連載第1回求めているのは
「安心して働ける会社」
採りたくても応募自体がない
労働人口の減少が加速しているなか、エネルギー業界も「人集め」に苦戦している。特に若手、新卒採用では、各社とも頭を悩ませており、本誌でも紹介した一般社団法人タスクフォース21が行った「LPガス業界の採用に関する調査」でも(2023年9月号、10月号)、調査回答企業の6割以上が新卒採用の計画を下回っている。
同調査は今年度も実施されるが(別記)、前年調査では回答企業の半数以上、53.1%の企業は採用人数が計画を下回ったという回答。「新卒母集団不足、地方での採用の難しさ(母数が圧倒的に少ない)」「昨年(22年)までは内定辞退が課題だったが、今年(23年)は応募自体がかなり減ってしまったことが課題」「インターンシップ実施の具体的な内容について知りたい」「知名度が低いため応募が集まらない。LPガス業界全体での合同説明会などがあればよい」など、各社ともに採用について多くの課題を抱えていることも明確になった。
しばらくは売り手市場が続くだろうと言われるなかで、若い人材から業界・企業が「ぜひここで働きたい」と思われるためには、どのような対策が必要か。今号から連載で考えてみたい。
最初に、新卒学生の会社選びの基準を見てみると、大手人材・広告企業・マイナビの調査によると学生の企業選びのポイントとして、ここ数年で増加しているのが「安定している会社」。安定をポイントとしてあげたのは、25年卒の学生では49.9%と、およそ半数となっている。
インフラ事業であるLPガス事業を行う企業であれば「安定している会社」と判断されるのではないかと考えるところだが、学生の考える「安定」は、そういったことだけではないようである。
学生が考える「安定」は
「安心」
学生が考える「安定している会社」の定義としては、「福利厚生」が充実していることが最大の関心事で、保養所や社員旅行よりも、諸手当や休暇制度、自己啓発、資格取得の補助などを企業に求めている。同社主任研究員・東郷こずえ氏によると、「安定している会社とは、社会人からすれば経済基盤が安定していると捉えるが、学生は福利厚生と『安心して働けるかどうか』を重視する」(「タスクフォース21」での講演。本誌23年9月号。以下、適宜引用)という。
ちなみに20年前の同じ調査と今とをポイントで比較してみると、「安定している会社」は18.6%から49.9%、「自分のやりたい仕事ができる会社」は42.9%から28.6%、「給料が良い会社」はなんと8.1%から23.6%となっている。
また、長年学生の就職支援をしてきた池田浩二氏(元・中央大学キャリアセンター職員)は「極端な言い方をすると、就活生は家賃補助、年間休日、ジョブローテーション、初任給、在宅勤務の五つのことしか考えていない。それをキーワードに企業の募集の検索をかけている」と語っている。
「新卒を採りたくても、そもそも応募数がほとんどない」という企業は、まずはこのキーワードに対する学生への回答を準備するところから始めるべきかもしれない。
参考・出所/マイナビ 2025年卒大学生就職意識調査 ほか