「月刊LPガス」連載:2024年6月号~

LPガス事業者の
リクルートを考える

著:タスクフォース21雇用問題分科会

連載第4回「がくちか」を見極め
応えられる職場環境を

「がくちか」質問は無意味!?

採用面接での質問の定番に「がくちか(学生時代力を入れていたこと)」がある。どんなことに取り組んでいたをか聞き、人となりを判断しようというものだ。だが最近、この質問は意味がないと言われるようになってきた。というのも、多くの学生が「がくちか」の質問に対してテンプレート化された回答を用意するため、個々の真の能力や個性を見抜きにくくなってしまったというのだ。就活の「訓練」をそれほど積んでいなくとも、ネットには「エピソード別例文」などが多数アップされている。

そもそも「かぐちか」質問は意味がないとする人事担当者もいる。面接では実際の経験や成果を誇張したり美化することが多く、また、学生時代の活動は必ずしも仕事で必要とされるスキルや経験と直結してない場合が多いからだという。

確かにその通りと思われる一方で、面接者を逃がしたくないという人事担当者は、あえて「がくちか」を質問し、それに関心・共感することで面接者の好感を得て、「逃がさないようにする」のだそうだ。就活生が企業側のおじさんたちに〝逆面接〟をする映像『逆面接』(映画監督・上田慎一郎氏の作品)がSNSで大いに話題となっているが、人手不足・採用難で、〝笑えない〟立場の逆転現象は、もうすでに起きているのかもしれない。

音大卒は武器になる!?

「がくちか」が専攻に直接関わる学生は少ない。面接官からさらに質問されたときにボロが出やすいから敬遠するのだそうだ。自らの学生時代を顧みて、専攻した学問研究を「がくちか」に上げられる社会人が少ないのが、日本の大学の実情である。しかし、「在学中は専攻一本槍の学生ばかり」という大学もある。音楽大学である。

2013年にメガバンクから音楽大学の就職課兼会計・キャリアデザイン講師に転じた大内孝夫氏(現・名古屋芸術大学教授)は、「音楽を学んでいる学生は、音楽を学ぶ過程で様々なスキル・能力を身に付けている」ことを〝発見〟し、『音大卒は武器になる』、『「音大卒」の戦い方』を出版した。音大生の多くが大学での学びで、コミュニケーション力、責任感、時間管理、忍耐力(≒ストレス耐性)、正確・丁寧さ、礼儀正しさといった「社会人基礎力とセルフマネジメント力を自然な形で身に付けている」(大内氏)という。

出版当時、企業側も当の音大生もそれを理解する人は少なかった。また現在も、音大生は卒業後に音楽ができなくなることが心配で、一般就職を避ける傾向が強い。しかし大内氏がこの10年間、一般企業に就職した音大卒業生を追うと、多くがうまく社会に適応し、大活躍している人も少なくないという。またその中で学生時代ほどではないにせよ、音楽と向き合う時間を大切にしていると人も多いという。

それでも、音大生の一般就職は全体の3割程度で、まだまだ少数派。音楽で生きていこうとしてなかなかうまくいっていない卒業生が多い現実もあるようだ。法学部を卒業し法律家にならず一般企業に勤めるのは普通だが、音大を出て一般企業へ就職は、まだまだ一般的ではない。見方によれば、企業は良い人材を拾い損ねているとも言える。

音大生の「がくちか」は比較的わかりやすいが、一般大学にも〝真面目な〟「がくちか」生は存在する。採用側は「がくちか」申告を見極める目と、それに応えられる会社の環境づくりが、採用と定着とで今後ますます必要となろう。

参考・出所/『「音大卒」は武器になる』(ヤマハミュージックエンタテイメント)、webサイト『音大生就活ナビ』 ほか

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