「月刊LPガス」連載:2024年6月号~

LPガス事業者の
リクルートを考える

著:タスクフォース21雇用問題分科会

連載第10回流行のダイレクト
リクルーティングは?

即戦力を捕まえられる

企業が即戦力となる人材に直接アプローチできるダイレクトリクルーティングサービスが人気だ。求職者にも求人企業にも「流行り」となっている感がある。中でも、有名なのが「ビズリーチ」。女優の吉谷彩子さんがスーツ姿で人差し指を立て「ビズリ〜チ!」と元気な掛け声をするCM。同社のCMはこの形を基本に2016年から続いている。上司役の男優は代わっているが、女優は一貫して吉谷が出演しているので、は、多くの人が認識しているはずだ。

ビズリーチは、2007年に南壮一郎氏によって設立された。2009年 から始めた同社の転職サイトは、日本初の「求職者課金型」とされている。管理職やグローバル人材向けの会員制転職サービスとして始まった。南氏がこのビジネスを始めようとしたきっかけは、自身の転職中、助言してくれるヘッドハンターの意見が食い違うことから、現状の求職者と求人側のミスマッチを実感したことにあるという。その着眼点と経営能力とにより、同社は急成長を遂げている。

ビズリーチの求人企業側へのサービス内容は、WEBを通じ作成した求人情報を管理し、求職者に対して魅力的な求人情報を提供し、応募を促進するというもの。求職者をデータベース検索し必要なスキルや経験を持つ人材を効率的に見つけ出すことが可能で、企業から直接、求職者にスカウトメールを送信できる。

採用が成功した場合、採用者の年収の約15%または70万円の成功報酬をビズリーチに支払う。そのほか、80万円以上のシステムの利用料が初期費用としてかかる。経験と実績がある即戦力が欲しい企業にとっては、従来型の求人広告利用よりも効果があるという判断があり、それが同社の急成長につながったわけだ。

転職を助長している!?

同社の成功を受け、大手求人サービス企業も含め、ダイレクトリクルーティングサービスに参入する企業は増えている。「ハイクラス人材」を謳うビズリーチとの差別化で、専門職の求人に特化しているものや、年齢や年収(ビズリーチは年収1000万円クラスを主体としている)などでのターゲットを変えて競合を避けているものもある。

競合が現れながらも依然としてダイレクトリクルーティングサービスの先頭を走るビズリーチだが、CMや求職者への営業活動が「転職を煽っている」という批判的な声もある。転職サイト・プラットフォームの広告が増えたから転職が増えたというのはいささか短絡的だが、「転職しなければ損」と言わんばかりのCMは、確かに溢れている。

こうしたサイトに登録をする人は確実に増えている。サラリーマンであれば、他社であれば自分はどのように評価されるのか知ってみたい。評価とは、すなわち給料である。現在より高い年収を登録してスカウトを待ってみるという、いわば「お試し」登録も多いようだ。「試したらいい話が来たので転職を決めた」という例も少なくない。

また、成功報酬型のサイト・プラットフォームであれば、なるべく「高く売る」こと、希望年収を高くすることを勧めるのではないかという指摘もある。サービスを利用したスカウト採用で、自社の賃金体系とつじつまが合わなくなって苦労しているという話も聞く。

LPガス業界企業でもダイレクトリクルーティングサービスでの採用は効果を上げている企業もあるようだ。ただし、「ビズリーチの登録者は、大企業や有名企業を志望する傾向が強いので、中小企業や無名企業のスカウトには反応しない」という指摘や、「こうしたサービスを利用している求職者は短期間で他企業に引き抜かれる」というマイナス評価も、利用企業からは聞こえている。ただお金を払えば良い人が採れるということではないようである。

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