「月刊LPガス」連載:2024年6月号~

LPガス事業者の
リクルートを考える

著:タスクフォース21雇用問題分科会

連載第17回多様な雇用形態の組み合わせ
人手不足対応と雇用の柔軟化が加速

正社員不足が52.3%
非正社員不足が29.7%

人手不足が続くなか、企業は多様な雇用形態を組み合わせて人員を確保する動きが強まっている。厚生労働省「一般職業紹介状況」(2025年6月)によれば、有効求人倍率は1.29倍と依然高水準で、運輸・通信や建設分野では2倍を超える。帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」(2025年3月)でも、正社員不足を感じる企業は52.3%、非正社員不足は29.7%に上った。

LPガス事業者でも現場要員の確保は大きな課題であり、繁忙期と閑散期で業務量が大きく変動するため、単一の雇用形態では人員過不足が生じやすい。そのため、多くの事業者において従来、正社員、非正社員を組み合わせた雇用が行われていた。

各雇用形態には明確な特徴と留意点がある。正社員は長期雇用を前提とし、幅広い業務に対応できるが、社会保険や賞与・退職金など固定費負担が大きい。契約社員は期間限定で即戦力投入が可能だが、有期労働契約法による更新上限や雇止め規制に注意が必要だ。パート・アルバイトは短時間勤務で柔軟性が高く、地域人材の確保に有効だが、パート有期法による同一労働同一賃金が適用される。

業務委託は専門性の高い作業や繁忙期の業務外部化に有効だが、労働者性を帯びると偽装請負とみなされる恐れがあり、契約と実態の整合性が重要となる。

雇用環境の変化や
法改正への対応が急務

正社員、非正社員を組み合わせた雇用を従来行ってきたとしても、近年の法改正や雇用環境の変化に伴い、特に留意すべき点が増えていることには注意が必要だ。

同一労働同一賃金の運用強化では、2021年中小企業適用後も紛争増加傾向が続くなか、2024年の厚労省ガイドライン改訂により、職務内容や配置変更範囲の説明義務が強調された。不合理な待遇差は労働局から是正勧告を受ける可能性が高まっており、パートタイム労働者の処遇見直しが急務となっている。

雇止め規制の運用明確化では、有期労働契約法第19条に基づき、2025年4月の通達改正で、更新回数が少なくても「期待権」が認められる事例が明示された。有期契約の終了判断がより慎重に求められるようになり、契約更新の可否判断基準を事前に明確化しておくことが重要だ。

社会保険適用拡大では、厚生年金・健康保険について2024年10月から従業員51人以上の事業所は週20時間以上勤務の短時間労働者も原則加入対象となった。パート・契約社員活用時は保険料負担増を見込む必要がある。

採用と離職の防止は
経営陣の雇用環境理解が必須

また労働力不足と社会環境の変化を踏まえて、これまでとは違った視点での検討や配慮も必要となる。

外国人材雇用では特定技能2号の対象分野拡大と在留期間上限撤廃が2024年6月から一部実施され、長期雇用が可能になったが、受け入れ体制整備が前提となる。

さらに副業・兼業促進ガイドラインが2024年3月に改訂され、労働時間通算や安全配慮義務の考え方が明確化された。副業人材活用時の労災・健康管理リスク対応が新たに求められている。

複数の雇用形態を組み合わせることで、人件費の変動費化と人材の適材適所配置が可能となる。しかし、制度面の理解と契約管理が不徹底であれば、新規採用はおろか、現在の従業員に逃げられるということを、経営陣はよくよく理解しておく必要がある。

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