「月刊LPガス」連載:2024年6月号~

LPガス事業者の
リクルートを考える

著:タスクフォース21雇用問題分科会

連載第20回変化する採用市場と未来戦略
選ばれる企業になるために

求職者価値観の変化と
戦略的採用への転換

人材を取り巻く環境は、この10年で劇的に変わった。少子高齢化による採用難、価値観の多様化、雇用制度の変化。かつて「安定した仕事」とされた地域のインフラ企業も、もはや"待っていれば人が来る"時代ではない。

この連載では、LPガス事業者のリクルートを多面的に見てきた。最終回では、その総括として、連載で取り上げた内容を踏まえ、「選ばれる企業」になるための方向性を整理したい。

リクルートワークス研究所の調査(2024年)によれば、新卒就活生の約7割が「ワークライフバランス」を重視し、「給与・昇進」を第一条件とする学生は3割を下回った。若手層が企業に求めるのは、将来の安定ではなく、日々の生活を安心して送れる環境だ。

家賃補助や寮など住宅支援を重視し、福利厚生や休暇制度の充実を志望理由に挙げる学生も多い。かつての「給与や地位」ではなく、「自分の暮らしを守ってくれる会社か」が問われている。LPガス事業者にとって、地域に密着した事業基盤と生活インフラとしての安定供給力こそが、その"安心"を象徴する強みである。

採用手法も様変わりした。求人広告を出せば応募が来る時代は終わり、企業自らが人材にアプローチする「ダイレクトリクルーティング」や「転職エージェント利用」が一般化した。ただし費用は高額で、1名採用あたり数10万円から100万円を超えるケースもある。

いま必要なのは、採用を単発の活動ではなく、中長期の経営戦略として位置づける視点だ。「誰を採るか」よりも、「どんな人が働き続けられる職場か」を設計すること。採用は経営そのものになっている。

SNS活用と複線型雇用で
多様な人材獲得を実現

Z世代の多くは求人サイトではなくSNSで企業を知る。2024年のマイナビ調査では、就活生の約8割がInstagramやYouTubeで企業情報を収集している。企業の発信内容がそのまま採用力になる時代となっている。

ガス会社が地域活動や防災訓練、社員紹介などを日常的に発信すれば、それ自体が"求人広告"になる。InstagramやFacebookページの開設費用はゼロ。始めない理由はない。また、自社発信だけでなく、メディアの利用もこれまで以上に重要となる。

採用後の定着と育成こそ
真の競争力の源泉

同時に、新卒一辺倒から複線型雇用への転換も進んでいる。厚生労働省の統計では、2024年度の中途採用比率は全産業平均で約65%に達した。中途・高齢・副業人材を組み合わせる戦略が、地域企業の新しい形である。

特に高齢人材は、経験と地域とのつながりを持ち、技能伝承や顧客維持に貢献する貴重な存在だ。前号で紹介したマイナビミドルシニアやシニア求人ナビなどの専門サイト活用も有効だ。

人口減少社会では、「採る力」よりも「活かす力」が重要になる。厚生労働省の調査では、入社3年以内の離職率は新卒で約3割、中途で約2割に上る。人を採用して終わりではなく、育て、働き続けてもらう仕組みを整えることが不可欠だ。

福利厚生の整備、学び直し支援、キャリア面談、社内コミュニケーションの改善が離職防止の決め手になる。特に入社後3カ月、6カ月、1年のタイミングでの面談実施は効果が高い。

結局のところ、求人の文言や媒体よりも問われるのは「この会社で働きたい」と思わせる理由だ。地域の人々から「うちの町のガス屋さんは感じがいい」「社員が元気」と言われることが、最大の採用力となる。

LPガス事業者は、ライフラインの担い手として地域住民との接点が最も多い業種の一つである。日常の接点が"企業イメージ"をつくり、口コミとなって求職者の耳に届く。

「安定供給」だけでなく、「安心雇用」を提供できる企業こそ、地域から選ばれる時代が来ている。変化の時代に必要なのは、大きな資本よりも確かな信頼。そして、それを築くのは一人ひとりの"働く力"である。 ※この連載のバックナンバーは『産業特信LPG電子版』に掲載中。

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