「月刊LPガス」連載:2024年6月号~

LPガス事業者の
リクルートを考える

著:タスクフォース21雇用問題分科会

連載第15回中途採用、主流の時代へ
求人数拡大と変化する人材ニーズ

中途採用の「当たり前化」
求人倍率は高水準

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2025年1〜3月期に中途採用を実施した事業所の割合は65%で、前年同期よりわずかに低下したものの、中途採用が企業の一般的な採用手段として定着していることが改めて示された(出所:厚生労働省「労働経済動向調査」令和7年5月)。

従来は新卒一括採用が中心だった日本型雇用慣行だが、少子高齢化の進展や多様な働き方の浸透を背景に、中途採用を積極活用する企業が増えている。今では、企業にとっても求職者にとっても、中途採用は例外的措置ではなく、主流の一つとなりつつある。

民間転職サイト「doda」によると、2025年3月時点の転職求人倍率は2.51倍。求職者1人に対して2.5件以上の求人がある計算で、企業側の採用意欲の強さがうかがえる(出所:パーソルキャリア「doda 転職求人倍率レポート 2025年3月」)。

なかでもコンサルティング業界は8.68倍という異例の高倍率を示し、IT・通信(3.77倍)、企画・管理部門(2.95倍)も高い数値を維持している。これらは即戦力を求める職種であり、スキルと経験を持つ人材にとっては追い風の状況だ。一方で、倍率が比較的低い職種も存在し、職種によって需給の差が見られる。

さらに、dodaの「転職市場予測(2025年上半期)」によれば、全15業種中13業種で「求人数が増加もしくは高水準を維持」としており、製造業(機械・電機)や医療・バイオ、化学素材分野などにも広がりが見られる。この傾向は、業種の垣根を越えて経験者採用の裾野が広がっていることを物語っている。

働き手不足と
構造変化が後押し

このような中途採用の広がりの背景には、日本社会の構造的課題がある。少子高齢化による人手不足、「2040年問題」を見据えた人材確保、さらには即戦力志向の高まりが複合的に影響している。

2040年問題とは、日本における少子高齢化と人口減少が進行することにより、2040年ごろに顕著になると予測されるさまざまな社会問題の総称で、特に、団塊ジュニア世代が65歳以上となることで、労働力不足、社会保障費の増大、医療・介護サービスの需要急増、インフラの老朽化などが懸念されている。あと15年先だが、企業は「長期育成型」の採用よりも、短期で成果を出せる人材の確保が現実的な選択肢になってきた。

帝国データバンクの調査では、中小企業においても正社員の中途採用予定が51.0%に達しており、新卒採用偏重からの脱却が進んでいる(出所:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」2024年3月)。従来は採用力の弱さから中途市場での苦戦が続いていた中小企業も、働き手不足の中で積極姿勢を強めている。

一方で、年齢を問わず人材の流動性が高まっている点も注目に値する。転職エージェント「ビズリーチ」のデータでは、40〜60代の登録者数が前年比+140%と急増しており、ミドル・シニア層への評価も再び高まりつつある(出所:ビズリーチ調査「ハイクラス人材の転職動向」2024年)。高度専門性を有する即戦力人材の中には、定年を迎える前に第二のキャリアを模索する動きも見られる。



今後の焦点は
「定着」と「多様化」

即戦力人材の採用が進む一方で、企業にとっては「採った人材が長く活躍するか」が次の課題となる。スキルや経験の適合性だけでなく、企業の持つ独自の文化や価値観に、従業員や採用候補者がどれだけ適合しているかを示す概念=「カルチャーフィット」の視点も重視され始めている。また、社員それぞれ業務の変化に合わせたリスキリング(学び直し)を、会社として支援する体制整備も不可欠だ。

今後は、企業側も人材の育成や職場定着に向けた仕組みづくりを一層強化していく必要がある。同時に、求職者側も「働きやすさ」や「成長環境」など、待遇以外の要素を含めた職場選びの視点を持ち、入社後のキャリアイメージを明確に描くことが求められている。

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