「月刊LPガス」連載:2024年6月号~

LPガス事業者の
リクルートを考える

著:タスクフォース21雇用問題分科会

連載第14回新卒就職戦線
学生の大手・安定志向が鮮明に

求人倍率1.66倍に
中小企業の採用意欲旺盛

2026年春卒業予定の大学生・大学院生を対象とした就職活動が本格化する中、企業の採用意欲は引き続き高水準を維持している一方で、学生側は物価高や経済不安を背景に大手企業や安定性を重視する傾向が強まっていることが、リクルートワークス研究所とマイナビがそれぞれ実施した最新調査で明らかになった。特に中小企業での人材獲得競争が激化している。

リクルートワークス研究所が去る4月24日発表した「第42回大卒求人倍率調査(2026年卒予定)」によると大学生・大学院生を対象とした大卒求人倍率は1.66倍となり、前年より低下したものの依然高い水準となっている。

2022年卒ではコロナ禍の影響で一時的に1.50倍まで低下したが、それ以降は上昇が続いており、企業の高い採用意欲が継続している。

従業員規模別では、300人未満企業が6.50倍と高水準を維持し、300〜999人企業は比較可能な2010年卒以降で最高の1.60倍を記録。一方、5000人以上の大企業は0.34倍と最も低い水準となった。

業種別では、建設業が9.35倍、流通業が16.21倍と高い求人倍率を示した。求人総数は79.7万人(前年比2.4万人増)、民間企業就職希望者数は45.5万人(同0.4万人増)で、34.2万人の超過需要となっている。中小企業を中心とした人材獲得競争の激化が鮮明となった。

学生の大手志向強まる
ワークライフバランス重視も

マイナビが4月16日発表した「2025年卒大学生就職意識調査」によると、大手企業志向の学生が53.7%となり、前年比4.8ポイント増加して3年ぶりに半数を超えた。物価高や企業の賃上げ動向が影響し、学生の安定志向が顕著に表れた形だ。

全国の大学生・大学院生約3万9000人を対象とした同調査で、就職観については「楽しく働きたい」が例年どおり最多となったが、増加幅が最も大きかったのは「個人の生活と仕事を両立させたい」で、前年比1.7ポイント増の24.5%に達した。働き方改革への関心の高まりやワークライフバランス重視の傾向が鮮明となった。

企業選択の重要ポイントでは「安定している会社」が49.9%で6年連続の最多となり、5割に迫る勢いを見せた。「給料の良い会社」も23.6%と3年連続で増加しており、前年比2.2ポイント上昇した。物価上昇に伴う経済不安や、企業による初任給引き上げの動きが学生の意識に影響を与えている。

一方、学生が敬遠する企業の特徴として「ノルマのきつそうな会社」が38.9%で最多となり、「転勤の多い会社」も30.3%と初めて3割を超えた。転勤を嫌う傾向は4年連続で増加しており、地域に根差した働き方への志向が強まっている。

志望業種では「銀行・証券」が前年比0.9ポイント増の5.4%で最も増加幅が大きく、「電子・電気・OA機器」「スポーツ・玩具・ゲーム製品」も増加傾向を示した。

同調査は1979年卒から毎年実施されており、2026年卒の就職活動動向を占う重要指標として注目されている。

こうした学生の意識変化を受け、企業側は採用戦略の抜本的見直しが求められている。特に人材獲得競争が激化する中小企業は、働き方の柔軟性確保や初任給水準の引き上げ、転勤制度の見直しなど、学生が重視するワークライフバランスに配慮した職場環境の整備が急務だ。また、地域に根差した働き方を提供できる点を強みとして打ち出し、大手企業との差別化を図る戦略も有効とみられる。

新卒学生の企業志向

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