連載第11回リクルート
エージェントは?
採用は1人100万円から
前回は「ビズリ〜チ!」と元気な掛け声をするCMのビズリーチやダイレクトリクルーティングサービスについて紹介した。転職サイトやプラットフォームの広告が、世のサラリーマン、ことに若い人材の転職を助長していると苦々しく思っている経営者がいるようだ。
「ビズリ〜チ!」同様に、頻繁に目にするCMというと「リクルートエージェント」。人気俳優の高橋一生さん、柳楽優弥さんを起用したシリーズで、転職に悩む人たちのそばに登場し、「リクルートエージェント」と呟く。同社のCMは、転職の相談をプロに任せようという呼びかけだ。
リクルートエージェントはビズリーチなどダイレクトリクルーティングサービスと競合する部分もあるものの、サービスの提供内容やターゲット層に違いがある。転職エージェント型サービスと称され、専任のキャリアアドバイザーが求職者に付き添い、求人紹介から応募書類の添削、面接対策、内定後のフォローまで提供するというもの。
求人企業側は、この専任の担当者を通じて人材の提案を受ける仕組みだ。主な利用者層はキャリアチェンジを目指す20〜40代が中心で、特に初めて転職を考える層としており、「即戦力」求人とはいえない(リクルートエージェントでも高年収層向けの案件を取り扱う)。
リクルートエージェントの企業側で掛かる費用は主に成功報酬型で、求人企業も求職者も登録料や利用料等は不要。採用が決まったら、企業がリクルートエージェントに対して報酬を支払う。報酬は採用時に決めた年収の約30〜35%程度とされており(契約によって異なる)、ビズリーチより率は高い。
この差は、ビズリーチが年収1000万円クラスを主体としているのに対して、リクルートエージェントは500万円クラスを主体としていることからとみられるが、だいたい100〜150万円程度の報酬を想定しているという点では、同じような水準ともいえる。
採用時に100〜150万円程度費用が掛かるということを、高いと考えるかどうか。従来の求人サイトでは数十万、あるいは100万円払っても一人も来なかった、という企業にとっては安いかもしれないが、複数採用となるとかなり高額になる。せっかく採ってもすぐ辞められてしまうということもある。
この「すぐ辞める」対応として、リクルートエージェントでは「返金制度」を設けている。早期退職した場合、一定期間内なら返金対応するという(期間や返金率は契約内容による)。
リクルートという言葉
リクルートという会社については、多くの人に知られているように、創業者・江副浩正氏が東京大学在学中に、大学新卒者向けの「企業への招待」(リクルートブックの前身)を発行したのがスタート。
その後、商号を「日本リクルートメントセンター(後に日本リクルートに改称)」としたが、当時は社名を言っても、運送業(陸・ルート)と間違えられたという。しかし、1984年に「リクルート」とした頃には、求人誌だけでなく住宅情報誌の発行や不動産事業にまで進出するようになる。
リクルート(リクルートメント)はもともとは軍隊での新兵募集、兵員補充の意味で使われていたが、日本語カタカナ語の一つとして、求人・人材募集という意味で定着させたのは、江副氏によると言っても過言ではないだろう。さらに江副氏は、求人ビジネスを好況時も不況時も「儲かるビジネス」にした。
求人媒体は今、江副氏の時代の紙媒体からではなく、WEBが当たり前に。そしてリクルートは、転職でのエージェント利用を提唱している。果たして定着するだろうか。
「採用難に勝つ(克)!」採用コンサルタント・木下峻一氏の講演(タスクフォース21第164回例会)も同会ホームページで再公開中。