです。大手企業であれば社長職は2~3期というところでしょうが、20年以上やってきました。当社のようなオーナー企業の場合、進退は自分で決めなければなりません。それに昔から65歳になったら現役を退いて、後はやりたいことを楽しくやろうと考えていましたからね(笑)。社長交代の時期については、数年前から考えてきたことです。
私が社長になった頃、当社は大きな転換期を迎えていました。LPガスの卸主体の業態から小売主体へと変わらなければ生き残れないということが確実になっていました。しかし、父や父を支えた役員たちは卸の仕事をしてきた。小売主体への転換の必要性を頭ではわかっていても、なかなか踏み切れない。
卸が小売りを重視することが、販売店さんとの関係を軽視することになると思い込んでいる人が社内にも販売店も多かったですから。私は、会社の存続のためには転換を推進する経営体制が必要だと、古い役員の方には退いてもらいました。
いま、大きな変革期を迎えたLPガス業界にあって、当社もまた、大きな転換期に差しかかっています。ここを乗り切り、企業を存続させていくためには、従来の思考を引きずっている経営陣ではダメだ。一掃するには全員が交代しよう決めました。私も完全に退くべきでしたが、諸事情でそうもいかないので会長となり、旧役員は理事となりました。新経営陣は、当社が初めて新卒を取った1996年(平成8年)以降に入社した40代です。
――課長からいきなり社長に。話を受けたときはどうでしたか。
佐久間 1年ぐらい前でしたか、会長、当時の社長と食事に行ったときに、こういう構想で社長をやってもらうよと伺いました。そんな重大なお話があるとは思わず、ジーンズにTシャツのような格好でした。驚きましたが、ハイというしかありません(笑)。サラリーマンである以上、出世ということは考えないわけではありませんが、こんなに早く役員になり、また社長をやることになるとは思ってもいませんでした。
私は中途入社でしたが同世代も多く、日々、こんなふうにやろうとか、こんな仕事をしていこうとか話す仲間がいました。今回、彼らの多くも一緒に役員になりましたから、みんなで会長の思いに応えたいと思っています。
自社独自のビジネスを追求する
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――新社長、新体制にはどのようなことを望んでいますか。
大和久 私の祖父が練炭の製造販売として当社を創業したのは1930年(昭和5年)です。今の若い人は、練炭というと自殺の道具ぐらいしか思いつかないでしょうが、主要な家庭用燃料でした。その後、父が経営を担うようになった頃からLPガスや灯油を扱います。1967年(昭和42年)に充填所を構えますが、このあたりでは既に後発でした。それでも、LPガスへの転換があったからこそ会社が存続し、来年は90周年を迎えます。このままいけば、黙っていても100周年は迎えることができるでしょう。ですが私は、新体制には、200年企業を目指せと言っています。
私の代に卸主体から小売主体に転換したときも、扱うものはLPガスでした。父の代の転換時も、扱うものは家庭用燃料でした。では、今度の転換はどうするのか。私自身、都市ガスエリアで育ち、家庭用のエネルギーとしてのLPガスはいずれ都市ガスに変わり、やがてすべて電気になるだろうと考えていました。しか しLPガスの需要は拡大し続けました。それでも基本的な図式は変わりません。震災でオール電化攻勢は少し止まりましたが、屋内電化の流れは確実に進んでいます。いつまでもLPガスにしがみついていられません。では、当社はこの先何を扱っていくのか、新体制はそれを決めなければなりません。もしLPガス以外の何かに絞り込めるなら、ガスの商権を全部売ってでもいい、と。佐久間社長たちの世代は後20~30年間、会社に勤めるわけです。それを維持するビジネスを見つけてもらいたい。
――新しいビジネスは、どのように構想していますか。
佐久間会長の仰ることは理解しているつもりですが、その答えを出すのはとても難しい。まずLPガスを軸としたところのビジネスをどうやっていくのか、そして一方で、LPガス以外のビジネスをどう作っていくか、その両面で考えています。
大和久 新事業をどうするかを考える上で、やはり大切なのは当社独自のものがなければダメです。フランチャイズで新しいビジネスを、というのは手軽ですが、結局はフランチャイザーだけが儲かるようにできています。電気の販売も、代理店としての口 銭だけではとても会社は維持できない。ガスも同じで、他社と同じことをしていたら結局は価格競争に巻き込まれ、最後はガリバーだけが残る。当社規模では淘汰されます。
佐久間 LPガスでは依然として顧客争奪戦は続いています。LPガスの守りや攻めはこれまで通り進めます。一方で、LPガス以外のビジネスについては、私は「LPガスの顧客があるからそのルートで何か」という発想は、あまり持つべきではないと思っています。新たなビジネスを展開するなら、LPガスルート以外でも新しい顧客を作っていかなければならないと考えます。
大和久 価格で動くユーザーはまた価格で動きます。ガスも新ビジネスも、「シャイニングだから買う」「シャイニングにしかない」とお客様に言われるようなものでなければ勝ち残れないのです。そこには、社員1人ひとりの人間力を高めることも必要でしょう。今回、10人の新役員を任命し、若い人材を積極的に登用することで社内は活性化したと思います。一方で結果を残せなければそのポジションにいてもらうわけにはいきません。
佐久間 就任して半年ですが、毎日大変です。会社の将来を考えた構想については、なるべく早く、会長に答申したいと考えています。