連載第6回職業安定法改正に対応
求人募集時のNG例
虚偽や誤解を生むのは禁止
採用に関する求人メディアの多様化など社会の変化に対応し、国は2022(令和4)年に職業安定法の一部を改正し、さらに24年にも一部改正を行っている。この改正により募集広告のルールが示され、「やってはいけないこと」が明確化された。以下に、求人担当者向けに整理してみる(「タスクフォース21」第162回例会・朝比奈広志氏の講演「中途採用時の注意点」より)。
まず自社に関する情報について、虚偽情報は禁じられる。当然と言えば当然だが、自社を大きく見せたいがために、偽りや誇張した情報を入れてしまうといったことは、これまでも見られたことであるが、法改正によりそれらが一層厳格になった。
虚偽でなくとも、誤解を生じさせる表示をしないための注恵も必要。一般的・客観的に誤鱗を生じさせるような表示は、「誤解を生じさせる表示」に該当する。例えば以下のような点に留意しなければならない。
まず「業務内容」は、職種や業務について、実際の業務の内容と著しく乖離する名称を用いてはならない、「なかなか応募がないような業種の場合、少しでも人が集まりやすいような表現に書き換えてしまうということも見られた。実態に即した業種として表示にしなければならない」(朝比奈氏)ので、NG例としては、営業職中心の業務を「事務職」と表示したり、契約社貝の募集なのに「試用期間中は契約社員」として正社員募集であるかのように見せたりすることが挙げられる。
「誤認させる」手口はNG
また最近増えているフリーランスという形態では、「フリーランスを募集としながら、雇用契約の募集と混同してしまっているようなことがみられる。法律の改正により、これが虚偽なのか誤解を生じさせるものなのかに関わらず、どちらもアウトになる」(同)ので注意しよう。
「賃金」についても、虚偽表示ははもちろん厳禁で、誤解を生じさせる表示をしないためにも注意を払わねばならない。例えば、固定残業代を採用する場合、基礎となる労働時間数等を明示せず墓本給に含めて表示してはならない。「月給35万円(固定残業代込)」ではなく「基本給25万円、固定残業代7万円」と表示し、さらに「時間外労働の有無に関わらず15時間分支給。15時間を超える労働時間部については追加で支給します」といった追記も必要となる。さらに、社内で特に給与が高い労働者の給与を全ての労慟者の給与であるかのように例示したり、「モデル給与」を必ず支払われるように表示してはならない。「モデル給与」を記載する時は同職種社員の平均給与を記載する。
「自社を大きく見せたい」ということで、親会社や企業グルーブをアピールすることは従来から良く見られたが、求人会社と親会社やグループ会社の求人を混同させる広告方法は法律違反となる。上場企業A社の事業子会社B社が、会社紹介に「A社グループ」や「A社100%出資会社」と書くのはセーフだが、「A社グループは優秀な人材を求めています」など、A社やA社グループの採用広告と誤認されるような書き方はNGである。
個人情報の収集についても厳格になっている。求職者の氏名、生年月日、性別、メールアドレス、電話番号、住所を提示させる際には、その収集・使用・保管する業務の目的を明らかにしなければならない。「自社の採用選考のために使用」としながら、グループ企業の採用の選考にも使用することはできない。
さらに、24年4月から、募集時などに明示すべき労働条件が新たに追加されている。
1つ目は、従事すべき業務の変更の範囲。「一般事務」で募集して、その人が退職するまで変更の余地がないならば問題ないが、仮に「営業」や「検針」、あるいは「人事」をやってもらうかもしれないという可能性があれば、それは書いておかねばならない。
2つ目は就業場所の変更の範囲。転勤する可能性がある場合は、その範囲を書く。
3つ目は有期労働契約を更新する場合の基準。契約期間の定めがある場合は契約更新の有無、どういう場合に更新するのか、上限はあるかを書かなければならない。
「変更の範囲」は今年4月以降に交付する労働条件通知書や雇用契約書に書くことが義務づけられている。採用とは別に、現在籍への「変更の範囲」の周知は義務ではないが、雇用契約に対する一般の関心が高まっているので、「改めて労働条件通知書に変更の範囲を入れたものを交付すればトラブルは少ない」(朝比奈氏)が専門家の意見である。
参考・出所/厚生労働省「令和4年職業安定法の改正の概要について」、第162回タスクフォース21講演録 ほか