「月刊LPガス」連載:2024年6月号~

LPガス事業者の
リクルートを考える

著:タスクフォース21雇用問題分科会

連載第9回採用難に勝つ
採用力強化のポイント③

採用基準を明確化する

「採用改善の専門家」として中小・中堅企業の採用力強化コンサルティングを行う木下峻一氏(PrimoPinguino代表取締役)は、中小・中堅企業が陥りがちな失敗を挙げ「これだけはやらないで!」(タスクフォース21第164回例会での講演より)として、「いきなり有料の求人広告を出す」ことと「好き嫌い」での採用を挙げている(前号)。採用面接に際して明確な基準を持って臨まなければ、結局面接官の「好き嫌い」の判断となり、結果的に採用のミスマッチにつながると注意を促している。

では、どのようなことを基準とすべきか。これについては、採用問題について詳しい社会保険労務士の朝比奈広志氏(アサヒナコンサルティング代表)が、講演で次のように語っている。 ……皆様は求人する際に、どんな人材・人財を募集するのでしょうか。(中略)「積極性があり、緻密で、実行力があり、先のことを見通せて、協調性に優れ、最新の技術情報に詳しくて、喜んでほかの人の手助けをして、優しくほかの人を指導でき、謙虚な人がいい」という要望があるかもしれません。しかし、そんな人はいるでしょうか?……(タスクフォース21第162回例会での講演より。本誌2024年10月号に掲載)。

思わず笑ってしまう話だが、実際にそういう思いで採用面接に臨む担当者が少なくないのである。

漠然としたイメージを挙げていてはキリがないし、結局は「そんな人はいるでしょうか?」となる。どの業務をどうやってもらうのかを明確にすることで、どんな人(経験や能力)を採るのかという基準が決まるわけである。

仕事の棚卸しと優先順位

前述の木下氏は、そのために、仕事内容の棚卸しをすべきとアドバイスしている。

例えば経理事務の欠員を埋めたいとすれば、請求書発行、支払業務、月次決算補助、仕訳・記帳の実務、決算などなど発生する業務を書き出す。そしてその上で優先順位をつけていく。「全部できます」は理想だが、それではハードルが高くなり、激しい人材獲得競争と待遇合戦になってしまう。そうしたレッドオーシャンを避けるために、求める「職務スキル」に優先順位をつけるわけだ。

この職務スキルは求人票に記載する内容ともなるが、経験の有無や、どの程度までの能力を求めるのかを、まずしっかりと決めて募集を行うことが大切だ。

そして次に、「職務遂行スキル」を細かく列挙し、面接や適性検査といった採用選考時のチェック項目とする。「コミュニケーションがとれる」「ミスがない」「ウソをつかない」「テキパキと仕事ができる」など。これらは、面接時に「人物を見る」ために必要な項目だ。ここでも、優先順位が必要で、業務によっては「多少ミスがあっても、テキパキ動いてくれた方がいい」という基準もある。

そしてその上で、全社スタンスとしての、経営理念や行動規範、あるいはミッション・ビジョン・バリュー、パーパスを共有・共感できる人物かを見るわけだ。

もちろん、チェック項目を設けても、面接でそれらを正しくチェックするには経験も必要である。しかしまず大切なのは、自社はどんな人を採りたいのかを明確にすることである。それが採用時のミスマッチを防ぎ、離職防止につながる。

離職を防止することは、採用コスト抑制の大きなポイントでもあるのは、言うまでもない。

中小企業が陥りがちな失敗

《参考》採用力強化コンサルティングを行っている木下氏(PrimoPinguino)は、顧問先に対して採用戦略や求人コンセプトの立案や、無料で始められる自社専用の求人媒体「engage」の立ち上げ支援なども行っている。問い合わせはホームページから。
●タスクフォース21第164回例会の木下氏の講演は同会ホームページで再公開中

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